
家庭菜園の初心者の方向けに、ダイコン(大根)の栽培方法を写真とイラスト付きでまとめています。
ダイコン栽培の特徴、栽培時期、栽培手順・育て方のコツ、発生しやすい病害虫と対策など。
ダイコン栽培の特徴

種類 | 科目 | 好適土壌pH | 連作障害 |
---|---|---|---|
ダイコン | アブラナ科 | 5.5〜6.5 | あり:輪作年限2〜3年 |
原産地が地中海沿岸で中国を経て日本に入ってきたと言われるダイコンは、日本での歴史も古く、品種も豊富。
みずみずしくて生でも美味しいもの、煮ることで味わいがでるもの、辛みがあるもの、それぞれ個性があります。
「大根十耕」と言うように、土中で太らせるダイコンの栽培は、土を深く、そして丹念に耕すことが、良いダイコンを作るコツ。
種まきから発芽、間引き、追肥まで手順を守って作業すれば、初心者でも作りやすい野菜です。
播種(種まき)から収穫までの日数は、約60日〜100日となります。(品種・作型によって異なります)
- 石や粗い堆肥などで根が分かれないよう、深くまで土を耕しておく
- 植え替えはできないので、畑に直播きして間引く
ダイコンの栽培時期
ダイコンの栽培時期・栽培スケジュールは次のようになります。
ダイコンは冷涼な気候を好みますが、発芽温度の幅が広く、春採り、初夏採り、秋採りが可能です。(それぞれの時期にあった品種があります)

最も基本的な作型は、冷涼な気候を利用した秋採り栽培です。
初夏採り栽培では、早まきすると「とう立ち」が、遅まきすると病害虫の発生が多くなり、生理障害も発生しやすいので注意が必要です。
上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
ダイコンの栽培方法
ダイコンの栽培方法は、次のような流れになります。
土作り
ダイコンは根が非常に深く伸びるので、耕土が深く、保水力があり、排水性のいい土が適しています。
また、ダイコンの生長点である根の先端部分が障害物に触れると、根が分かれて又根になってしまいます。そのため、土の塊や石、植物の残渣、未熟な堆肥の塊などは丁寧に取り除き、深くまでよく耕しておきます。
株間30cmを確保して畝を作り、過湿に弱いので高畝にします。(土が過湿になると、湿害や「軟腐病」による腐敗が多くなります)
pHは5.5〜6.5が目安です。
肥料
ダイコンは肥料分の少ない荒地でもよく育ちます。
多肥にせず、栽培期間を通じて、少しずつ肥料を効かせるのがポイント。「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
種まき


種は畑に直播きします。
株間30cmで1ヶ所に4、5粒を点まき。
軽く土をかぶせたら、鎮圧して種と土を密着させ、たっぷりと水をやります。
連作障害・コンパニオンプランツ
ダイコンは、連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を2〜3年あけるようにします。
また、アブラナ科野菜のダイコンには、「モンシロチョウ」や「コナガ」の幼虫が寄生して葉を食害します。
そこで「コンパニオンプランツ」として、これらが嫌うキク科の野菜(シュンギク、レタスなど)やセリ科の野菜(ニンジンなど)を近くに植えることで、害虫がつくのを防ぐ効果があります。
防虫ネット

アブラナ科のダイコンは害虫の被害も受けやすいため、種をまいたらすぐに防虫ネットを掛けておきます。
特に11月半ばまでは、防虫ネットの中で育てます。
間引き
2回の間引きで1本立ちにします。
間引き1回目

本葉2枚の頃に1回目の間引き。葉の形が良いものを残して3本に間引きます。
この時、子葉の開いている方向が畝と平行になっているものを残し、畝と直角になっているものを間引くようにします。
これは、子葉と同じ向きに養分を吸収する側根が生えているので、畝方向のほうが根群が伸びやすいからです。

尚、間引く時はハサミを利用して、地際で株を切ります。引き抜くと、残した株の根を痛めることがあります。
間引き2回目


本葉5、6枚の頃に2回めの間引きをし、1本立ちにします。
2回目の間引きでは、すでに細いダイコンができており、葉も根もおいしく食べることができます。
追肥・中耕


2回目の間引きのとき、成長がおもわしくなければ、畝の肩に追肥を施します。
追肥をしたら、畝を中耕して土寄せをします。
その後も、除草をかねて、さらに2〜3回、中耕と土寄せをします。
中耕をすることで、土中の空気や水の通りが良くなって根が発達し、土寄せをすることで、曲がったりするのを防ぐ効果があります。
収穫


秋採りで、種まきから60日〜70日後が収穫期です。
収穫時期が近くなると、葉が立ち上がってきます。立ち上がった葉の先端が垂れてきたら、収穫適期のサインです。
収穫の際は、茎の根元の部分と首を持ち、真っ直ぐ上に引き抜くようにして収穫します。
尚、収穫適期を過ぎると、ダイコンの中にスが入ったり、割れたりすることがあるため、収穫時期を逃さないように気をつけましょう。
収穫適期を判断する
ダイコンは、品種によって太さ、長さなどが異なります。
実際に1、2本抜いてみて、サイズや中の状態を見てから、収穫期を判断しましょう。
最もポピュラーな、首の部分が緑化する青首品種は、収穫適期になると地上に大きく飛び出してくるので、収穫時期もわかりやすいです。
写真は順に、青首ダイコンの定番「耐病総太り」、短形品種の「三太郎」、辛み大根「味辛」。



側根が等間隔に並んでいるものが美味しい

収穫したダイコンを見ると、側面に小さなくぼみが縦に並んでいて、そこから細く短い根(側根)が生えています。
側根が等間隔に並んでいるものは、生育が順調で美味しいダイコンの証。有機肥料でゆっくり育ったダイコンは等間隔に1列に並びます。
逆に、側根の間隔が狭い/広い部分があるものは、その間の生育条件が悪かった証拠です。
畑に長く置いておく場合


霜が降り、葉が枯れる頃になっても収穫せずに畑におくと、土から出ている首の部分が凍って傷んでしまいます。
冬の間も畑に長く置きたい場合は、ダイコンの首が土にすべて埋まるように土寄せをしておきます。
土の中は適度な湿度と温度が保たれるので、春まで保存することができるようになります。
トラブル・生育不良
ダイコン栽培によくある、トラブル・生育不良などをまとめています。
又根・岐根
ダイコンが二股などに分かれたもの。
主根の成長点が、障害物や未熟堆肥、高濃度の肥料に接触した場合に起こります。
土作りの際には、ていねいな耕起作業で石やゴミ、草や野菜の残渣などの障害物を取り除き、堆肥は完熟のものを施用することが大切です。
また、センチュウなどの土壌害虫の食害で枯死、切断された場合にも起こるため、その場合は土壌消毒をしておきます。
曲がり
ダイコンが曲がっているのは、肥料が多く葉が旺盛に茂って、その重さで倒れてくるのが原因です。
す入り
切ってみると中がスカスカになっているもの。
生育後半に根部への同化養分の供給が追いつかず、細胞や組織が老化して隙間が作られる現象です。
原因としては、生育後半の気温が高かったり、収穫遅れ(適期を過ぎてからの収穫)、などがあります。
裂根
ダイコンに縦にひび割れが入る現象。
肩の部分が裂けている場合は、乾燥が続いた後に降雨で多湿になった場合に発生します。縦に長いひびが入っている場合は、多湿気味だった土壌が急に乾燥したような場合に発生します。
いづれも根の中側と外側との成長バランスが崩れたことが原因です。
株間をとりすぎた場合に起こりやすくなるので、株間は広げすぎないようにしましょう。
網いり
表皮の中側にある導管が網の目状に走っている部分、ここが固い繊維状になったものを指します。
原因は、播種後30日以内の肥大期に、高温と乾燥が続いた場合に発生します。
特に乾燥には気をつけましょう。
空洞症
青首系ダイコンに発生しやすく、直根下部の中心に白または褐色の空隙ができます。
温度や土壌水分などの環境条件を極端に変化させないことが大切です。
ホウ素欠乏症
ダイコンはホウ素を多く必要とするので、欠乏すると根の表面に亀裂が生じ褐変します。
発生する畑には、ホウ素など微量要素を含む堆肥を施しておきます。
発生しやすい病害虫
ダイコンに発生しやすい代表的な病害虫と、その対策・予防法をまとめています。
病気
萎黄病(いおうびょう)
下葉からしだいに黄化・萎縮・奇形化、やがてしおれていきます。
黒腐病(くろぐされびょう)
葉柄や葉脈が黒くなり、根を切断すると導管が黒変しています。
白さび病
葉裏に乳白色の膨れた斑点ができ、白い粉状の胞子のうができます。
軟腐病(なんぷびょう)
組織が水浸状になり、軟化して独特の悪臭を放ち腐敗します。
腐敗病(ふはいびょう)
次々と葉がしおれ、つけ根には水浸状の病斑、組織は軟化して水分をなくしてへこみます。
べと病
葉に黄色の小さい病斑ができ、裏面にすす状のカビが発生します。
モザイク病
葉に濃淡のモザイク模様が現れ、ひどくなると葉は縮れて奇形化します。
原因ウイルスをアブラムシが媒介します。
害虫
アオムシ(モンシロチョウ)
緑色の細かい毛がうっすらと生えた小さなイモムシが、葉を食害します。
ニセダイコンアブラムシ
体長2mmの暗緑色の小さな虫が集団で棲みつき、吸汁加害します。
モザイク病のウイルスを媒介するため、注意が必要。
カブラハバチ
黒藍色をしたイモムシ状の幼虫が、葉を食害します。
キスジノミハムシ
成虫(体長3mmほどの甲虫)は葉を、幼虫は根を食害します。
幼虫による根部表面の肌あれや食痕は軟腐病の原因にもなるため、注意が必要。
コナガ
体長10mmほど、淡緑色の幼虫が葉を食害します。
ダイコンハムシ


体長1cmに満たない、黒色の幼虫、成虫(丸い形をした甲虫)が、葉を食害します。
ネキリムシ
体長4cmほどのイモムシ状の幼虫が、地ぎわで苗を噛み切ります。
ハイマダラノメイガ
体長1.5cmほど、淡褐色をしたイモムシ状の幼虫が、新芽をつづり合わせて食害します。
ヨトウムシ
体長3cmほど、淡緑色をしたイモムシ状の幼虫が、葉を食害します。