ジャガイモの基礎知識、美味しく食べるコツを紹介します。
ジャガイモの産地や旬、良品の選び方、主な品種、保存方法、調理の豆知識など。
ジャガイモの基本情報
科目 | 原産地 | 英名 | 漢字表記 |
---|---|---|---|
ナス科 | 南アメリカ | potato | 馬鈴薯(ばれいしょ) |
特徴
南米アンデス高地が原産のジャガイモは、トマトやナスと同じナス科の植物。春と秋の年2回栽培できることから、ニドイモ(二度芋)とも呼ばれます。
イモと呼んで食用にしている部分は根ではなく、地下の茎が肥大したもの(塊茎)。主成分がデンプンでビタミンCやB1も豊富。
安定して収穫できて貯蔵性が高く、主食にもなる野菜として、世界中で栽培される主要作物です。
ジャガイモの栽培方法・育て方のコツ産地
北海道 | 78.59% |
鹿児島 | 3.87% |
長崎 | 3.84% |
茨城 | 1.91% |
千葉 | 1.27% |
その他 | 10.51% |
日本での主産地は北海道で、国内の約8割を占めています。
しかし、品種の違いや気象条件、高低差を利用して、比較的冷涼な時期に様々な産地で生産されています。
用途別の割合
生食用 | 26.6% |
加工食品用 | 25.8% |
でん粉用 | 34.3% |
その他 | 13.3% |
ジャガイモの主な用途は、「生食」「加工食品」「でん粉」の3つ。
生食用は、家庭やレストランなどで消費される料理用のもの。
加工食品用は、ポテトチップスなどにされるもので、味だけでなく、皮の剥きやすさ、熱の通りやすさ、変色の有無などの点から選ばれています。
でん粉用は、片栗粉や麺類の原料となるものです。
旬
全国各地で栽培され、保存がきくため通年出荷されていますが、多く出回るのは春と秋の年2回。
春には九州で冬に植え付けたものが、秋には北海道で春に植え付けたものが多く出荷されます。
新じゃが
一般的なジャガイモ(完熟ジャガイモ)は、地上部の茎や葉が枯れてから収穫したもので、栄養分が地下のじゃがいもに蓄積されて、皮も厚め。保存性が高く、収穫後に貯蔵され通年出荷されます。
一方で、新じゃが(新ジャガイモ)は、地上部の茎や葉がまだ青いうちに収穫したもので、みずみずしくて皮が薄いのが特徴。保存が効かないため、収穫後すぐに出荷されます。
ジャガイモに豊富に含まれるビタミンCは皮のあたりに多く、皮が薄くて皮ごと食べられる新じゃがは、より効果的に栄養を摂ることができます。
新じゃがは、3〜5月に出荷される暖地産(鹿児島や長崎)、7月に出荷される北海道産のものが有名です。
栄養素
ジャガイモの主成分は、エネルギー源となる炭水化物のデンプンで、米や麦、トウモロコシに並んで主食にもなります。
また、ジャガイモはビタミンが豊富で、フランスでは「畑のリンゴ」も呼ばれています。
中でも注目はビタミンC。
ビタミンCは水溶性で本来は調理による損失が大きい栄養素ですが、ジャガイモの場合はデンプンに包まれているため流出しにくく、熱にも強いのが特徴です。
他にビタミンB1やカリウムも比較的多く含まれます。
エネルギー(kcal) | 51 |
水分(g) | 81.1 |
たんぱく質(g) | 1.8 |
脂質(g) | 0.1 |
炭水化物(g) | 15.9 |
カリウム(mg) | 420 |
カルシウム(mg) | 4 |
鉄(mg) | 1.0 |
亜鉛(mg) | 0.2 |
βカロテン当量(μg) | 2 |
ビタミンK(μg) | 1 |
ビタミンB1(mg) | 0.08 |
ビタミンB2(mg) | 0.03 |
ビタミンB6(mg) | 0.2 |
ビタミンC(mg) | 28 |
食物繊維総量(g) | 9.8 |
参考:文部科学省 食品成分データベース
良品の選び方
- 皮が薄く表面が滑らかで、デコボコの少ないもの
- 大きすぎず、柔らかくなっていないもの
- 色が均一で、皮が緑に変色していないもの
- 芽が出ていないもの
- 斑点や傷がないもの
食べてはいけない緑化&芽
ジャガイモが緑色になっているものは、収穫前に日光にあたって緑化したもの。
その部分にはソラニンという有毒物質が含まれており、大量に摂取すると下痢、腹痛、吐き気、めまいなどを引き起こすため、食べてはいけません。
また、芽が出てているものもその部分にソラニンが含まれているので、芽の周りを取り除いて食べるようにしましょう。
主な品種
日本には100品種ほどあると言われているジャガイモ。(スーパーなどで買えるものは15種類くらい。)
皮が白っぽいものが一般的ですが、サツマイモのように赤い皮のものや紫色の品種もあります。
サラダやコロッケに向くホクホク系(粉質)から、煮崩れしにくく肉じゃがなど煮物向きのねっとり系(粘質)まで、品種によって食感も様々。
品種による特性を理解し、料理に合わせて品種を選びましょう。
男爵
日本で最も多く食べられている品種。
球形で果肉は白く、粉質でホクホクした食感が特徴。粉ふきいもやポテトサラダ、コロッケなどに向きます。
メークイン
粘質ジャガイモの代表品種。西日本で多く食べられています。
細長い卵形でつるりとしており、果肉は淡い黄色できめ細かい。煮崩れしにくいため、肉じゃがなどの煮込み料理やカレーライスなどに。
キタアカリ
男爵の仲間で、肉質は黄色が濃くホクホクとした粉質系。
甘味もあり、ビタミンCが多いのも特徴。
ホッカイコガネ
楕円形で、肉質はやや黄色く粘質。
加熱による変色が少ないので、主にフライドポテトなどの加工用に利用されます。
とうや
男爵とメークインの中間のようななめらかな肉質。褐色がかった黄色の皮と果肉で「黄爵(こうしゃく)」とも呼ばれます。
大粒で、ビタミンCの含有量もやや多め。
アンデスレッド(アンデス赤)
小さめの卵形で、赤い皮が特徴。
ホクホクした粉質で、ポテトサラダやコロッケなどに向きます。
インカのひとみ
甘味があり、ナッツや栗のような風味と香りが特徴。
「インカのめざめ」の後代品種で、赤皮にまだら模様があり、果肉は濃い黄色、小ぶりだったインカのめざめよりも一回り大きい。
ノーザンルビー
皮も肉色も赤色で、加熱しても綺麗なピンク色を保ちます。
長卵形で、やや粘質、しっとり食感。
他にもこんな品種
レッドムーン | 赤い表皮に黄色い果肉で粘質。形や特徴がメークインに似ていることから「レッドメークイン」とも呼ばれます。 |
シャドークイーン | アントシアニンを多く含み、果肉が濃い紫色をしています。芽が浅いので皮が剥きやすい。やや粘質。 |
ニシユタカ | 春先に出回る新じゃがとしてお馴染み。「デジマ」を母として交配した品種で多収。芽が浅く皮が剥きやすい。やや粘質。 |
マチルダ | スウェーデン生まれの品種。小型の卵形。なめらかで甘味があります。 |
十勝コガネ | 少し赤みがかった表皮。ホクホク感とねっとり感の両方を併せ持っています。 |
シンシア | フランス生まれの品種。長卵形でメークインより大きく、煮崩れにしにくい。 |
デジマ | 暖地で定番の品種。名前の由来は長崎の出島。やや粘質。 |
キタムラサキ | アントシアニンを含み、皮から果肉まで全部紫色をしています。やや粘質。 |
ジャガキッズレッド | 球形のイモで赤い表皮に黄色い果肉。食味はホクホクとネットリの中間。舌触り滑らかでポテトサラダ向き。 |
保存方法
基本は冷暗所で常温保存
ジャガイモは低温に弱く、また、光に当たったり温かい環境では芽が出やすくなります。
そのため、基本は風通しの良い冷暗所での常温保存。新聞紙で包んでおくと、光を遮り、温度・湿度もある程度保ってくるのでなお良いです。
但し、夏場は暑くて芽が出やすいため、冷蔵庫の野菜室(冷蔵室よりも温度が高い)に保存します。低温に弱いので、新聞紙に包んでポリ袋に入れておきましょう。
ジャガイモの最適保存温度は10〜13℃。
常温保存での保存期間は3ヶ月。
ジャガイモの保存には、遮光性・通気性に優れた野菜保存袋が便利で、うちでも使っています。
リンゴで発芽を抑える
芽を出したくない場合は、リンゴと一緒に袋に入れておくと、リンゴのエチレンガスの効果で発芽を抑えることができます。
芽は早めに取り除く
保存しているイモから芽が出たら、都度、芽を取り除くこと。
芽が出たままにしておくと、養分が吸われて、イモ自体がシワシワになってしまいます。
調理のコツ
芽のまわりを取り除く
芽とその周りには食中毒を引き起こすソラニンが含まれています。
そのため、調理の際には芽の付け根ごとくり抜いてから利用しましょう。
切ったら水にさらす
切り口は空気に触れると黒っぽく変色するので、切ったらすぐ水にさらします。
5〜10分水にさらすことで、アク抜きとデンプンを落とす効果もあります。
デンプンは加熱するとくっつきやすくなるため、余分なデンプンを落としておくことで、くっつき防止・焦げ付き防止になります。
皮ごと茹でる
茹でる場合は、皮を剥かない方が、ビタミン類の流出を防ぐことができます。
コロッケなどを作る際にホクホク感を出したい場合は、皮付きのまま水から茹で、熱いうちに皮を剥いて、粘りを出さずにつぶすのがコツ。