トウガラシ(唐辛子)・シシトウの育て方と栽培のコツ

トウガラシ(唐辛子)・シシトウの育て方・栽培のコツ -家庭菜園ガイド-

家庭菜園でのトウガラシ(唐辛子)・シシトウの育て方や栽培のコツを農家が分かりやすく解説します。

気になる項目があれば、目次をクリックしてすぐに確認できます。

基本情報

シシトウ・トウガラシ栽培の様子
科目栽培スタート生育適温好適土壌pH連作障害
ナス科23〜30℃6.0〜6.5あり:3〜4年あける

日本でトウガラシ(唐辛子)といえば、辛みのある赤トウガラシと、辛みがないシシトウです。

MEMO

シシトウは、ピーマン・パプリカと同じトウガラシの甘味種です。果実の先が獅子の頭に見えることから、獅子唐(シシトウ)と呼ばれるようになりました。

最近では他にも、激辛の青トウガラシやハラペーニョなど、様々な種や苗を手に入れることができます。

基本的な栽培方法は同じですが、環境や雨などの条件により、辛さが変わってくることもあります。

苗作りは温度管理が難しいので、家庭菜園など小規模なものでは、市販の苗を利用するのがオススメです。

栽培のポイント
  • 定期的に追肥を施しながら育てる
  • 赤く完熟してから収穫するトウガラシ、完熟前の緑色で収穫するシシトウなど種類により異なる

栽培カレンダー

トウガラシ(唐辛子)・シシトウの栽培時期は次のようになります。

シシトウ・トウガラシの栽培時期・栽培カレンダー

中間地を基準とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。

近年の気候変動による高温や大雨などで、従来の栽培時期が合わないことがあります。状況に応じて、時期をずらす、品種を変えるなどの対応も必要。

2月下旬に種をまいてポットで育てた苗は、5月上中旬に植え付け、7月から10月まで長期間収穫できます。

尚、トウガラシ・シシトウは寒い時期に長期間の育苗が必要となり、種から育てる難易度は高め。家庭菜園で少数の栽培であれば、市販の苗を購入するのがオススメです。

さまざまな品種

さまざまな品種がある中、うちでよく作っているものは次の4つです。

赤唐辛子(鷹の爪)

乾燥赤トウガラシの代表「鷹の爪」。

完熟したものを乾燥させ、料理のスパイスとして利用します。

伏見トウガラシ

京都の伏見で昔から栽培されている在来種の「伏見トウガラシ」。

辛味がなく、焼き、天ぷら、油炒め、煮物など、何にでも使えます。

万願寺トウガラシ

京都の在来種で、長さ13〜20cmと大きく、ピーマンのように肉厚になる「万願寺トウガラシ」。

辛味がなく(むしろ甘い)、BBQで丸焼きにして食べるのが最高。

栽培方法

トウガラシ(唐辛子)・シシトウの栽培は、次のような流れになります。

種まき・育苗

セルトレイに種まき用の培養土を入れ、1粒ずつ種をまきます。その上に軽く土をかぶせ、全体に水をやります。

セルトレイに1粒ずつ種まき

発芽して本葉2枚の頃に、ポット(直径12cmの4号サイズ)に移し替えます。(ポット上げ

はじめからポットにまく場合は、ポットに3粒ずつ種をまき、本葉が出た頃に間引いて1本立ちにします。

まだ寒い時期の育苗となるため、ビニール温室やヒーターなどの保温・加温機材を使い、生育適温に注意しながら温度管理します。

タカショー ビニール温室 庭やベランダで作る簡易な育苗ハウス・ビニール温室

最終的に、開花直前くらいまでの大苗に仕上げます。

シシトウ・トウガラシの苗
育苗日数発芽適温生育適温
60〜70日25〜30℃23〜30℃
シシトウ・トウガラシの育苗管理

トウガラシ・シシトウは種をまいてから植え付けまで60〜70日と長期間の育苗が必要となり、寒い時期なので温度管理も欠かせません。

家庭菜園などで少しの株数しか育てないのであれば、育苗の手間と難易度を考えると、市販の苗を利用するのがオススメです。

市販のシシトウ・トウガラシ苗

市販の苗は9cmポットに入っているものが多いので、12cmポットに移し替えて大きく育てましょう。

土作り

野菜栽培のための畑の土作り作業

植え付けまでに「土作り」を済ませておきます。

高温と乾燥を好むので、日当たりと水はけのいい場所を選びましょう。

作付けの2〜3週間前
石灰を入れる詳細

野菜が育ちやすい土壌酸度(pH)に調整するため、石灰を施します。

トウガラシ・シシトウに適したpHの目安は6.0〜6.5です。

作付けの2〜3週間前
堆肥を入れる詳細

ふかふかの土を作るために、堆肥を入れて耕します。

トウガラシ・シシトウは肥料好きなので、堆肥と十分な元肥を入れましょう。

作付けの1週間前
元肥を入れる詳細

作物の初期育成に必要な養分を補うため、肥料を施します。

茎葉を伸ばしながら次々と実をつけていくので、栽培期間を通じて肥料切れを起こさせないように、定期的に追肥します。初期からリン酸を効かせることで、実付きがよくなります。

肥料には「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。

科学的根拠は不明ですが、昔の農家さんの知恵で、唐辛子は肥料によって辛さを調節することができると言われています。「米ぬか」を施せば辛くなり、「木炭」を施せば辛くなくなるそうです。

元肥を入れた直後〜作付けの2-3日前
畝を立てる詳細

排水性・通気性を確保するため、畝を立てます。

土作りのやり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

野菜を育てるための土作り 野菜を育てるための土作り

植え付け

苗が大きく育ち、開花直前くらいになれば、畑に植え付けましょう。

トウガラシもシシトウも高温を好むので、晴天の午前中に定植して活着を促進させます。

ポットから苗を優しく取り出し、根を崩さずに浅めに植え付けます。株間は45cmほど。茎が弱くて風で折れやすいので、定植と同時に仮支柱を立てて支えておきます。

植えた後は、根がしっかり張るように、株のまわりにたっぷり水をあげてください。

植え付け前にポットごと水につけて吸水させておくと、根付きが良くなります。

マルチング

土の乾燥を防ぎ、泥はねなどから病気を予防するため、マルチングしておきます。

シシトウ・トウガラシの株元に敷き藁マルチ

植え付け前にマルチフィルムを張っておくか、植え付け後に、株元に稲わらや刈草などを敷いておきます。

仕立て・支柱立て

仕立て

シシトウ・トウガラシの整枝・仕立て

一番花のすぐ下で分かれる2本のわき芽を伸ばし、側枝とします。主枝とその2本の側枝を育てることで「3本仕立て」にします。

これより下のわき芽は全て摘み取ります。

シシトウ・トウガラシのわき芽

伸ばした茎はV字型に2つに分かれ、その茎がまた2つに分かれて、どんどん茎をふやしていきます。果実はその分岐点に付きます。

支柱立て

トウガラシ・シシトウは根が浅く、実が付き始めると株全体が重くなって強風などで倒れやすいため、早めに支柱を立てて固定します。

先の図のように、真ん中に1本・側枝用に2本を斜めに交差させて支柱を立て、主枝・側枝それぞれを支柱に誘引・固定します。

追肥

栽培期間を通じて肥料切れを起こさせないように、定期的に追肥します。

1回目の追肥は、植え付けから2週間後。株元に施します。

その後、草勢を見ながら2〜3週間に1度のペースで追肥。畝の片側の裾に交互に施します。

収穫

花のあと緑の実がつき、そのまま完熟すると赤くなります。

緑から黄色、赤色に熟す唐辛子

シシトウは完熟直前、表皮の光沢が増し淡い緑色になった頃に、ハサミで付け根を切って収穫します。

赤トウガラシは開花から約2ヶ月。完全に赤くなったら、株ごと引き抜いて収穫します。

注意

赤トウガラシを保存させる場合、まだ緑色が残っていると乾燥途中でカビが生えるおそれがあります。収穫は完全に赤く熟してから行いましょう。

乾燥・保存

赤トウガラシを乾燥保存する場合は、カビが生えないよう完全に乾燥させる必要があります。

株ごと収穫した場合は、根元を数本ずつ縛って逆さに吊るします。個別に収穫した場合は、「干し網」などを使って風通しの良い場所で乾燥させます。

乾燥期間は数週間〜1ヶ月ほど。振ってカラカラと音がするのが目安です。

十分乾燥したら枝から外して、密閉容器などに保存しましょう。

連作障害とコンパニオンプランツ

連作障害

同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。

トウガラシ・シシトウは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を3〜4年あけるようにします。

連作を避けられないときは、接木苗を利用するようにしましょう。

コンパニオンプランツ

違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。

トウガラシ・シシトウと相性のいい野菜には次のようなものがあります。

コンパニオンプランツ効果
ニラ根を絡ませるように混植することで、ニラの根に繁殖する拮抗菌が「青枯病」などの土壌病害を防ぐ
ラッカセイマメ科植物の根に付く根粒菌が空気中の窒素を固定して土壌を肥沃にし、根に付く菌根菌がリン酸分などの養分を吸収しやすくする効果がある
シシトウ・トウガラシと相性の良い野菜

栽培Q&A

トウガラシは、暑さや水不足、肥料不足などにより株にストレスが掛かると、辛み成分のカプサイシンが増えて辛くなります。

辛みを抑えたい場合は、水や肥料を適切に与えて、ストレスを掛けないように育てましょう。

辛みのないシシトウの栽培で、最初の収穫では辛みがなかったのに徐々に辛い個体が増えていき、栽培後半には辛いものばかりになってしまうことがあります。

トウガラシは、暑さや水不足、肥料不足などによりストレスが掛かると辛くなるため、猛暑や天候不順の年であったり、栽培後半に辛い個体が発生しやすくなります。

トウガラシの近くに植えてもピーマンやシシトウが辛くなることはありません。

但し、トウガラシの近くに植えたピーマンやシシトウから採種した場合、その種はトウガラシとの雑種である可能性があります。その種をまいて育てた株は、辛い果実をつける場合があります。