家庭菜園の初心者の方向けに、スイカの栽培方法を紹介します。
基本情報
夏の風物詩、スイカ。爽やかな甘みとシャシャリとした歯ざわりが魅力です。
スイカはツルが旺盛に伸びるので、栽培するには広い面積が必要です。また、強い日光を好むので日当たりの良い場所を選びましょう。
品質の良いスイカを収穫するには、整枝・摘果などの栽培管理が大切です。連作すると「つる割れ病」が出やすいため輪作年限はしっかり守りましょう。
家庭菜園で作るなら、植え付けから収穫までの期間が短く、食べ切りサイズがたくさんできる小玉スイカがオススメです。
- 高温と強い光を好むので、日当たりの良い場所に植え付ける
- 「つるぼけ」しやすいので、元肥は控えめにする
- 収穫期が近づいたら玉直しをして、全体の色づきをよくする
栽培時期
スイカの栽培カレンダーです。
中間地を基本とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。
4月初旬にポットに種を蒔いて育苗し、5月中旬に畑に定植、8月頃の収穫です。
栽培方法
スイカの栽培は、次のような流れになります。
種まき・育苗
ポット(9〜12cmサイズ)に2粒ずつ、厚さ1cmほどの覆土をして、たっぷりと水をやります。
まだ寒い時期の育苗となるため、保温資材を使って暖かい環境で育苗します。
庭やベランダで作る簡易な育苗ハウス・ビニール温室本葉が出たら間引いて1本立ちにし、最終的に本葉4〜5枚の苗に仕上げます。
育苗日数 | 発芽適温 | 生育適温 |
---|---|---|
40〜45日 | 25〜30℃ | 25℃前後 |
土作り
スイカは乾燥した環境を好むため、日当たりと水はけのいい場所を選びましょう。
植え付けまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は6.0〜6.5です。
育つとツルがどんどん伸びて広がるので、広い栽培面積が必要になります。
肥料
スイカは、生育初期に肥料が多すぎると「つるぼけ」を起こして果実が付きにくくなります。
そのため、元肥は控えめに、着果後の追肥で調整しましょう。
肥料は「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
植え付け
本葉が4〜5枚出たら畑に定植します。
育つとツルが広がるので株間は100cmあけるようにし、定植後たっぷりと水をやります。
尚、スイカは高温を好むので、植え付けは気温が十分に高くなってから。
植え付け直後は、「あんどん」や「ホットキャップ」を掛けて保温します。生育促進と「ウリハムシ」などの害虫飛来を防止する効果があります。被覆内いっぱいに茎葉が伸びたら取り除きます。
敷きワラ
葉が茂ってきたら、株元からツルが伸びる方向に敷きワラをします。
ツルがワラに巻きヒゲを絡ませて伸長するので、地表に固定されて風雨にも強くなります。
実がなってから収穫まで、実の下にワラや刈草などを敷いておくことで、だんご虫が皮を食害し、そこからカビが侵入するのを防ぐ効果もあります。
また、土の乾燥や降雨時の泥跳ねを防ぎ、病気予防にもなります。
敷きワラの代わりとなるマルチシートも販売されており、手軽でオススメです。
仕立て(整枝・摘果)
スイカの仕立て方はいろいろありますが、家庭菜園の場合は次の形が目安となります。
- 大玉スイカ:子づる4本仕立て2果採り
- 小玉スイカ:子づる4本仕立て4果採り
親づるを摘心
本葉が5〜6枚で親づるの先端を摘芯して、子づるの生長を促します。子づるが出てきたら、第2節以降の子づるを4本残し、他をかき取ります。
孫づるは摘み取る
子づるからわき芽(孫づる)が出てきますが、着果節までのわき芽は全て摘み取ります。(着果節のわき芽は早めに切除して、果実に栄養を集中させる)
着果節より先のわき芽は残し、玉の肥大促進のために葉面積を増やします。
摘果
低節位(株元に近い)の雌花はいい果実にならないので早めに取り除き、15〜20節くらいに着果させる(人工授粉)ようにします。
受粉が順調であれば、それぞれのツルに幾つかの果実が着果しますが、全て育てると品質が低下するため、果実が鶏卵大の大きさになった頃に摘果します。
残す果実は、大玉スイカは2果/株、小玉スイカは4果/株が目安です。
人工授粉
スイカは、受粉しないと果実が肥大しません。
ハチやアブなどの昆虫によって放っておいても自然に受粉しますが、虫の飛来が少ない家庭菜園などでは、確実に着果させるために人工授粉しておきます。
晴天の早朝、雄花をとり、雌花に雄しべをこすりつけて受粉させます。
花のガクの下に膨らみがあるのが雌花、ないのが雄花です。
追肥
スイカの追肥は1回だけ。果実が鶏卵大になった頃に施します。
果実を順調に肥大させるために行うことから、玉肥とも言います。
スイカの根は広く伸びるので、株元を中心に同心円状に広く施します。
玉直し
玉直しは、実の色むらを防ぎ、実の形をよくするための作業です。
スイカは地面に這って成長するため、実が地面に接している部分には日が当たらず、色がまだらになってしまうことがあります。
実がソフトボール大くらいになったら、実の位置を変える「玉直し」を行いましょう。
また、実が土に触れていると病気や害虫発生の一因になるため、土に触れていたら実の下にワラを敷き直しておきましょう。
尚、勢いよく動かすとヘタが取れてしまうので慎重に行いましょう。
地這栽培果実用の台座/マットを使うと、色むら防止・土との接地面腐敗防止にもなり便利です。
収穫
品種にもよりますが、大玉は開花から40〜45日、小玉は30〜35日が収穫の目安。(写真は小玉スイカ)
スイカの実が十分な大きさになったら、次のように収穫タイミングを判断します。
- 実の肩(ツルに近い上の方)を叩いて低い音がする(コンコンと高い音だとまだ早く、ベンベンと低くて鈍い音がします)
- 実がなっている節から出た巻きひげが根元まですっかり枯れている
収穫時期になれば、ツルをハサミで切って収穫します。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
スイカは連作障害が出やすいため、同じ場所での栽培間隔を4〜5年あけるようにします。
心配な場合は、接木苗を利用すると安心です。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
スイカと相性のいい野菜には次のようなものがあります。
栽培Q&A
スイカの実に亀裂が入る「割果・裂果」。
主な原因は、土壌水分の急激な変化にあります。
乾燥が続いたあとに急な降雨があると、実が内側から一気に肥大するのに、果皮の成長がついていけず、亀裂が入ります。
また、肥料が急に効き始めた、日中温度の上昇などでも同様に、果実が急生長することで裂果してしまうことがあります。
受粉が不完全なことが原因です。人工授粉することで確実に受粉させましょう。
また、実が大きくなってきたら、2週間に1回ほど位置を変えてまんべんなく日を当てる(玉直し)と、全体が緑色に色づいた。形の良いスイカになります。
収穫が遅すぎたことが原因です。
スイカは収穫時期を見極めることが難しいため、人工授粉した日をラベルに書く、叩いて音を聞く、巻きひげの枯れ具合を見るなどして、採り遅れのないようにしましょう。