園芸店やホームセンターで販売されている野菜の種や苗を見ると、同じトマトやナス、ダイコン、キャベツなどでも、たくさんの品種があります。
ここでは、野菜の種・苗を選ぶ際の目安となるよう、それぞれの特性や選び方を紹介します。
野菜の種の選び方
野菜には味や形の違いだけでなく、種まきから収穫までの期間の長短、病気に対する抵抗性の有無など、特性が異なる品種がたくさんあります。
野菜の種を購入する際は、そうした特性にも注目して選ぶようにしましょう。
早晩性
同じ野菜でも、品種によって種まきから収穫までの期間(栽培日数)が違います。
早い時期から植えられて短期間で収穫できる「早生」、早植えには向かずゆっくり育つのが「晩生」。
その他にも、中間的な中生や、極早生、超晩生などがあり、うまく組み合せることで時期をずらして安定的に収穫することが可能です。
早生は栽培期間が短いため、病害虫の被害に遭いにくく栽培管理も楽なので、初心者にもオススメです。
晩生は栽培期間が長い分、味のよいものができますが、病害虫に掛かるリスクが増え、管理や手間も掛かります。
また、初夏にエダマメを食べたければ早生系を4月にまく、完熟させたダイズとして収穫するなら晩生系を6月にまく、タマネギを長期保存したい場合は晩生系を選ぶ、といったように使い分けたりします。
耐病性
野菜はさまざまな病気に掛かります。
数ある品種の中には、特定の病気にかかりにくい、または病気にかかっても症状が重くなりにくい「抵抗性(耐病性)品種」があります。
例えば、アブラナ科野菜は連作すると「根こぶ病」が発生しやすいのですが、種袋の品種名に「CR」と記載されているものは、根こぶ病の抵抗性品種になります。他に、キャベツなどに「YR」と記されているのは「萎黄病」の抵抗性品種であることを示しています。
病気が発生して対策をしたい場合は、こういった抵抗性品種を選びましょう。
晩抽性
花茎が伸びることを「とう立ち」といい、温度の行程や日長の長短が影響してスイッチが入ります。
果菜類は花が咲くほど収量アップしますが、根菜類・葉菜類ではとう立ちすると葉が固くなって食味が落ちてしまいます。
特に冬越野菜でとう立ちが心配な場合は、温度や日長の影響を受けてもとう立ちしにくい「晩抽性品種」を選ぶようにしましょう。
野菜のとう立ち(薹立ち・抽苔)について加工の種類
不形状や小さい種をコーティングして扱いやすくしたり、発芽しやすいように加工したりといった、加工種子には次のようなものがあります。
ネーキッド種子
発芽を促進するために固い種皮を取り除き、裸状にした種子。
病気予防に殺菌剤でコーティングしているものもあります。
種袋から種を出すと、鮮やかな赤や青色などに着色されているものがあります。これは、種がカビたり、畑に病原菌を持ち込むのを防ぐために消毒しているという目印。また、色がついていると、まいた種が土の上でもよく見えるという利点もあります。
コート種子
小さい種や、いびつな形の種を、種まきしやすいように丸い形でコーティング加工したもの。「ペレット種子」ともいいます。
プライミング種子
種子が吸水し発芽に至る直前の状態まで代謝活動を人工的に進めた種子。
発芽までのスピードが速く、揃いもよい特徴があります。
シーダーテープ
水に溶けたり、微生物によって分解するテープに、野菜の種類ごとの株間に合わせて種子を封入したもの。
必要な長さに切って、まき溝に置くだけで、適切な株間に適切な数の種をまくことができます。
F1種(交配種)と固定種
野菜の種には「F1種(交配種)」と「固定種」があり、現在扱われている種のほとんどは「F1種」です。
F1種とは、味、収量、耐病性などを高めるため、人工的にかけ合わせた交配種のこと。(種袋に◯◯交配などと記されています。)一代雑種ともいわれ、その品種の特性は1代限りにおいてしか発揮されません。(種を採ってまいても同じ形質の野菜になりません。)(遺伝子組換え種子とは別物です。)
これに対し固定種は、育てた野菜から種を採り、その種から野菜を育てるといった自家採種を繰り返して形質が安定した野菜のこと。京野菜、加賀野菜といった伝統野菜、各地方で守られてきた在来種など、固定種の種はたくさんあります。
固定種は、F1と比べ生育が揃わない(一斉収穫に向かない)のですが、小規模で趣味で楽しむ家庭菜園ではそれが逆にメリットと考えることもできます。また自家採種を楽しむことができるのも、固定種ならでは。
種の鮮度に気を付ける
種にも寿命があり、また、高温と湿気のある環境では、種はどんどん消耗して発芽率が落ちます。
管理の悪い園芸店などでは、種袋の陳列棚が日の当たるところに出ているような場合もあるため、種苗店でも通販サイトでも、信頼できるお店で購入するようにしましょう。
野菜の苗の選び方
品種選びは種の場合と同じですが、苗の良し悪しは育苗中の管理が大きく影響するため、種に比べて品質のばらつきが大きくなります。
そして、苗の品質はその後の生育や収量などに大きく影響するので、苗選びは慎重に行いましょう。
植え付け適期の苗を購入する
苗の購入は、植え付け適期に入ってから、植え付け直前に購入するのが基本です。
店頭に苗が並んでいるからといって、すぐに畑に苗を植えられる訳ではありません。
苗を植え付けるには、野菜毎に適した時期(気温など)、苗の成長段階(大きさや葉の枚数など)といった条件が満たされている必要があります。
早植えしたからといって早く生長するわけではなく、逆に傷んだり、適期に植え付けたものに追い越される結果となるため注意しましょう。
接木苗で土壌病害予防
トマトやキュウリなどの果菜類の苗には、種から育てた「自根苗」と、丈夫な別の植物に接いだ「接木苗」があります。
収穫を目的とした実をつける「穂木」と、耐病性があり根になる「台木」とを接いだ苗。
接木苗は一般的な苗と比較すると値段は高くなりますが、台木となる植物の特性により、低温伸長性や草勢が高まったり、耐病性や収量向上といったメリットがあります。
特に、家庭菜園など省スペースで連作せざるを得ない場合は、連作障害による土壌病害を予防する「接木苗」がオススメです。
連作障害の原因と対策、各野菜の輪作年限について台木から出た芽は摘み取る
接木苗を利用する場合は、台木から出る芽は早めに摘み取るようにしましょう。
台木は丈夫なものを使うので元気が良く、放置しておくと穂木が負けてしまいます。
過去に、接木苗のナスの実つきが悪く原因を探っていると、台木からの芽が穂木より大きく育っており、ナスとは明らかに異なるこんな果実をたくさん付けていました。
良い苗・悪い苗の見分け方
苗を選ぶときは、健康な双葉がついているか、虫食いや病気の痕がないかなどを見て判断します。
悪い苗の特徴としては、次のような点に気を付けます。
- 葉に虫食いや病気の痕がある
- 茎が細く、節間(葉と葉の間)が間延びしている(徒長している)
- 葉がしおれている
- 若い葉や下葉が黄色い
- 双葉が落ちている、または黄色く変色している
- 株元がぐらついている
- 地際に根が浮き上がっている
- ポリポットの底穴から茶色く枯れた根が出ている
良い苗を買うコツ
お店によっては日陰の棚に長く置いていたり、水切れしていたり、苗が弱ったり傷んだりしている場合がるため、管理の行き届いたお店で購入しましょう。
売れ残って長く置かれた苗は、肥料切れを起こしていたり、根詰まりを起こすなどして老化している可能性もあるため、入荷されて間もない新鮮な苗を選びましょう。
また、購入した苗を持ち帰る途中で、葉や枝を折ったり痛めたりしないよう、買い物袋に直接入れるのではなく、トレーや段ボール箱に入れ、固定して運ぶようにしましょう。