土の中にすむ糸状の虫が、根を腐らせたり葉を枯らせる「センチュウ(線虫)」類。
その被害症状と生態、対策・予防法をまとめています。
症状と被害
センチュウ(線虫)は線形動物の総称で、土の中にならどこにでも棲んでいます。
植物寄生型のセンチュウが口針で野菜の根に穴をあけて中に侵入し、野菜の生育阻害を起こします。症状は地下部に出るため早期発見が難しく、蔓延しやすいのが特徴です。
根がセンチュウに寄生されると、草丈の短小、葉色の減退・しおれ、枯れるといった症状が発生し、成長が遅くなったり収穫量が減少したりします。
植物に害を与える代表的なものは次の3種で、被害にあった植物の根を観察すると次のような症状が見られます。
- ネコブセンチュウ・・・根に小さいこぶが無数にできている
- ネグサレセンチュウ・・・根腐れになり、細根がなくなっている
- シストセンチュウ・・・根に卵が詰まった小さくて固い袋(シスト)がついている
ネコブセンチュウの症状とよく似たもの
根にコブがついているからといってネコブセンチュウの被害とは限りません。似たような症状に「根こぶ病」「根粒菌」があります。
根こぶ病は、アブラナ科植物を連作すると発生する土壌病害。ネコブセンチュウは根全体に小さいこぶができるのに対し、根こぶ病は大小さまざまなこぶができます。
根こぶ病の症状と対策・予防法根粒菌は、マメ科植物に寄生する有益な菌で、空気中の窒素を固定して植物に供給してくれます。
生態
センチュウ(線虫)は土の中に生育する小さな虫で、線形動物の総称。体長は0.3〜1mmほどと小さく、体色も透明に近いため、肉眼での観察は難しいです。
生態は種類によって様々。
ネコブセンチュウの場合、幼虫が根の中に侵入して定着。排泄する刺激物質により根の細胞が異常分裂を起こし、コブを形成。そこから養分を吸収して成長します。成長したメスの成虫がコブの表面にゼリー状の”卵のう”を作り、その中に数百個の卵を産みます。
防除方法
対処法
センチュウに代表される土壌病害虫は、かかってしまうと薬剤散布の効果もあがらないため、発生を防ぐことが大切です。
発生してしまった場合は、「ネマトリンエース粒剤」などの殺線虫剤が効果的です。
農薬を使わない場合は、太陽光による土壌消毒が有効です。
雑草対策に太陽熱マルチ殺草処理(太陽熱土壌消毒)を試してみるまた、「米ぬか」を畑に鋤き込むことで退治することもできます。
センチュウには植物寄生型センチュウと自活型センチュウがあり、野菜栽培に問題となるのは植物寄生型。
米ぬかをまくと乳酸菌が繁殖し、それを餌に自活型センチュウが増えます。米ぬかの分解と自活型センチュウの排泄により、土中のアンモニア濃度が高くなり、アンモニア耐性が低い植物寄生型センチュウが減ります。
予防法
予防としては、土壌環境のバランスを崩さないように、連作をしないことが大切です。
連作障害の原因と対策、各野菜の輪作年限についてまた、センチュウを抑制する効果を持つ対抗植物を混植したり、輪作や間作に加えることでセンチュウの密度を下げることができます。
センチュウ対抗植物として代表的な「マリーゴールド」は、殺センチュウ物質を分泌してセンチュウを退治します。品種には「グランドコントロール」や「エバーグリーン」などがあります。
「えん麦」は、根にセンチュウが侵入するものの、寄主として不適なため成熟できず、産卵に至らず次代のセンチュウ密度の低減につながります。品種には「ネグサレタイジ」や「ナツカゼ」などがあります。
シストセンチュウには「クローバー類」が有効です。シストセンチュウのふ化促進物質を根から出して幼虫をふ化させるのですが、寄主として不適なため寄生できず、そのまま餓死させます。品種にはクリムソンクローバーの「ディクシー」などがあります。
他に「石灰窒素」を利用した防除方法もあります。
石灰窒素には殺虫作用があり、作付け前に全面散布します。センチュウは地中で卵の状態で越冬し、その間は薬剤が効きにくいので、春〜秋のあいだに施用すると効果が高まります。
殺虫剤としての効果が得られた後は、窒素肥料に変わるため、施肥量には注意しましょう。