
家庭菜園の初心者の方向けに、イチゴの栽培方法(露地栽培)を紹介します。
基本情報

イチゴは冬の果物と思われがちですが、あれはハウス栽培によるもので、家庭菜園の露地栽培では5月〜6月が収穫時期です。
イチゴを収穫した後の株からは次々と子株ができるので、株を増やして何年も栽培することができます。
家庭菜園でイチゴ栽培を始めるには、まずは市販の苗を秋に植え付け、翌年春に収穫。収穫後にできる子苗をとって次の栽培に繋げます。
また、イチゴは果実の形質や生育特性の異なるたくさんの品種がありますが、初心者の方には旬の時期に収穫できる「一季なり」の品種がオススメです。
- 一季なり・・・1年に1度、旬の時期に収穫することができるイチゴ
- 四季なり・・・寒い時期を除いて年中花が咲き、収穫時期が長いイチゴ
- 土に空気が入り、根がよく張って成長するように、高畝にする
- ランナーの反対側に実がつくので、収穫しやすい方向で植える
- マルチを張るのは、冬の寒さに当てた後、春先になってから
栽培時期
イチゴの栽培スケジュールです。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
イチゴは冷涼な気候を好み、(寒冷地以外では)秋に植え付けて翌年5月〜6月に収穫する、夏を避ける作型になります。
植え付けが早すぎると、暑さでやられて弱ってしまいます。
収穫後は子株を育てて、次の栽培に繋げます。
栽培方法
イチゴの栽培は、次のような流れになります。
苗の準備

イチゴの苗は、10月頃になると種苗店やホームセンターで販売されます。
翌年度からは、収穫後にできる子苗を育てて使うことができます。
土作り

植え付けまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
イチゴの根は肥料やけしやすいため、元肥は植え付けの2週間前には施しておきましょう。また、根が張ってよく成長するように高畝にします。
土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.5です。
肥料
肥料には「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
植え付け



ポットから苗を外して株間30cm〜40cmで植え付け、たっぷりと水をやります。
植え付けの際には、葉の付け根部分(クラウン)が土に埋まらないよう浅めに植え付けましょう。クラウンは新しい芽が出る、大切な成長点です。
また、イチゴはランナー(親株側)と反対側に花房(果実)がつきます。そのため、ランナーを畝の内側に向けて植えることで、収穫作業がやりやすくなります。
冬の管理作業
気温が下がり日長が短くなると、クラウン内に花芽を形成します。さらに寒くなると、成長を止めて休眠し、葉を地面に張り付け(ロゼッタ状になる)て、冷たい風から身を守ります。

寒さで枯れた下葉や赤く変色した葉は、そのままにしておくと病害虫発生の要因になるため、付け根から取り除いておきます。

また、この時期に花がつき始めることもありますが、この時期の花は摘み取って、株を充実させるようにしましょう。
追肥・マルチング
冬越しして休眠が明ける2月中旬頃、株間に追肥を施します。
追肥を終えたらマルチを張り、地温を上げて花芽の生長を促します。


苗の部分に十字に穴をあけ、苗を傷めないように注意して穴から茎葉を引き出します。
マルチングには、地温を上げる効果と、雨水の跳ね返りを防いで病気や果実の腐敗を防ぐ効果があります。
また、春からは雑草が増えるので、雑草抑制の効果が高い黒色マルチが最適です。
人工授粉

イチゴの露地栽培では、ミツバチなどの虫や風によって自然に受粉が行われます。
しかし、花が早く咲いて訪花昆虫がいない時は、花を揺すったり、筆を使って雌しべに花粉をつけて人工授粉しておきましょう。
イチゴの花は、雄しべと雌しべの両方を備えた「両性花」で、同じ花の雄しべと雌しべで受粉することで実を付けます。

花の中心にあるのが「雌しべ」、その周りを囲っているのが「雄しべ」です。
ランナー摘み・わき芽かき・摘果
適切な管理作業で、栄養を実に集中させます。
ランナー摘み
生育が盛んになってくると、次々とランナーが伸び出します。

そのままにしておくと栄養がランナーに取られて美味しい実ができないので、伸び出したランナーはこまめに株元から摘み取ります。
わき芽かき
主幹のまわりから、次々とわき芽が出てきます。

わき芽を残しておくと葉や実の数は増えますが、一粒一粒のイチゴが小さくなってしまいます。
量よりも質を優先して栽培するなら、芽の数は1つか2つだけを残して、他のわき芽は随時かき取っておきましょう。(品種にもよります)
摘果
受粉がうまくいかず、いびつな実は、小さいうちに摘み取っておきましょう。
鳥害対策
実が赤く色づいてくると、カラスなどの鳥が実をつつきにきます。

畝全体にネットを掛けて予防する場合、受粉を助ける訪花昆虫が出入りできるよう、格子の大きい防鳥ネットを掛けておきましょう。

収穫
開花から30〜40日くらいで実が熟してきます。


実にかぶさっていたヘタが反りかえったら熟したサイン。ヘタの近くまで赤くなったものから、収穫していきます。
傷んだり、変形した実は早めに取り除いて、キレイな実を育てるようにしましょう。
苗づくり
収穫が終わったら、来シーズン用の苗を作ります。
子株を育てる
イチゴはランナー(走りづる)の先につく子株を育てて、次の苗にします。
親株が病気を持っていると子株に伝染してしまうため、健康な株を親株に選びましょう。


また、親株から1番目の子株は親株から病害伝播の可能性があるので、苗として利用するのは主に2番目と3番目にします。

苗床へ移植
本葉3〜4枚になったら、親株側のランナーを2cmほど残して切ります。反対側のランナーは付け根で切って、根を傷めないように掘り上げ、苗床へ植え付けて育てます。(株間15cmほど)


苗床を作る際は、肥やけを起こさないよう、植え付け2週間前には堆肥と元肥をすき込んでおきましょう。
ポットで育苗する場合
苗床の代わりにポットで育苗する場合は、培養土を入れたポット(7.5〜9cmサイズ)に子株を受けます。株が浮かないように、ランナーピンで固定しておきましょう。

子株が根付いたら、ランナーを切り離して育てます。
管理
育ち具合を見て1〜2回、株間に追肥を施し、大きな苗に育てます。

こまめに下葉をかきとり、新しい葉4〜5本の状態を保つようにしましょう。風通しが良くなり、徒長を防ぎ、クラウンが太くてしっかりした苗に育ちます。
定植
そして、植え付け適期の10月に、できあがった苗を畑に植え付けて、以降は同様の工程を繰り返します。(→ 植え付け)
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
イチゴは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を1〜2年あけるようにします。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
イチゴと相性の良い野菜には「ニンニク」があります。
イチゴのそばにニンニクを植えると、ほどよいストレスで開花が早くなり収穫期間が伸びて収量が増えます。
また、ニンニクの香り成分「アリシン」には殺菌作用があり、根には抗生物質を出す微生物が共生するため、イチゴの病気(萎黄病、炭疽病、灰色かび病など)が抑えられ、ニオイでアブラムシも忌避します。
栽培Q&A
実の形がでこぼこ、先端の着色が悪いといった奇形果は、受粉がうまくいかなかったことが原因です。
イチゴの花は、中心にある200〜400本の雌しべを雄しべが取り巻いていて、自家受粉で結実します。

形の整った実にするには、全ての雌しべが受粉する必要があるため、訪花昆虫が少ない場合は、花を揺すったり、筆で花の中心をなでて人工授粉させましょう