
家庭菜園の初心者の方向けに、トマト・ミニトマトの栽培方法を写真とイラスト付きでまとめています。
トマト・ミニトマト栽培の特徴、栽培時期、栽培手順・育て方のコツ、トラブルQ&Aなど。

トマト栽培の特徴

種類 | 科目 | 好適土壌pH | 連作障害 |
---|---|---|---|
トマト | ナス科 | 6.0〜6.5 | あり:輪作年限3〜4年 |
原産地が南米アンデス高原であるトマトは、乾燥・多日照・昼夜の温度差がある気候を好みます。
甘いトマトを作るためには水分を制御することがコツ。高畝にして排水をよくし、さらに雨除け栽培などの工夫が必要。乾燥気味に育てる方が味が良くなります。
また、トマトの生育には強い光が必要であり、光が不足すると軟弱徒長し、花数が少なく、花質も落ち、落花も多くなります。そのため、日当たりのいい場所で栽培するようにしましょう。
- ナス科の野菜との連作・近い場所での植付けはしない
- 水はけのよい高畝、マルチ、雨よけ屋根などで過湿を避ける
- 肥料は適正な量をバランスよく施し、「つるぼけ」に気を付ける
育てやすいのはミニトマト
露地野菜で完熟させたトマトの美味しさは別格ですが、高温や多湿に弱く栽培途中の作業も多くて、意外と作るのが難しいです。
最初は、丈夫で作りやすく、たくさん採れるミニトマト系の品種がオススメです。

トマトの栽培時期
トマトの栽培時期・栽培スケジュールは次のようになります。
3月上旬頃にポットに種をまいて育苗し、5月上旬に植え付け、7月頃〜10月初旬まで長期間収穫できます。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
トマトの栽培方法
トマトの栽培方法は、次のような流れになります。
大玉トマト、中玉トマト、ミニトマトのいづれも、種まきや栽培方法は基本的に同じです。
種まき・育苗
セルトレイに種をまき、本葉が出た頃にポット上げ(4号:12cmサイズ)します。

はじめからポットにまく場合は、ポットに3粒ずつ種をまき、本葉が出た頃に間引いて1本立ちにします。



まだ寒い時期の育苗となるため、ビニール温室やヒーターなどの保温・加温機材を使い、生育適温に注意しながら温度管理します。

最終的に、本葉7〜8枚、1番花が咲き始めた状態の苗に仕上げます。

育苗日数 | 発芽適温 | 生育適温 |
---|---|---|
60日前後 | 25〜30℃ | 25〜28℃ |
トマトは種をまいてから植え付けまで60日前後と長期間の育苗が必要となり、寒い時期なので温度管理も欠かせません。
家庭菜園などで少しの株数しか育てないのであれば、育苗の手間と難易度を考えると、市販の苗を利用するのがオススメです。

市販の苗は9cmポットに入っているものが多いので、12cmポットに移し替えて大きく育てましょう。
病害虫に強い接木苗を使うと、失敗も少なく育てることができます。
土作り

植え付けまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は6.0〜6.5です。
トマトの根は深く伸びるので、深くまで耕しておきましょう。
過湿に弱いため、排水性が良くない場所では高畝にします。マルチシートを張って根元への雨の侵入を防ぐのも効果的。また、周りにワラを敷くことで雨はね防止になります。
肥料
茎葉を伸ばしながら実をつけていくので、栽培期間を通じて肥料切れしないようにします。
但し、生育初期に肥料が多いと葉や茎ばかりが茂り実がつかない「つるぼけ」になりやすいので、元肥は控えめに、追肥で補うようにしましょう。
バランスが大切で、窒素が多すぎると、茎葉ばかり伸びて実がつきにくくなります。一方で、窒素が少なくリン酸が多いと、開花中の花房の実つきはよくなりますが、生育が衰え、次の花房が出にくくなります。
肥料には「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
連作障害・コンパニオンプランツ
トマトは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を3〜4年あけるようにします。
また、一緒に植えることで良い影響を受ける「コンパニオンプランツ」には次のようなものがあります。


植え付け
本葉が7〜8枚出て、1番花が咲き始めた頃が定植の適期です。


株間50cmほどで寝かせ植え。植え付け直後は仮支柱を立てて苗を支えます。
定植の前にポットごと水につけて吸水させておくか、定植後たっぷりと水をやります。
また、花房を畝の外側に向けて植える(作業通路側)のがポイントです。後から出る花房(実がつくところ)も同じ向きに出るため、収穫作業がやりやすくなります。


トマトの花房は、本葉8葉から9葉に最初の花房がつき、その後は3葉おきに花房をつける規則性があります。
寝かせ植え(斜め植え)のメリット
トマトは茎から根が出やすい性質を利用して、寝かせて植えることで、茎の部分から根(不定根)を出させます。
これにより、吸水力、吸肥力が高まり、樹勢が強く、収量が増えます。
また、原産地では横向きに葉茎を伸ばして成長するトマト。寝かせ植えはトマト本来の性質にも合い、より健康に育つため、病害虫に強くなる利点もあります。

植え付けの際には、土に埋める部分の子葉と本葉は掻き取っとておきます。そのまま土に埋めると腐ることがあります。
尚、接木苗の場合、寝かせ植えはNGです。接ぎ目部分が埋まってしまい穂木からも根が出て、接ぎ木の意味がなくなってしまいます。
支柱立て
1株に1本ずつ支柱を立てます。
1列なら直立型。2列なら合掌型の支柱にすると安定性があり、倒れにくくてオススメです。


主茎が伸びてきたら、生育に合わせて誘引していきます。

茎と支柱とに8の字型に紐をかけて結びます。茎を傷めつけないよう、きつくしすぎないこと。
仕立て
「1本仕立て」は、大きな実をならせる必要がある大玉トマトはもちろん、中玉やミニトマトにも向く基本形。
茎葉が混みあいにくく、株の中まで光と風が入るので、株が健全に育って、病害虫の被害も受けにくくなります。

中玉トマトやミニトマトには、主枝と第1花房の下から伸びる側枝(わき芽)の計2本を伸ばす「2本仕立て」も向いています。
主枝1本仕立ての倍の量が収穫できるので、苗が少なくてすむことが最大のメリット。成長点が2つになるため、初期育成が抑えられ、多少収穫期が遅れますが、茎葉が茂りすぎる「過繁茂」になりにくい利点もあります。
雨よけ屋根
雨に当たると病気や実割れを起こしやすいので、雨よけ屋根を張るのがオススメです。

特に、大玉トマトは完熟するまで時間がかかり、過湿障害が出やすいので、雨よけ屋根がないと難しいです。
また、雨が土を跳ね飛ばして葉に付くと、土壌病原菌に侵されやすくなります。これを防ぐためにも、特に梅雨の時期に設置しておきたいところ。
受粉・着果処理
トマトの花は、雄しべと雌しべの両方を備えた「両性花」で、同じ花の花粉が同じ花の柱頭に受粉することで実を付けます。
通常は自然の力(風による振動)で受粉されますが、人の手で花を揺すって受粉を助けることができます。
また、低温期や高温期には落花防止と着果促進のため、トマトトーン(ホルモン剤)を散布するのが有効です。
尚、ホルモン剤は開花した花だけに処理すること。つぼみに処理したり、何度も重複散布したりすると「空洞果」の原因になります。また、高温時や濃度が濃すぎるのも空洞果の原因になるため、暑い日は朝か夕方に行うようにしましょう。
追肥
開花後、実がつきはじめた頃に追肥します。
大玉トマトであれば、ついた実がピンポン玉大になった頃が追肥のタイミング。


追肥の場所は、張り出した葉の真下あたりに施します。
尚、樹勢が旺盛、茎が太く葉の色が濃く、葉が内側に丸まっているなど、養分過多の状態であれば、追肥は控えます。
わき芽かき・摘芯・摘果
生長に伴い、わき芽かき・摘芯・摘果を行います。

わき芽かき
葉のつけ根から出る「わき芽」は、トマトの成長に併せて次から次へと出てきます。

わき芽かきをしないと茎葉が茂りすぎて花芽がつきにくくなり、風通しも悪くなるため、葉の付け根から出てくるわき芽は全てかいておきます。
わき芽が伸びると主枝と見分けがつきにくくなるので、早めにかき取るのがポイント。1週間に1度はしておきたいところ。
ハサミで切ると樹液を介してウイルス病に感染することがあるので、手で摘み取るのが原則です。また、切り口がすぐ乾いて、傷が早く治るように、わき芽かきは晴れた日の午前中に行うこと。
摘芯
4〜6段目の花房ができる頃には、主茎の先端が支柱の頂上に達するので、先端を摘芯します。
この時に大切なのは、最も上の花房より上に出ている2〜3枚の葉を残しておくこと。これにより、株が充実して実に養分が届きやすくなります。
また、この頃になると、株の下の葉は役目を終えているので、下葉かきも行っておきます。第1果房より下の葉をすべて取り除くことで、風通しと日当たりがよくなり、病気予防にもなります。
摘果
大玉トマトの場合は1個1個の実を充実させるため、1房につく実の数を4〜5個に制限します。
それ以上に付いている場合は、果実がピンポン球くらいの大きさになったタイミングで、小さい実や形の悪い実を摘み取ります。
尚、ミニトマトは摘果の必要はありません。(中玉トマトも基本不要ですが、収穫サイズが少し小さくなるのが気になる場合は摘果します。)
収穫
開花後55〜60日後が収穫の目安です。ガクが反り返ったら収穫適期。
へたの近くまで赤くなったものから順番に収穫します。




トマトは、昼間に光合成で作った養分を夜間、実に蓄えるので、早朝に収穫するのがベストです。
ミニトマトの場合は、収穫が遅れると割果や落果の原因となるので注意が必要です。
尚、トマトは枯れるまで長期にわたって収穫できますが、栽培終了の目安としては、5段目以降になると病害虫が出やすくなるので、そのあたりで片付けるのも1つです。
トラブルQ&A
トマト栽培でよくあるトラブル・質問などをまとめています。
実が割れる

トマトの実に亀裂が入る「割果・裂果」。主な原因は、土壌水分の急激な変化にあります。
乾燥が続いたあとに急な降雨があると、実が内側から一気に肥大するのに、果皮の成長がついていけず、亀裂が入ります。また、強い日差しで果皮がコルク化し、そこから水を吸って割れることもあります。
対策としては、マルチにより土壌の過湿を防ぎます。また、雨よけ屋根も有効です。裂果は雨に直接当たることでも起きるので、その面からも効果が期待できます。
実のお尻が黒く腐る(尻腐病)

トマトのお尻(果頂部)が黒くなって腐るのは、カルシウム欠乏が原因で起こる「尻腐病(しりくされびょう)」という生理障害。
- 土のカルシウム不足 → 土作りの際にカルシウム(石灰資材)を入れる
- 土が乾燥しすぎてカルシウムの吸収が悪い → 適度に水やり
- 根張りが悪くてカルシウムの吸収が悪い
- 窒素過多でカルシウムの吸収が阻害されている → 肥料バランスの見直し
既に発症している場合は、いずれかの理由で根からカルシウムが吸収できていない状態なので、葉面散布によるカルシウムの補給が有効です。(予防にも。)
家庭菜園であれば、スプレータイプが手軽で使いやすいです。
果実の中が空洞
果実のゼリー部分の発達が悪く、空洞が発生する「空洞果」。
ゼリー部分は種を保護するためのもので、受粉が不完全だとゼリー質が発達せずに空洞ができます。ホルモン剤の散布時期が早すぎたり、高濃度であった場合にも発生します。
また、トマトは低温期に急な気温上昇が起こると果実が急激に肥大します。この時に外側の成長に内側の果肉部分が追い付かず、空洞果となることがあります。
実の表面にすじ
実の表面に黄色や緑色の斑点やすじが発生する「すじ腐れ果」。
日照不足や肥料の過不足(窒素過剰、カリウム不足)が原因です。
へたの周りが緑色
果実は熟しているのにへたまわりの緑色が抜けない「グリーンバック」。
窒素分がやや多い時に現れますが、生育は良好で味は変わりません。2日くらい放置すると緑色が抜ける場合もあります。
茎から根が出る

トマトの茎から根が出てくることがあります。これは「気根(きこん)」というもので、空気中の水分を取り込むために茎から伸びた根。
茎が途中で地面についたり、株が大きくなって水が足りなくなると出ることがあります。