
家庭菜園の初心者の方向けに、ナス(茄子)の栽培方法を写真とイラスト付きでまとめています。
ナス栽培の特徴、栽培時期、栽培手順・育て方のコツ、発生しやすい病害虫と対策など。
目次
ナス栽培の特徴

種類 | 科目 | 好適土壌pH | 連作障害 |
---|---|---|---|
ナス | ナス科 | 6.0〜6.5 | あり:輪作年限3〜4年 |
インドが原産地のナスは、高温多湿を好み、日本の夏にあった育てやすい野菜です。
暖かい環境で苗作りをして、定植後には肥料を切らさないようにすることで、長期間たくさん収穫することができます。更新剪定することで株が若返り、秋ナスの収穫も可能です。
播種(種まき)から収穫までの日数は、約120日となります。(品種・作型によって異なります)
また、ナスの光沢ある果皮の色は、ナスニンと呼ばれるアントシアニン系色素であり、ポリフェノールの一種。高血圧や動脈硬化を予防する効果が期待できると言われています。
- 収穫期間が長いので、肥料を切らさないようにする
- ナスは水で作ると言うように、こまめに水やりをする
- 秋ナスを収穫するには、最盛期に更新剪定を行う
さまざまな品種
地方ごとに、形や大きさ、色もさまざまな種類があるため、珍しい品種に挑戦するのもオススメです。
ちなみに、うちでよく作っているものは次の3つです。
基本は長卵形タイプ。
夏秋用ナスの代表種「千両2号」。
京都を代表する丸いナス「賀茂茄子」。
肉質がしっかりして煮崩れしにくいのが特徴。
長さ40〜45cmにもなる細長いナス「庄屋茄子」。
果肉が柔らかく、焼き茄子に最高。
ナスの栽培時期
ナスの栽培時期・栽培スケジュールは次のようになります。
2月中旬に種をまいてポットで育てた苗は、5月上旬に植え付け、7月から10月いっぱいまで長期間収穫できます。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
ナスの栽培方法
ナスの栽培方法は、次のような流れになります。
種まき・育苗


3cm幅のまき溝に1〜2cm間隔で条まき。
本葉が1枚のときに1本ずつポット上げし、定植まで暖かい環境で育てます。
- 日光には充分当てるが、高温になりすぎないよう換気に注意
- 夜に水分が多いと徒長の原因になるため、水やりは朝に行う
尚、種から育てると育苗期間が長くなり管理が難しくなるため、市販の苗を購入して育てるのが手軽です。連作障害に強い接木苗のものがオススメ。
土作り
植え付け2週間前までに、堆肥・元肥を入れて畑を耕しておきます。
元肥は栽培場所全面にまいて耕す「全面施肥」でもいいのですが、溝を掘って畝の直下に施す「溝施肥(待ち肥)」の方が効果的です。
畝の中央になる場所に深さ・幅とも30cmほどの溝を掘り、そこに堆肥・元肥を入れ、土を戻し、畝を立てます。
pHは6.0〜6.5が目安です。
肥料
茎葉を伸ばしながら次々と実をつけていくので、栽培期間を通じて肥料切れを起こさせないように、たっぷりと元肥を入れ、定期的に追肥します。
同じナス科でも、トマトは肥料が多いと枝葉ばかり茂って実がつかない「つるぼけ」になりやすいのですが、ナスはなりにくいので安心です。
初期からリン酸を効かせることで、実付きがよくなります。肥料には、「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
連作障害・コンパニオンプランツ
ナスは連作障害が出やすいため、同じ場所での栽培間隔を3〜4年あけるようにします。心配な場合は、接木苗を利用すると安心です。
また、ナスに良い影響を与える「コンパニオンプランツ」として、次のようなものがあります。
セリ科のパセリを一緒に植える。セリ科独特の香りが、ナスにつく害虫を忌避します。また、パセリは余分な水分を吸収し、ナスの株元を覆ってマルチ代わりになることで水分吸収を安定させる効果もあります。
ネギを一緒に植える。ネギ科植物の根に共生する拮抗菌が「青枯病」「立枯病」の病原菌を抑えます。
植え付け
本葉5〜6枚出た頃が定植時期。
株間60cmで植え付けます。
定植の前にポットごと水につけて吸水させておくか、定植後たっぷりと水をやります。
茎が弱くて風で折れやすいので、定植と同時に仮支柱を立てて支えておきます。
マルチング
土の乾燥を防ぎ、泥はねなどから病気を予防するため、株元に稲わらや刈草などを敷いてマルチングしておきます。
併せて、畝の肩にもマルチをしておくとより効果的です。
整枝・支柱立て
1番花が咲いたら、株を充実させるために花の下にある側枝2本を残し、主枝と側枝2本の3本仕立てにします(または主枝と側枝1本の2本仕立て)。それ以外のわき芽は切り取ります。

支柱は、次のように仕立てます。
株の数が少なければ、真ん中に1本、側枝用に2本を斜めに交差させて支柱を立て、主枝・側枝それぞれを支柱に誘引・固定します。

株の数が多い場合は、畝を囲うように四隅に支柱を斜めに差し、マイカ線のような強度のある紐を支柱に巻きつけながら横に張り巡らせます。そこから1本ずつ側枝を吊るしていきます。


株が生長してきたら、横に張る紐を2段、3段と増やして対応していきます。
追肥・水やり
ナス栽培では、追肥と水やりは欠かせません。
追肥
植え付けから3週間後に1回目の追肥を行います。ボカシ肥や鶏糞を株間にまきます。
ナスは次々と収穫するので、継続的に多くの肥料が必要になります。
1回目の追肥以降は、2週間に1度のペースで追肥。追肥は根の先端に施すようにします。
枝葉の広がりと根の広がり方はほぼ同じなので、追肥場所は葉の先端が目安です。
追肥のタイミングは花を見る
肥料が足りているかどうかは、ナスの花を見て、雄しべと雌しべの長さを見るとわかります。
雌しべが雄しべよりも長くなっていると肥料が足りている証拠。逆に、雌しべが雄しべに埋もれて見えない場合は肥料不足のサインなので、すぐに追肥してやりましょう。


水やり
ナスは水で作ると言われるくらい、果実の生長には多くの水分を必要とします。
株が成長して果実がついてきた頃からは、特に大量の水が必要となるため、水切れに注意して、十分に水を与えましょう。
1〜2番果は早めに収穫
1〜2番果がなる頃は、まだ株が十分に育っていないので、早めに収穫して、株の充実を図ります。
その後のナスの出来がよくなります。
ちなみに、ナスの花は雄しべと雌しべを共有する両性花。自家受粉した後、次のように着果します。



下葉かき
高温多湿の夏季に入ったら、高さ40cm〜50cmのところについている葉を取り除きます。
また、古くなった葉や枯れた葉も、こまめに取り除くようにしましょう。
株の中に光を入れ風通しをよくしてやることで、実付きがよくなり病気の予防にもなります。
収穫


収穫のタイミングは品種によっても異なりますが、一般的な長卵形品種なら、長さ12cm〜15cmが目安。
ヘタの上の部分をハサミで切って収穫します。
収穫が遅れると、皮が固くなり、中の種も熟して、食味の悪い「ぼけナス」になってしまうので、採り遅れないようにしましょう。
また、ナスもトマト同様、昼間に光合成で作った養分を夜間 実に蓄えるので、栄養価を重視するなら早朝に収穫するのがオススメです。
わき芽のナスを収穫するたびに切り戻し
ナスは、次々にわき芽を出して節ごとに実をつけていきます。
放任していると果実がつきすぎて樹が弱るため、次のように摘心、収穫のたびに切り戻しを行います。

まず、わき芽には1、2花着生したら、1葉上を摘心(枝を切る)して止めます。
収穫したら同時に、下部の葉を1〜2枚残して切り戻し(枝を切る)を行います。
残した葉の根元から生えたわき芽を伸ばし、同様に摘心・切り戻しを繰り返します。
秋ナスを収穫するための更新剪定
夏の間、次々と実をつけたナスは、株がだんだんと弱ってきて、わき芽が伸長してこなくなります。
そこで、最盛期の頃(7月下旬から8月上旬)に更新剪定をすることで株が若返り、秋まで長く収穫することができるようになります。

まず、全ての枝を葉1、2枚だけを残す長さで切り詰めます。
次に、株元から30cm離れたところにスコップを入れ、土の中の根を切ります。
そこにたっぷりと追肥、水やりをすれば、また新芽が出てきて秋ナスが収穫できるようになります。
尚、植物は根と葉が繋がっているため、枝だけ切って根を切らないと、不要になった根が腐ってしまいます。必ずセットで根切りも行いましょう。
トラブル・生育不良
ナス栽培によくある、トラブル・生育不良などをまとめています。
石ナス
果皮が固くて光沢のない果実。
開花期前後の低温や極端な高温による受精不良が原因で発生することから、温度管理に注意します。
ホルモン処理によって防止することができます。
つやなし果
果皮につやがなく、かたい果実。
梅雨明け後の高温乾燥期に多く発生し、開花後15日以後の果実の水分不足で発生します。
十分なかん水を行うことによって防止することができます。
双子ナス、へん平果、舌出し果
低温、多肥、かん水などが重なって、花芽が栄養過剰になると発生します。
生育に適した温度管理、施肥の量、かん水の量などを管理する必要があります。
発生しやすい病害虫
ナスに発生しやすい代表的な病害虫と、その対策・予防法をまとめています。
病気
青枯病(あおがれびょう)
元気だった株が急にしおれ、青みを残したまま枯れてしまいます。
うどんこ病
葉やがくなどに、薄く白い粉状のカビが発生します。
半身萎凋病(はんしんいちょうびょう)
株の片側の葉や枝だけがしおれます。
その他の病気 | |
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褐色円星病 | 葉のみに発生し、淡褐色のまるい病斑ができ、やがて葉枯れします。糸状菌による病気で、若葉が生育する時期に雨が連続すると多発します。 |
褐斑病 | 葉に茶色や黒みをおびた斑点ができ、やがて枯れてしまいます。糸状菌による病気で、主に連作で発生し、病原菌は雨によって伝染します。 |
菌核病 | 茎の表面に、灰白色綿状やクモの巣状の菌糸が発生します。 |
苗立枯病 | 地ぎわ付近の茎や根が腐敗し、やがて株全体が枯れます。 |
モザイク病 | 葉に濃淡のモザイク模様が現れ、ひどくなると葉は縮れて奇形化します。原因ウイルスをアブラムシが媒介します。 |
害虫
カメムシ
亀のような形をした昆虫が、つぼみや果実を吸汁加害します。(写真はアオクサカメムシの幼虫)
チャノホコリダニ
果実のヘタの部分が褐色に変色してさめ肌状になり、新芽は固くなって芯止まり(生長が止まる)症状になります。
ダニの仲間による吸汁加害で、虫は小さく虫眼鏡などを使わないと見えません。
テントウムシダマシ(オオニジュウヤホシテントウ)
益虫のテントウムシと違い、黒い斑点が28個と多いのは害虫のテントウムシダマシ。葉を食害します。
その他の害虫 | |
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モモアカアブラムシ | 体長2mmほどの小さな虫が群棲し吸汁加害します。モザイク病のウイルスを媒介するため注意。 |
オオタバコガ | イモムシ状の幼虫が、蕾を食害します。 |
アズキノメイガ | 体長20mm〜25mm、淡褐色のイモムシが茎に入り込み食害します。 |
ハスモンヨトウ | 夜間にイモムシ状の幼虫が葉を食害します。 |