アブラムシ被害の症状と対策・予防法

ミズナの葉に群生するアブラムシ

集団攻撃と強い繁殖力、ウイルス病を媒介する吸汁性害虫の代表格「アブラムシ」。

その被害症状と生態、対策・予防法をまとめています。

症状と被害

体長1〜4mmの小さな虫が、新芽や葉裏などに群棲して植物の汁を吸って加害します。

新芽につくと芽が縮んだり、葉が巻いたり、葉の表面にこぶを作ったりして、生育を阻害します。

また、吸汁加害による直接被害に加え、次のような間接被害にも注意が必要。

間接被害

ウイルス病に感染した植物を吸汁したアブラムシが、次に健全な植物に移動して吸汁する時に、ウイルス病の病原菌を伝播します。

マクワウリに発生したウイルス・モザイク病 ウイルス・モザイク病の症状と対策・予防法

また、アブラムシの排泄物は粘着状でベタつき、葉や枝の上に付着するのですが、そこに「すす病」が誘発されて黒ずむことがあります。

MEMO
すす病

すす病は、アブラムシなど吸汁性害虫の排泄物に黒いカビが生えた状態のこと。

葉の表面が覆われることで光合成を阻害したり、作物の品質を著しく落としてしまいます。

アブラムシ被害の様子

生態

アブラムシの種類は非常に多く、日本で知られているものだけでも約700種類以上います。

多くの種類は様々な植物に寄生しますが、中には特定の植物にしか寄生しない種類もあります。体長は1〜4mmのものが多く、体色は緑、赤、黒、茶、黄色など様々。

生態は種類によって異なり複雑です。

一般的に、春〜秋の間は雌だけで繁殖(単為生殖)して急速に増加、冬が近づくと雄が現れ交尾をして産卵し卵で越冬します。また、アブラムシには翅のある有翅型と、羽のない無翅型が存在します。無翅型は繁殖専門で、密度が高まると有翅型のアブラムシが出現し、新しい寄生先を求めて移動します。

とにかく繁殖力が旺盛で、春から秋、特に春の新芽が伸長する時期に発生が目立ちます。

防除方法

対処法

アブラムシは、見つけたら個体数が多くなる前に潰して取り除くことが大切です。

しかし、大量発生して畑全体へ広がってしまった場合は、薬剤による駆除が簡単で効率的です。

MEMO

酢溶液やフノリ液、濃い牛乳の散布など、農薬を使わない民間対処法も数多くあります。

有効な薬剤(農薬)

薬剤防除に有効な農薬には、次のようなものがあります。

アブラムシは繁殖が旺盛なため、長期間効果が続く「ベニカ水溶剤」などの浸透移行性殺虫剤が便利です。

ベニカナチュラルスプレー」は、3つの天然由来成分(B.t.菌・植物油・水あめ)で、食べる直前まで使える殺虫殺菌スプレー。水あめ(還元澱粉糖化物)が、アブラムシを包んで退治します。

注意

農薬は「使用できる作物」が決められており、それ以外の作物には使用できません。農薬を購入・使用する前に適用作物を確認し、作物にあった薬剤を選びましょう。

予防法

何よりも最初の飛来を防ぐのが肝心です。

防虫対策に銀色の光反射テープを張る

ソルゴーやムギなどを周囲に植えて防風壁を作ったり、反射光を嫌う性質を利用して株元にシルバーマルチを敷く、または銀色の光反射テープを張るのも有効です。

アブラムシは黄色に誘引される性質を利用して、黄色の粘着板や粘着テープを株の周囲に設置すると効果的です。

また、特定防除資材「ピュアベニカ」を葉面散布しておくと、アブラムシの予防効果があります。有機JAS規格(オーガニック栽培)にも使える食品成分(食酢)100%のスプレーなので、あらゆる植物に、食べる直前まで使えます。

他には、アブラムシを食べる益虫のテントウムシを引き寄せる「ヒマワリ」などを畑に植えている所もあるようです。

MEMO

アブラムシの天敵であるテントウムシは、1匹で30〜40匹のアブラムシを食べると言われています。一方で、アブラムシが出す蜜のような排泄物(甘露)がアリを呼び寄せ、アリはテントウムシなどの天敵からアブラムシを守ります。

植物が窒素過剰の状態だとアブラムシが発生しやすくなるため、窒素肥料のやりすぎにも注意しましょう。