
家庭菜園の初心者の方向けに、シシトウ・トウガラシ(唐辛子)の栽培方法を紹介します。
基本情報

日本でトウガラシ(唐辛子)といえば、辛味のある赤トウガラシと、辛味のないシシトウです。
最近では他にも、激辛の青トウガラシやハラペーニョなど、様々な種や苗を手に入れることができます。
基本的な栽培方法は同じですが、環境や雨などの条件により、辛さが変わってくることもあります。
- 定期的に追肥を施しながら育てる
- 赤く完熟してから収穫するトウガラシ、完熟前の緑色で収穫するシシトウなど種類により異なる
栽培時期
シシトウ・トウガラシの栽培スケジュールです。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
2月下旬に種をまいてポットで育てた苗は、5月上中旬に植え付け、7月から10月いっぱいまで長期間収穫できます。
尚、シシトウ・トウガラシは寒い時期に長期間の育苗が必要となり、種から育てる難易度は高め。家庭菜園で少数の栽培であれば、市販の苗を購入するのがオススメです。
さまざまな品種
さまざまな品種がある中、うちでよく作っているものは次の3つです。

乾燥赤トウガラシの代表「鷹の爪」。
完熟したものを乾燥させ、料理のスパイスとして利用します。

京都の伏見で昔から栽培されている在来種の「伏見トウガラシ」。
辛味がなく、焼き、天ぷら、油炒め、煮物など、何にでも使えます。

京都の在来種で、長さ13〜15cmと大きく、ピーマンのように肉厚になる「万願寺トウガラシ」。
辛味がなく(むしろ甘い)、BBQで丸焼きにして食べるのが最高。
栽培方法
シシトウ・トウガラシの栽培は、次のような流れになります。
種まき・育苗
セルトレイに種をまき、発芽して本葉2枚の頃にポット上げ(4号:12cmサイズ)します。




はじめからポットにまく場合は、ポットに3粒ずつ種をまき、本葉が出た頃に間引いて1本立ちにします。
まだ寒い時期の育苗となるため、ビニール温室やヒーターなどの保温・加温機材を使い、生育適温に注意しながら温度管理します。

最終的に、開花直前くらいまでの大苗に仕上げます。

育苗日数 | 発芽適温 | 生育適温 |
---|---|---|
60〜70日 | 25〜30℃ | 23〜30℃ |
シシトウ・トウガラシは種をまいてから植え付けまで60〜70日と長期間の育苗が必要となり、寒い時期なので温度管理も欠かせません。
家庭菜園などで少しの株数しか育てないのであれば、育苗の手間と難易度を考えると、市販の苗を利用するのがオススメです。

市販の苗は9cmポットに入っているものが多いので、12cmポットに移し替えて大きく育てましょう。
土作り

高温と乾燥を好むので、日当たりと水はけが良い場所に高畝を立てます。
また、シシトウ・トウガラシは肥料好きなので、堆肥と十分な元肥を入れて耕します。
土壌酸度(pH)の目安は6.0〜6.5です。
肥料
茎葉を伸ばしながら次々と実をつけていくので、栽培期間を通じて肥料切れを起こさせないように、定期的に追肥します。
初期からリン酸を効かせることで、実付きがよくなります。肥料には、「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
植え付け
苗の草丈が15cmほどになれば定植時期です。
シシトウもトウガラシも高温を好むため、晴天の午前中に定植して活着を促進させます。苗のポットを外し、根を崩さずに浅めに植え付けます。株間は45cmほど。


茎が弱くて風で折れやすいので、定植と同時に仮支柱を立てて支えておきます。
定植の前にポットごと水につけて吸水させておくか、定植後たっぷりと水をやります。
支柱立て・マルチング
主茎が伸びたら垂直に立てた支柱に誘引します。

株ごとに高さ120〜150cmの支柱を立てて主茎を紐で固定し、さらに支柱を横に渡して補強しておきます。
また、株元に稲わらなどを敷いて「マルチング」しておきます。乾燥を防ぎ、夏場の雑草対策にもなります。
整枝
品種に合った方法で整枝します。
大きめの実が下を向いてつくタイプ
「万願寺トウガラシ」のように、大きめの実が下を向いてつくタイプ。

1番花のすぐ下で分かれる2本の側枝を伸ばし、その下のわき芽を全て摘み取って3本仕立てにします。(3本の先端は摘心せずに伸ばします。)

小さめの実が上を向いてつくタイプ
「鷹の爪」のように、小さめの実が上を向いてつくタイプは、わき芽も摘み取らずにそのまま放任して育てます。
追肥
植え付けから2週間後に、1回目の追肥を株元に施します。
その後、2〜3週間に1度のペースで追肥。畝の片側の裾に交互に施します。
収穫
花のあと緑の実がつき、そのまま完熟すると赤くなります。

シシトウは完熟直前、表皮の光沢が増し淡い緑色になった頃に、ハサミで付け根を切って収穫します。


赤トウガラシは完全に赤くなったら、株ごと引き抜いて収穫します。


赤トウガラシを保存させる場合、まだ緑色が残っていると乾燥途中でカビが生えるおそれがあります。収穫は完全に赤く熟してから行いましょう。
乾燥・保存
赤トウガラシを乾燥・保存させるには、
株ごと収穫した場合は、根元を数本ずつ縛り、風通しの良い場所に逆さに吊るして干します。個別に収穫した場合は、乾燥ネットなどを使って干します。


完全に乾燥させないとカビが生えるので、十分に乾燥させましょう。
だいたい、夏場でも2週間ほど、秋だと1ヶ月くらい掛かります。振ってカラカラと音がするのが目安です。
十分乾燥したら枝から外して、密閉容器などに保存します。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
シシトウ・トウガラシは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を3〜4年あけるようにします。
連作を避けられないときは、接木苗を利用するようにしましょう。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
シシトウ・トウガラシと相性のいい野菜には次のようなものがあります。
栽培Q&A
辛味のないシシトウの栽培で、最初の収穫では辛みがなかったのに徐々に辛い個体が増えていき、栽培後半には辛いものばかりになってしまうことがあります。
主な原因は、暑さや水不足によるストレス、肥料不足による生理障害です。そのため、猛暑や天候不順の年であったり、栽培後半に発生しやすくなります。
また、唐辛子の近くに植えていたら交配して辛くなったとか、先祖返りした、なども聞いたことがありますが、これらの根拠は不明です。