
家庭菜園の初心者の方向けに、ジャガイモの栽培方法を写真とイラスト付きでまとめています。
ジャガイモ栽培の特徴、栽培時期、栽培手順・育て方のコツ、発生しやすい病害虫と対策など。
ジャガイモ栽培の特徴

種類 | 科目 | 好適土壌pH | 連作障害 |
---|---|---|---|
ジャガイモ | ナス科 | 5.5〜6.0 | あり:輪作年限2〜3年 |
栽培の手間があまりかからず、春と秋の年2回栽培でき、保存もきくジャガイモは、家庭菜園にもオススメの作物です。
一見すると根が肥大化したものに見えるジャガイモは、じつは茎が肥大化したもの(塊茎)。そのため、イモは種芋よりも上につき、地表に出やすくなります。

イモは日光に当たると、緑化すると同時にソラニンという毒素のある物質が作られるため、土寄せをしてイモを地表に露出させないことが大切です。
- ウイルス病を避けるため、種イモは市販のものを用いる
- ナス科の野菜との連作・近い場所での植付けはしない
- 植え付け後に何度か土寄せをし、イモが土から出ないようにする
春作と秋作それぞれ適した品種を選ぶ
春作と秋作で育て方にさほど違いはありませんが、植え付け時期に適したジャガイモの品種を選ぶことが大切です。

特に秋作では、生育期間中に気温が下がり生育しにくくなるため、休眠期間が短い(=芽が出やすい)ものを選ぶ必要があります。
品種 | 特徴 |
肉質
(粉質-粘質) |
休眠期間
(貯蔵性) |
|
---|---|---|---|---|
春作 | 男爵 | ホクホク系品種の代表格 | 粉質 | やや長い |
キタアカリ | 粉質でホクホク食感 | 粉質 | 中間 | |
メークイン | ねっとり食感で煮崩れしにくい | 粘質 | 中間 | |
秋作 | デジマ | 食味がよく煮崩れしにくい | 中間 | 短い |
アンデスレッド | 口当たりが良く甘みがある | 粉質 | 短い | |
ニシユタカ | ねっとり食感で煮崩れしにくい | 粘質 | 短い |
マルチ栽培について
家庭菜園ではその手軽さから、ジャガイモのマルチ栽培もよく行われています。

マルチ栽培のメリットとしては、地温を確保して生育を促し、早植えや早採りができること。また、黒マルチを利用すれば、光を遮って雑草とイモの緑化を抑制することができ、土寄せの作業も不要となります。
一方で、マルチは地温が上がりすぎることがあり、高温障害が出やすくなります。植えた種芋が高温で腐ったり、収穫するイモの食味や貯蔵性が低下したりといったデメリットがあることも考慮しておきましょう。
ジャガイモの栽培時期
ジャガイモの栽培時期・栽培スケジュールは次のようになります。
春作と秋作の年2回栽培が可能です。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
ジャガイモの栽培方法
ジャガイモの栽培方法は、次のような流れになります。
土作り
畑は、十分に根を広げて養分を吸収できるよう、深さ25cm〜30cmに耕します。
茎葉が過密にならないように、株間30cm、畝幅50cmを確保して畝を立てます。(1条植えの場合)
また、水はけの悪い畑では、種芋が腐ったり根腐れを起こすことがあるため、高畝にして水はけをよくしておきましょう。
pHは5.5〜6.0が目安です。pH7.0以上になると「ソウカ病」が発生してしまうので、石灰のやりすぎに注意。
肥料
ジャガイモは少ない肥料でも育ちますが、初期育成を促すのがポイント。
元肥に「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料を施しておきます。
また、イモの肥大期にカリを施肥すると、良質のデンプンができて美味しくなるため、追肥に「草木灰」などを入れると良いです。
連作障害
ジャガイモは、連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を2〜3年あけるようにします。
また、近くに同じナス科の野菜があると病害虫が増え、キャベツがあるとジャガイモの生育が悪くなるため、これらの野菜とは離して植えるようにしましょう。
種芋の準備

ジャガイモは、アブラムシを媒介してウイルス病を持っている可能性が高いので、種芋用として販売されている、無病の種芋を選ぶことが大切。
種芋として流通しているのは、国の施策として厳密な管理のもとで生産された検定イモなので安心です。
芽出し(浴光催芽)
種芋は少し早めに購入して、芽出しをしておくとスムーズに生長します。


雨がかからず、弱い光が当たり、15度前後の温度が保てる場所に、2〜3週間ほど並べて置いておきます。
強い光を当て続けると高温になる恐れがあり、また、暗い部屋だと白い芽が出て徒長してしまうため、置く場所には注意。
イモの表面がやや青くなり新芽が出てくれば、芽出しの完了です。(芽の色は黒っぽいモノや緑色、紫色など品種によって異なります。)
切って乾かす
種芋は、芽の数が均等になるように切断します(縦切りの方が発芽が揃いやすい)。目安は1片40〜60g。40g以下の小さい芋は切らずにそのまま使います。

切り口がぬれていると腐りやすいため、風通しが良い場所に2〜3日置いて、切り口がコルク状になるまで乾燥させます。


また、植え付け直前に切り分け作業をする場合は、切り口に「草木灰」をまぶして植えます。植え付け後の腐敗を防ぐ効果があります。

尚、秋作の場合は種芋が腐りやすいため、切らずにそのまま使います。(小ぶりの種芋を選ぶとオトク)
植え付け
株間30cmで深さ10cmの穴を掘り、切断面を下(または逆さ植え)にして植え付けます。
植え付け後の水やりは不要です。

春植えの場合は、霜よけに不織布などでトンネル掛けをしておくと安心です。(遅霜の心配がなくなったら撤去します。)

ジャガイモの逆さ植え
ジャガイモは通常、切口を下に向けて植え付けますが、逆さに植えることで病気に強いジャガイモが育ちます。
種芋の芽は表面に付いているため、切口を下にする普通の植え方だと芽が付いた方が上になり、芽は自然に上に伸びて成長します。

一方、逆さ植えにした場合、芽は一度下に伸びた後、上へ向かって伸びることになるため、弱い芽は成長を止めて強い芽だけが生き残ります。
このストレスによって、株全体の抵抗性が高まり、病害虫に強くなります。(科学的解明はされていません)
また、通常植えに比べて、芽の数は少なくなりますが、生育旺盛で大きなイモが多くなります。
発芽したらマルチに穴あけ

マルチ栽培の場合は、芽が出る箇所に穴を開けて、芽を外に出します。
マルチで覆われたままだと、芽が抑えつけられて成長に影響を及ぼすのに加え、太陽光で熱くなったビニール熱により芽がダメになってしまうので注意。
芽かき(間引き)


芽が伸びて草丈10cmくらいになった頃、1つの種芋から芽が多く出ていたら、生育のいい1〜2本を残して芽かきをします。
例えば↑の写真だと、1つの種芋から3つほど芽が出ており、それを間引きして2本に。
芽かきの際には、種芋ごと引き抜いてしまわないように、株元の土を押さえながら行いましょう。
- 芽の数が多いと養分が分散し、イモが小さくなります。
- あえて芽かきせず、大小さまざまなイモを収穫して楽しむのも1つ。
土寄せ・追肥
土寄せは2回に分けて行います。
マルチ栽培の場合は、土寄せをする必要はありません。
土寄せ(1回目)・追肥


草丈が15cmくらいに生育した頃、1回目の土寄せ(半培土)。株元を中心に5cmほど土を盛ります。
土寄せと同時に、株元に追肥を施します。
イモの肥大期にカリを施肥すると、良質のデンプンができて美味しくなるため、追肥はカリを中心に。うちでは「草木灰」と「ボカシ肥」を入れています。
土寄せ(2回目)

1回めの土寄せから2〜3週間後に、2回目の土寄せ(本培土)。さらに5cmほど土を盛ります。
土寄せが不十分だと、イモが露出して緑化する原因となります。また、土寄せは、地温・水分条件を調節して生育を促したりなど、重要な作業の1つ。


尚、マルチ栽培(黒マルチ)の場合は、イモに日光が当たらないため、土寄せの作業は不要です。

花は早めに摘む
花が咲く頃に、土中のジャガイモが太りだします。

花に養分がとられないように、咲いている花は見つけたら摘んでおきます。
収穫
地上部の茎葉が枯れ始め、黄色くなってきたら収穫の適期。

葉が枯れ出す前に収穫すると、皮の薄い「新じゃが」が採れます。また、地上部が完全に枯れるまでおいて収穫すれば保存性が高まります。
雨が降っていたりすると、イモに泥が付いて保存中に腐りやすくなるため、天気がよく、土が乾いている日に掘り上げます。春作の場合は、梅雨の前には収穫しておきます。


イモを傷つけないよう、株元から少し離れた位置にスコップをさし、土を掘り上げ、茎を持ちながら収穫します。皮が剥がれると傷みやすくなるので、丁寧に掘り起こしましょう。
掘りあげた後、土の中にイモが残っていることが多いので、採り忘れないように。
掘りあげたイモは風にあて、十分に土を乾かしてから冷暗所で保存します。
保存

掘り出したイモを長期保存するためには、次のようにします。
収穫は晴れた日に行い、2時間ほど畑で乾燥させます。そのあと1週間くらい雨のあたらない所で陰干しして、腐ってくるイモは取り除きます。残ったイモをダンボールなどに詰めて暗くして保管します。
洗うと保存性が落ちてしまいます。
また、保存しているイモから芽が出たら、都度、芽を取り除くこと。芽が出たままにしておくと、養分が吸われて、イモ自体がシワシワになってしまいます。
トラブル・生育不良
ジャガイモ栽培によくある、トラブル・生育不良などをまとめています。
内部に茶色いシミがある
高温に伴う水不足によって、内部の中央組織が死滅し、茶色く変色してしまうことがあります。
中心に穴が空いている
肥料過多、水分過多、地温が高過ぎる、茎数が少ない、株間が広すぎるなどにより、イモが過剰に肥大した際、中心部に養分が供給されずに発生します。
イモが変形している
こぶのような出っ張りがあるものや芽が出ているものは「2次生長」という現象です。
窒素肥料の過多や高地温・乾燥後の降雨などが原因。食べる分には問題ありません。
実割れ

実割れは、イモの内部の生長に表皮の生長が追いつかないと発生します。
例えば、乾燥状態が続いた後に大雨が降って、肥大が一気に進んだ場合などに起こります。
予防として、水はけの良い畝を作る、肥料過多にならないよう追肥は控えめにするなどがあります。
発生しやすい病害虫
ジャガイモに発生しやすい代表的な病害虫と、その対策・予防法をまとめています。
病気
疫病(えきびょう)
葉に水がしみたような暗緑色の病斑が現れ、裏面には白いカビが発生、やがて枯れます。
ソウカ病

細菌性の病気で、イモの表皮がでこぼこになる病斑(かさぶた状)ができます。外見は損ないますが、食用は可能。
アルカリ性の土壌で発生しやすいので、石灰の入れすぎに注意。(pH7以上だとほぼ発生する)
モザイク病

葉にモザイク状の模様、葉が縮れて小さい、葉色が薄い、などの症状が現れます。
ウイルス病は感染すると治療する方法がありません。種芋の時点で既にウイルスを持っている場合が多いので、無病の種芋を使うことが大切です。
また、アブラムシがウイルスを媒介して、他のジャガイモ株だけでなく、他の野菜にも感染する場合があるので、早めに抜き取って焼却処分すること。
尚、既にイモができている栽培終盤の発生であれば、収穫した芋は食べても問題ありません。(私もその場合は特に対処せず普通に収穫して食べています)
その他の病気
半身萎凋病 | 株の片側の葉が黄化してしおれ、範囲が拡大して枯れます。 |
害虫
アブラムシ
体長1〜4mmの小さな虫が集団で棲みつき、吸汁加害します。
モザイク病のウイルスを媒介するため、注意が必要。
テントウムシダマシ(オオニジュウヤホシテントウ)

ネキリムシ


苗の茎を食いちぎるネキリムシ(イモムシ状の幼虫)ですが、ジャガイモのイモに穴をあけて食害もします。