家庭菜園でのホウレンソウ(ほうれん草)の育て方や栽培のコツを農家が分かりやすく解説します。
気になる項目があれば、目次をクリックしてすぐに確認できます。
基本情報
濃い緑色が美しいホウレンソウ(ほうれん草)は、抜群の栄養価を誇る緑黄色野菜の代表です。
冷涼な気候を好み、耐寒性に優れ、0℃以下の低温にも耐えることができます。特に、寒さに当たると甘みが増す「寒締めほうれん草」としても知られています。
栽培の注意点としては、ホウレンソウは酸性土壌を嫌うため、石灰を用いて土壌のpH調整を行い、適切な土作りをすること。
また、アブラナ科の野菜とは違って害虫被害が少ないため、しっかりと土作りができていれば、比較的簡単に育てることができます。
- 土壌の酸性が強いと生育が不揃いになるため、石灰を入れて酸度調整しておく
- 日長に敏感なので、長日下ではとう立ちしにくい品種を選ぶ
栽培カレンダー
ホウレンソウ(ほうれん草)の栽培時期は次のようになります。
中間地を基本とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。
ホウレンソウは冷涼な気候を好むので、家庭菜園で育てやすいのは秋まき・秋冬どりです。
暑さには弱く、また長日でとう立ちしやすい性質があるので、春まきではとう立ちの遅い晩抽性品種を選びましょう。
甘みの強い「寒締めホウレンソウ」にするには、晩秋まきで冬の寒さにあてて育て、2月頃に収穫します。
ホウレンソウの種類
ホウレンソウは、在来の東洋種のほか、西洋種、東洋×西洋をかけ合わせた交配種などがあります。
- 東洋種・・・葉がギザギザで根元が赤く、葉肉は薄い。長日でとう立ちしやすいので冬季栽培に向く。
- 西洋種・・・葉が丸く、葉肉は厚い。日長反応に鈍感なので、春から初夏の栽培も可能。
- 交配種・・・東洋×西洋の特性を組み合わせたもので、葉形や色は多様。育てやすく、家庭菜園向き。
市場で出回っているホウレンソウの多くは、交配種が主流です。
栽培方法
ホウレンソウ(ほうれん草)の栽培は、次のような流れになります。
土作り
種蒔きまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
ホウレンソウは酸性の土では生育不良になるため、pH(酸度)調整をしっかりと行いましょう。pHの目安は6.5〜7.0です。
また、過湿に弱いため、排水性が良くない場所では高畝にするか、排水を図りましょう。
肥料
ホウレンソウは養分を欲しがる植物なので、元肥をしっかり施しておきます。
ただし、窒素過多になると軟弱に育ち、「うどんこ病」や「べと病」をはじめ、多くの病気を助長するのでほどほどに。
肥料には、「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
種まき
ホウレンソウは移植を嫌う直根タイプなので、種は畑に直播きします。
条間15〜20cmでまき溝をつけ、1〜2cm間隔で条播きに。
軽く覆土をして鎮圧し、たっぷりと水をやります。
寒い時期は保温資材で初期育成を促す
寒さに強いホウレンソウですが、低温下では発芽率が落ちます。
早春や晩秋の寒い時期は、種まき後に「不織布」などの保温資材をベタ掛けしておくと発芽しやすくなります。
本葉が出れば寒さにグンと強くなります。
間引き
1回目は本葉1〜2枚のとき。株間3cm間隔に間引きます。
2回目は本葉3〜4枚のとき。最終株間5cmに間引きます。
間引いたあとは、株がふらついて倒れやすくなるので、株元に軽く土寄せをしておきましょう。
追肥
本葉3〜4枚の頃、間引き2回目と同時に追肥をします。
条間にパラパラと肥料を施し、中耕を兼ねて株元に軽く土を寄せておきます。
収穫
草丈が25〜30cmになれば収穫時期です。
根がしっかり張っているので、引き抜かずにハサミで切って収穫します。
根元の赤い部分は甘みがあって美味しいので、赤い部分はできるだけ茎に残して切り取りましょう。
寒締めホウレンソウ
ホウレンソウは、凍結しないように自ら葉の水分を減らし、糖分を蓄える性質があります。この生理作用を利用してつくるのが「寒締めホウレンソウ」です。
甘みが強く、葉は濃厚な緑色、縮みあって肉厚なのが特徴です。
品種によっては、縮んだ形にはなりません。
寒締めホウレンソウは、11月に入ってから種を蒔き(晩秋まき)、真冬の寒さにあてて育て、2月頃に収穫します。
葉が地面を這うようにロゼット状に広がるので、最終株間を15cmくらいに広くとるようにします。
尚、長日になると「とう立ち」するので、3月初旬までには収穫を終えるようにしましょう。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
ホウレンソウは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を1〜2年あけるようにします。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
ホウレンソウと相性のいい野菜には次のようなものがあります。
栽培Q&A
本葉が数枚でたところで生長が止まり、葉が黄化してしまう場合は、酸性土壌が原因です。
ホウレンソウはpH6.5〜7.0の中性に近い酸度を好みます。土作りの段階で石灰を入れて酸度(pH)調整をしておきましょう。
スギナが蔓延っている畑など酸性土壌が懸念されるところは、pH(酸度)測定器などで調べておきましょう。
土壌の酸性度(pH)と測定・調整方法についてホウレンソウは、長日(日が長い)条件でとう立ちする性質があります。
街灯や玄関灯の近くで育てると、昼が長くなったと勘違いしてとう立ちしてしまうため、夜間に暗くなる場所で栽培しましょう。
野菜のとう立ち(薹立ち・抽苔)について