家庭菜園の初心者の方向けに、ニンジン(人参)の栽培方法を紹介します。
基本情報
ニンジンは発芽したら半分は成功といわれるほど、発芽が難しい野菜です。元気に発芽したらあとは簡単。
発芽まで土を乾燥させないよう細心の注意を払い、苗が小さいうちは雑草をとり、間引きもしっかりして大きく育てます。
ニンジンは葉の部分も栄養があり、間引いたものも美味しく食べられます。
播種(種まき)から収穫までの日数は根長によって異なり、単根種で約80日、長根種で約140日となります。
- 種まきから発芽までは水分が必要。地表面が乾かないように注意する。
- 除草と間引きが収量と質を左右する
栽培時期
ニンジン(人参)の栽培カレンダーです。
中間地を基本とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。
春まきと夏まきができますが、基本作型は夏まき秋冬採りです。
春まきは「とう立ち」しやすいため、春まきに適した品種を選びましょう。
栽培方法
ニンジン(人参)の栽培は、次のような流れになります。
土作り
種蒔きまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.5です。
ニンジンは根が深く伸びるので、耕土が深く、保水力があり、排水性のいい土が適しています。
また、ニンジンの生長点である根の先端部分が障害物に触れると、根が分かれて「又根」になってしまいます。そのため、土の塊や石、植物の残渣などは丁寧に取り除き、深さ30cmくらいまでよく耕しておきます。
肥料
ニンジンは肥料分の少ない土地でも育ちます。また、未熟な肥料があると「又根」の原因にもなるので、種まき直前の施肥は避け、早めに元肥を入れて耕しておきます。
肥料には、「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
種まき
ニンジンは移植できないので、種は畑に直播きします。
集団で種まきすると発芽率がよくなるので、条播きにして後で間引きます。
幅20cmでまき溝を作り、種を1cmに1〜2粒と密に条播き。覆土は4〜5mmと薄めに、しっかりと鎮圧します。
- 密植させることで発芽率を上げる
- ニンジンは「好光性種子」なので、土をかけすぎて光を感じなくなると発芽しない
- 鎮圧が甘いと土が乾きやすい
発芽には水分が必要なので、雨が降った翌日にまくのが理想です。乾いているときはたっぷり水をまいてから種をまきます。雨が降らず乾燥が続きそうなときは、発芽するまで毎日、朝か夕方の涼しい時間帯に水やりをしてやりましょう。
種まきから10日前後経っても発芽しなければ、種をまき直した方が良いかと思います。
不織布をかけて乾燥を防ぐ
種を蒔いたら、発芽まで水を切らさないことが大切です。
本葉が出揃うまでの2週間、やや湿った状態に水やりするのが良いのですが、その手間を省くために被覆資材を活用します。
上から「不織布」をふわりとベタ掛けしておくことで、畑の乾燥を防ぎ発芽しやすくなります。また、雨などで種が流れるのも防止できるのでオススメです。
ベタ掛けした被覆資材は、本葉が出て間引きを行う頃までそのままにしておきます。
間引き
3回の間引きで、最終的には握りこぶし幅の間隔にします。
間引き1回目
本葉が1〜2枚の頃、3〜4cm間隔に間引きます。
また、ニンジンはゆっくり生長するので、生長の早い雑草に負けないよう、生育初期は除草を徹底しましょう。
間引き2回目
本葉が3〜4枚の頃、7〜8cm間隔に間引きます。
間引き3回目
本葉が5〜6枚で、根が直径1cmくらいに太り始めた頃、3回めの間引きで最終株間に。
握りこぶし幅(10〜12cm)の間隔があくように間引きます。
尚、間引いたニンジンは、葉の部分も栄養満点で美味しく食べることができます。間引き菜はパセリ代わりに、細い根はかき揚げやきんぴらに使えます。
追肥
3回目の間引きの後に、追肥を施します。
条間にパラパラと肥料を施し、土と肥料を混ぜるように畝の表面を軽く中耕して、株元に寄せます。
土寄せ
ニンジンのオレンジ色の部分は、胚軸(葉と根の間の組織)と根が一体化して肥大した部分なので、光が当たると光合成して緑化して品質が落ちてしまいます。
肩の部分が地上に出すぎている場合は、根首が隠れるように土寄せをしておきましょう。
収穫
種まきから3ヶ月半ほど、葉が茂ってくる頃が収穫期になります。
根元を少し掘って太さを確認し、根が太ってきたもの(地上に出ている根の直径が4〜5cmくらい)から収穫します。
収穫する際は、茎の下の方を持って真っ直ぐ上に引き抜きます。
ニンジンが十分に成長して収穫適期に達すると、根全体がしっかりと太くなり、先端部分もある程度の太さになります。また、根部の長さは三寸系:10cm、五寸系:15cmほどになります。
これらを目安に、試し掘りをして収穫適期を見極めましょう。
尚、成長し過ぎたニンジンは実割れ(裂根)を起こすため、採り遅れないように注意。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
ニンジンは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を1〜2年あけるようにします。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
ニンジンと相性のいい野菜には次のようなものがあります。
一方で、ニンジンと相性の悪い野菜には次のようなものがあります。
これらの野菜とは離して植えるようにしましょう。
栽培Q&A
ニンジンの種(未加工のもの)は小さく毛も生えているので、とても種まきがしにくいです。
市販の種には扱いやすいように加工されたものもあります。
種子のまわりをコーティングして丸い形にしたペレット種子は指でつかみやすく、均等に播種しやすいです。
また、一定の間隔で種がテープに固定されたシードテープ(シーダーテープ)は、そのまま畑に敷くことで均等に種をまくことができます。(テープは水溶性で水をかけると溶けて種だけになります。)
ニンジンの種の発芽率が他の野菜に比べて低いのには、次のような理由があります。
- 採取のときに未熟種子が含まれやすい
- 種子に発芽抑制物質が含まれている
- 種子の寿命が短く(1年〜2年)、発芽率が低下しやすい
- 高温や低温、乾燥条件下では発芽しにくい
ニンジンの根が通常の1本から分かれて複数の根になる現象で、又根や岐根と言います。
生育の途中で、根の先端に障害物があたると、又根になります。畝を作る際に、石やごみ、草や野菜の残渣は取り除き、土の塊などがないようにしておくことが大切です。
また、肥料のやり過ぎにも注意。根の発育が良くなり過ぎたり、肥料やけで生長点がやられてしまうことも、又根の原因になります。
ニンジンにひび割れが入る現象で、裂根と言います。
生育後期の過湿など、土壌水分の急激な変化がきっかけで、根の中側と外側との成長バランスが崩れたことが主な原因です。
また、収穫期に裂根するのは、収穫の遅れによる過熟が原因です。
ネマトーダと呼ばれるセンチュウ類(ネコブセンチュウなど)の寄生によるもの。
特にニンジンは侵されやすいので、前作に被害があったところは避けて栽培しましょう。
一般的な赤色のニンジンを植えたのに、同じ種から1本だけ白いニンジンができた。
これは生育障害ではなく、ごくまれに起こる「先祖返り」と呼ばれる現象で、原種の特徴が出たニンジンができる場合があります。
食べられますが、美味しくありません。