家庭菜園の初心者の方向けに、ニンニクの栽培方法を紹介します。
基本情報
病害虫の心配も少なく、手間を掛けなくても育ってくれるニンニク。
風味と香りが立つ大きな球を育てるには、秋の肥沃な土作りとタイミングのよい追肥がポイントです。
長期保存もできるので、大量に栽培して保存しておくと便利です。
- 栽培する地域の気候に合った品種を選ぶ
- 越冬前と春先の2回の追肥を行う
栽培時期
ニンニクの栽培カレンダーです。
中間地を基本とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。
秋に植え付け、越冬して春になるとニンニクの根塊も成長し、6月頃に収穫することができます。
栽培方法
ニンニクの栽培は、次のような流れになります。
種球の準備
ニンニクの種球は、植え付け時期になると種苗店やホームセンターで販売されます。
栽培する地域の気候に合った品種を選びましょう。
土作り
植え付けまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.0です。
また、マルチングしておくと雑草抑制になり、後々の管理に手間が掛かりません。
その際は、タマネギ用の穴あきマルチ(株間のサイズも同じ15cm)を利用すると、穴をあける手間が省けて便利です。
肥料
冬越しで栽培するニンニクは、肥料分を多めに施し肥沃な土を作っておきます。
肥料には「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
植え付け
ニンニクの植え付け時期は、夏の暑さがしっかりと落ち着いた頃。
ニンニクの表皮を剥がして、種球を1片ずつに分けます。ばらした分球を包んでいる薄皮は、むかずにそのままにしておきます。
大きな種球ほど大球になりやすいので、傷や歪みのあるものを避け、大きくて形が整ったものを選びます。
また、干からびたり、カビが生えたり、病斑があるものは避けましょう。種球がウイルスに感染していると、葉がよじれて伸びない「モザイク病」になってしまいます。
株間15cmで、深さ5cmほどの穴をあけ、芽(尖った方)を上にして1片ずつ植えつけます。
植え付けた後は、たっぷりと水をやります。
薄皮をむいて植え付ける方法も
最近では、薄皮をむいて植え付ける栽培方法も行われています。
皮は水分をはじくため、保存時には種球を保護してくれます。ところが、皮を付けたまま植え付けると、土中の水分を吸いにくいため発芽が遅くなります。
薄皮をむいて植え付けると、発芽が早くなり、その後も生育が早く、充実した株で冬を迎えることができるため、最終的に収穫する球も大きく育ちます。
りん片(種球)の乾燥を防ぐため、皮をむくのは植え付けの直前に行いましょう。
芽かき
植え付け後30日ほどで、発芽します。
草丈10cm〜15cmの頃、1株から2本の芽が出ていたら、勢いの弱い方の芽をかき取って1本にします。
一緒に抜けてしまわないように、残す方の芽の生え際をしっかり押さえてかき取るようにします。
追肥
秋に植え付けてから、収穫までに2回の追肥を行います。
1回目の追肥は、草丈が30cmほどに伸長した12月頃、株元に追肥を施します。
光合成によって葉で作られる養分が、冬の間に根と茎に蓄えられ、春になって鱗茎に転流されるので、越冬前に地上部を十分に生育させておく必要があります。
2回目の追肥は、球の肥大が始まる直前の2月下旬〜3月中旬、1回目と同様に施肥します。
最後の追肥(止め肥)は、球が肥大する直前に与えるのが基本。遅れると貯蔵性が落ち、収穫後に腐りやすくなります。
花茎は摘み取る
4〜5月になると「とう立ち」して花茎が伸び出します。
そのまま放っておくと、花の方に栄養が取られ地下部の球が太らなくなるため、適当な時期に摘み取ります。付け根からハサミで切り取るか、掴んで引っ張るとスポッと抜けます。
摘み取るタイミングは、葉の先端と同じくらいの高さになったとき。早すぎると球が分かれてしまい、遅すぎると花茎に栄養が取られて風味が落ちてしまいます。
摘み取った花茎は「ニンニクの芽」として食べられます。
収穫
収穫適期は6月頃、地上部の葉が全体の3〜5割ほど枯れてきたら収穫の目安です。
株元の茎を手で握り、真上に引き抜いて収穫します。
土が湿っているときに収穫すると保存中の球が傷みやすいので、2〜3日晴天が続いたときに収穫しましょう。
収穫後、2〜3日ほど畑や軒下に並べて乾かしておきます。
収穫が早過ぎると球の肥大化が十分でなく、また、採り遅れると球割れが発生するので、適期を逃さないようにしましょう。
適期に収穫されたニンニクは茎の部分が細く締まりますが、収穫が早いと茎の部分は太くなります。
貯蔵
茎が乾燥したら茎葉を30cmほど残して切り落とし、根も切り落として、3、4個ずつ茎のつけ根をヒモで縛って束ねます。さらに2束ずつヒモで縛って吊るせるようにします。
風通しがよく、雨と直射日光が当たらない軒下などに吊るしておくと、長期保存ができます。
尚、あまり長くおくと休眠から覚めてしまうので、芽が出る前に食べてしまうか、スライスして冷凍保存しておくと便利です。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
ニンニクは連作障害が出にくいため、同じ場所での連作が可能です。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
ニンニクには「青枯病」や「立枯病」などの病原菌を抑える微生物が共生しているため、コンパニオンプランツとしての利用もオススメです。
ニンニクと相性のいい野菜には次のようなものがあります。
一方で、ニンニクと相性の悪い野菜には次のようなものがあります。
栽培Q&A
スーパーで販売されている食用のニンニクでも、植え付ければ育てることができます。
但し、栽培用ではなく食用として管理されていたものなので、芽が出にくいように萌芽抑制処理されている可能性もあります。(発芽しない/しにくい)
また、品種によって育てやすい環境が異なるため、確実に育てるのであれば、地域に合った栽培用の種球を使うことをオススメします。
ニンニクは発芽まで1ヶ月ほど掛かります。それ以上経っても出ない場合は、種球が地中で腐ってしまっている場合があります。
ニンニクの芽は、とう立ちして伸びた花茎です。
放置しておくと蕾が開花して栄養が取られてしまい、良いニンニクができなくなるので、早めに摘み取ってしまいましょう。
摘み取った花茎は「ニンニクの芽(茎ニンニクとも呼ばれる)」として食べられます。
写真は収穫後に外干していたにも関わらず、中は湿って柔らかくなりかけているニンニク。
原因はいくつか考えられます。
- 最後の追肥(止肥)が遅すぎた
- 収穫時期が早すぎたために、まだ生育期で水分が多く含まれていた
- 土が湿っている時に収穫した
保存には向かないので、腐ってしまう前にはやく食べてしまいましょう。