
家庭菜園でのキュウリの育て方や栽培のコツを農家が分かりやすく解説します。
気になる項目があれば、目次をクリックしてすぐに確認できます。
基本情報

採りたてのシャキシャキとしたキュウリは、家庭菜園の楽しみのひとつ。
夏野菜の代表格ですが、時期をずらして栽培すれば初夏から秋まで収穫することができます。
生育スピードが早いので、肥料切れと水不足を起こさないような管理が重要。また、ツルが旺盛に伸びるので、適正に整枝をして風通しを良くすることが大切です。
収穫が遅れるとヘチマのように大きくなり、コリッとした食感や食味も薄れるので、早め早めに収穫していきましょう。
- 生長が早く次々と実をつけるので、肥料切れと水不足を起こさない
- 春まきから時期をずらして何度か作れば、長く収穫可能
栽培カレンダー
キュウリの栽培時期は次のようになります。

中間地を基準とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。
近年の気候変動による高温や大雨などで、従来の栽培時期が合わないことがあります。状況に応じて、時期をずらす、品種を変えるなどの対応も必要。
基本は育苗して畑に定植。6月に入り気温が十分に高くなれば畑に直播きもできます。
時期をずらして栽培することで、長期間の収穫が可能となります。
栽培方法
キュウリの栽培は、次のような流れになります。
種まき・育苗
気温が暖かくなる6月以降であれば、畑に種を直播きすることもできます。直播きの場合
ポット(直径9cmの3号サイズ)に種まき用の培養土を入れ、3粒ずつ種が重ならないようにまきます。


その上に軽く土をかぶせ、たっぷり水をあげましょう。
まだ寒い時期は、保温資材を使って暖かい環境で育苗します。

本葉がで始めたら1本に間引き、最終的に本葉3〜4枚の苗に仕上げます。


育苗日数 | 発芽適温 | 生育適温 |
---|---|---|
30日前後 | 25〜30℃ | 22〜28℃ |
土作り

苗の植え付け/種まきまでに「土作り」を済ませておきます。
キュウリ栽培で大切なのが土。根がしっかり張れば良質なキュウリがたくさん採れます。根は浅く広く張るので、過湿や乾燥に弱く、排水性や通気性が悪い土だとうまく育ちません。また、成長が早く肥料切れを起こしやすいので肥沃さも必要です。
土作りのやり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

植え付け(定植)
本葉3〜4枚まで苗が育ったら、畑に植え付けましょう。
ポットから苗を優しく取り出し、50〜60cm間隔で植えます。つるの先が風で傷まないよう、仮支柱を立てて誘引しておきましょう。


植えた後は、根がしっかり張るように、株のまわりにたっぷり水をあげてください。
晴天の暖かい日の午前中に植え付けると、活着がよくなります。また、若苗の方が定植後草勢が強くなります。
畑に直播きする場合
畑に直接まく場合は、気温が暖かくなる6月以降まで待ってから種まきをします。
株間50〜60cmの間隔でまき穴をあけ、1つの穴に3粒ずつ、種が重ならないようにまきます(点まき)。その上に軽く土をかぶせ、手で優しく押さえたら、たっぷり水をあげましょう。
本葉が出たところで、間引いて1本立ちにします。
支柱立て
1列で栽培する場合や株数が少ない場合は直立型、2列なら合掌型に支柱を立てます。


「キュウリネット」を使用するとツル(巻きヒゲ)が勝手に絡みつくので誘引の手間が省けます。


親づるがネットにしっかり絡みつくまでは、麻ヒモなどを使ってこまめにネットに結びつけてあげましょう。
敷きわらマルチ

梅雨前に株元へ「敷きワラ」や刈草を敷いておきます。
土の乾燥を防ぐと共に、雨による泥跳ねを防いで「べと病」などの病気を抑える働きもあります。
尚、ワラは薄めに敷くようにしましょう。
ワラが厚すぎると、水分が地表まで十分にあるため、浅根を好むキュウリは敷きワラと土の間に根を伸ばします。このため、天候による過乾・過湿の影響を受けやすく、生育障害や病害虫の発生原因となりやすくなります。
整枝・摘芯・摘葉
整枝

生育初期に根を十分に伸ばして、根張りを良くしておくことがキュウリ栽培の秘訣。
そのため、株元から5節までのわき芽・雌花は摘み取ります。(わき芽かき)


それより上にあるわき芽は子づるとして伸ばします。
摘心
子づるに雌花がついたら、その先についている葉を2枚残し、そこから先のつるは摘み取ります(摘心)。
残す雌花(果実)は、子づるに1〜2果が目安

そうすることで、子づるの枝葉が茂りすぎて風通しが悪くなるのを防ぎ、他のわき芽の生長を促します。
また、親づるはネットの先端まで届いたら摘心します。すると、親づるの中段あたりから子づるが出てきて収量が増えます。
摘葉・下葉かき
摘葉は、風通しや採光を良くして果実品質を高め、管理作業をしやすくするために欠かせません。
収穫が始まったら株元の古い葉や大きい葉を取り除いてすっきりさせます。黄色に老化した葉や病害虫に侵された葉は適時取り除きます。
但し、下葉を除きすぎると樹勢の低下を招きやすいので注意しましょう。
追肥
キュウリは生長が早く次々と実をつけるので、定期的に追肥して肥料切れさせないように育てます。

植え付けから2週間後を目安に、1回目の追肥を株間にまきます。
その後、2〜3週間に1回のペースで追肥をします。
1回目は株元に、2回目は畝の肩に、3回目は畝の脇に施す、というように根の成長に合わせて追肥の場所を変えてやります。
人工授粉は必要ない
キュウリの花は雌雄異花で、自然条件下での受粉は虫媒による他花受粉が行われます。
しかし、キュウリは単為結果性が強く、受粉しなくても結実する性質があるため、人工授粉の必要はありません。
花の付け根から茎の間に小さなキュウリがついているのが「雌花」、ないものが「雄花」です。


水やり
キュウリの95%以上は水分であり、土壌水分は果実の肥大に重要な役割を果たしています。
そのため、果実の肥大期に水分が不足すると、果実の肥大が著しく悪くなったり、曲がり果や尻細り果などの変形果を生じやすくなります。
肥大期に水分不足にならないように、こまめな水管理を行いましょう。
収穫

実がつきはじめたはじめの2〜3本は、養分を株の充実に向けるため、小さいうちに収穫してしまいます。(長さ10cmくらいを目安。)
その後は、長さ20cm〜22cmくらいになったものから収穫します。
収穫の際、実の表面のトゲがとれると鮮度が落ちてしまうので、首のほうを持ち、ハサミで切って収穫します。
また、朝に収穫した方がみずみずしくておいしく味わえるので、早い時間帯に収穫するのがポイント。
あっという間に大きくなるキュウリ

キュウリは株につけたままにすると、あっという間に大きくなります。
未熟果を食すキュウリは、開花後7日〜10日が収穫の目安です。
収穫が遅れて果実が肥大すると、養分を種に集めるため他の結実が悪くなります。また、なり疲れ(スタミナ切れ)て樹が弱ると病害虫がつきやすくなるため、こまめに収穫して実を大きくさせ過ぎないようにしましょう。
種取り(自家採種)
キュウリの種を自家採種する場合は、種とり用に完熟するまでキュウリを育て、次の動画のようにして種を取ります。
うちではこのやり方で固定種を自家採種しています。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
キュウリは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を2〜3年あけるようにします。
避けられない場合は接木苗を利用しましょう。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
キュウリと相性のいい野菜には次のようなものがあります。

栽培Q&A

キュウリ表面に発生する白い果粉を「ブルーム」と呼びます。(主成分はケイ酸)
ブルームは、果実の水分が奪われるのを防ぐためにキュウリが出すもので、食味には関係ありません。
しかし、消費者にはブルームがないキュウリの方が好まれるため、ブルームの発生しない「ブルームレス」品種や、ケイ酸吸収の悪い台木を利用した苗などもあります。

くるりと曲がった「曲がり果」や「先細り果」などの奇形果が出てくるのは、株が老化してきたサイン。
奇形果は見つけたら早採りして樹の負担を軽くしつつ、追肥と水やりで回復を図りましょう。
それでも良い実がつかなくなったら、片付け時期と考えましょう。
果肉に穴があくのは、水分不足が原因です。
土壌中の水分不足の他、根の張りが不十分、根が傷んでいるために水が吸収できない場合もあります。
キュウリは根の張りが浅く乾燥の影響を受けやすいため、敷きワラなどでマルチングすることで、根を保護しながら土の乾燥を防ぐことができます。