畝の上にトンネル型フレームを作り、寒冷紗やビニールフィルムなどの被覆資材を掛ける「トンネル栽培」。
害虫が入るのを防いだり、保温効果があるトンネルは野菜栽培に欠かせません。
ここでは、トンネルに用いられる被覆資材の種類と、トンネルの掛け方を紹介します。
トンネル栽培とは
ビニールや防虫ネットなどの被覆資材で、畝をトンネル状に覆うことを「トンネル掛け」、それを用いた栽培手法を「トンネル栽培」といいます。
被覆資材にはいろいろな種類があり、目的に応じて使い分けます。
トンネル掛けの目的と効果
トンネル掛けを行う目的と得られる効果には、主に次の3つがあります。
- 保温
- 防虫
- 防風
例えば、夏野菜の苗を植えた直後、遅霜の心配があるうちは、不織布か防虫ネットを利用して、畝全体をトンネル状に覆っておけば安心です。
寒さ、強風、害虫から守ることができ、野菜の生育を助け、その後の生長も良くなります。
防虫目的でのトンネルは、次のことに注意。
- ネットを張る前に卵を産み付けられている、土の中に幼虫がいる
- 小さな虫が、目合いの大きなネットをかいくぐる
- 野菜が成長してネットに触れていると、ネットの外から卵を産み付けられる
被覆資材の種類
トンネルに用いる被覆資材にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。
ビニールフィルム
ビニールフィルム(透明フィルム)は、光をよく通す上、温められたトンネル内の熱を逃がさず、もっとも保温効果が高い資材。
苗の寒さ対策などに使います。
密閉性が高く、気温が高くなってくると晴れた日の日中は非常に高温になるため、裾を開けるなどして換気することが必要です。換気のための朝夕のこまめな開閉作業ができない場合、保温性は落ちますが、穴の空いたビニールを使うと良いでしょう。
トンネルに使う透明フィルムには、大きく次の3つの材質があります。
材質 | 特徴 |
---|---|
農ポリ | ポリエチレンシート。安価で使いやすいが、強度や光の透過率、保温力がやや劣る。 |
農ビ | 塩化ビニールシート。光の透過率や保温力が高いが、べたつきやすく重いので取り扱いにくい。値段も高価。 |
農PO | ポリオレフィン系特殊シート。農ビに近い性能と農ポリに近い扱いやすさを併せ持つ。値段は農ビと同等。 |
フィルムの厚みがあるほど強度が高まり、高額になります。厚くても保温能力にそれほど差は出ないので、家庭菜園用の手に入りやすい物でも十分。
保温目的のトンネル資材としてオススメは、厚さ0.075mmの農PO。風でバタつくことも少なく、破れにくく密封度を高めることがでます。高価ですが丈夫なので、使用後洗ってしまっておけば2〜3年は使えます。
寒冷紗(かんれいしゃ)
寒冷紗は化学繊維を荒く平織りした布。
通気性が高い割に保温性も高いのが特徴で、夏は遮光や防虫などに、冬は防寒・防霜にと、いろいろな用途に使える万能資材です。
色は白、黒、銀などがありますが、保温用には白を用います。網目の大きさもいろいろありますが、ホームセンターなどではワンサイズしかないことが多いです。
防虫ネット
防虫ネットは、細かい目合いの網で、害虫防除が主目的。
害虫よけに光を反射する銀糸を織り込んだものが多く、害虫の種類に対応した目合い(網目の大きさ)のものがあります。
目合いが細かいほど防ぐことのできる害虫の種類は増えますが、細かくなるほど通気性が悪くなる(温度が上昇し、作物の生育に影響を及ぼす)ことも考慮して選びましょう。
不織布(ふしょくふ)
不織布は、ごく薄いフェルト状の布。
布なのに光をよく通し、とても軽い資材で、手軽に使えるのが利点。
寒冷紗より保温効果がありますが、通気性も高いので蒸れる心配がありません。また、水を通すのでそのまま上から水やりもできます。寒冷紗と同様、害虫よけや鳥の食害防止にも使えます。
トンネル掛けもできますが、背の低い野菜に対しては、軽さを活かして野菜の上に直接かぶせる「べた掛け」によく使われます。
べた掛けするときは、野菜の成長分も考慮して、畝幅より大きいサイズのものを選びます。
遮光ネット
遮光ネットは、高密度ポリエチレンで作られた、直射日光から守るために使う被覆資材。
目が詰まっているほど遮光率が高く、遮光率50%から高いもので90%ほどまであります。
また、遮光ネットには黒・白・銀色のものがあり、それぞれの特徴は次のようになります。
色 | 遮光性 | 遮熱性 |
---|---|---|
黒 | ◎ | △ |
銀 | ◯ | ◯ |
白 | △ | ◎ |
一般的には、遮光目的には黒色の遮光ネットが使われます。
ホットキャップ
家庭菜園など小規模な畑で便利なのが、1株ごとに被せる「ホットキャップ」。
苗の植え付け直後の、防風・保温・防虫・鳥害対策に利用します。
トンネル掛けに使う資材
トンネル掛けに必要な資材は次の通り。
トンネル用支柱
トンネルのアーチの形になっている支柱もありますが、弾性ポール(ダンポール、グラスファイバーポール)だと、畝の幅に合わせてアーチの形状を変えられたり、軽い、安いなどのメリットがありオススメです。
使用する畝幅の2倍以上の長さのものを選びましょう。
トンネルクリップ
被覆資材を支柱に固定するためのクリップ。
洗濯バサミでも代用可能ですが、細い支柱への固定が弱く、プラスチックが劣化してすぐダメになってしまいます。園芸用のクリップは、支柱へ固定するグリップ力が強く、ステンレス製で錆に強く耐久性に優れて経済的。
また、トンネルパッカーを使うと、換気などでシートを開けるときに束ねたシートを留めることができて便利です。
トンネルパッカーは、使用するトンネル支柱の太さに対応したものを選んでください。
マルチ固定ピン
被覆資材の端を地面に留めるのに使用します。
トンネルの掛け方
トンネルの掛け方を解説します。
トンネル掛け
一般的なトンネル掛けの手順です。
まずは、トンネルのアーチ(フレーム)を立てます。
トンネル用支柱を60cmおきに挿し、同じ高さになるようにトンネル状にします。
畝の両端には支柱を1本ずつ追加。斜めに挿して補強することで、被覆資材を引っ張っても支柱が歪みません。
被覆資材を骨組み全体にかぶせます。
片方の端を縛って、マルチ固定ピンで固定します。(または畝の両端に杭を打ち、端を杭に結びつけて固定。)
もう一方の端も同様に固定。この時、被覆資材がたるまないように、ピンと張ってから固定すること。
必要に応じて被覆資材を適切な長さで切りますが、余った分を束ねて肥料袋などに入れて重しをしておいても構いません。
次に、両サイドの裾を固定します。
トンネルを密閉する場合は、たるまないように引っ張りながら、マルチ押さえを挿して裾を固定します。(または溝を掘って裾を入れ土をのせて固定。)
私の場合、トンネルの開閉がしやすいように、裾の地際をクリップで留めているだけです。
また、トンネルパッカーで上部中央を固定しておくと、トンネルの裾を開閉した際に、被覆資材が左右に偏るのを防ぐことができます。
最後に、強風にあおられて被覆資材が飛ばされないよう、トンネルの上からさらに弾性ポールを渡して挿し、被覆資材を押さえておけば完成です。
トンネル掛け(観音開き)
野菜を世話するたびにトンネルを開閉するのは煩わしい作業。
そこで、裾をしっかりと固定しつつ、開閉がしやすい観音開き式トンネルの作り方を紹介します。(被覆資材を2枚使います。)
トンネルの骨組みは通常通りに作ります。
1枚目の被覆資材を骨組みにかぶせます。トンネルの片側から、全体の2/3程度を覆うようにします。
畝の両端を絞ってマルチ押さえなどで固定、サイドの裾は、長く余っていたら丸めてマルチ押さえなどで固定します。
もう1枚の被覆資材を今度は反対側から、トンネルの2/3程度を覆うように掛け、トップで重ねます。同様に、畝の両端、サイドの裾を固定します。
風であおられないよう、トップで重なった部分をクリップなどで留めて固定しておきます。
最後に、トンネルの上から弾性ポールを渡して補強し、観音開き式トンネルの完成。
野菜のメンテナンスをするときは、トップ部分に留めたクリップを外し、被覆資材をずらして開けます。
終わったら、被覆資材を元に戻して、クリップで固定するだけ。開閉作業が楽ちんです。
べた掛け
被覆資材を畝に直接かぶせることを「べた掛け」といいます。
野菜の種をまいてすぐ被せておくと、地温を上げて発芽を促し、害虫被害が抑えられます。特に、エダマメ、トウモロコシは、種や芽が鳥に狙われるので、べた掛けすることで守りましょう。
べた掛けに向く被覆資材は、軽くて柔らかい「不織布」または「寒冷紗」でも可能です。
べた掛けの方法は、
まず、畝の片側に被覆資材を置き、端をマルチ押さえで固定したら、反対側の端まで伸ばします。
必要な長さで被覆資材を切り、全体の裾を数カ所マルチ押さえで固定して完成です。