サツマイモの基礎知識、美味しく食べるコツを紹介します。
サツマイモの産地や旬、良品の選び方、主な品種、保存方法、調理の豆知識など。
サツマイモの基本情報
科目 | 原産地 | 英名 | 漢字表記 |
---|---|---|---|
ヒルガオ科 | 中央アメリカ | sweet potato | 薩摩芋、甘藷(かんしょ)、唐芋(からいも) |
特徴
中央アメリカが原産のサツマイモ。日本では江戸時代に九州南部で栽培が始まり「薩摩の芋」として全国に定着しました。やせた土地でも育つため、古くから食料不足の際の救荒作物としても知られています。
サツマイモの主成分はデンプンで、加熱すると一部が糖質に変わって甘味が増します。しかし、カロリーは米や小麦の1/3程度と低く、ヘルシーな主食食材としても注目されています。
産地
鹿児島 | 31.22% |
茨城 | 26.47% |
千葉 | 13.12% |
宮崎 | 10.05% |
徳島 | 3.94% |
その他 | 15.20% |
日本での生産量1位は鹿児島、2位は茨城、3位は千葉で、この3県で国内の約7割を占めています。
サツマイモは、温暖な気候、水はけの良い土壌、肥料分の少ない痩せた土地でよく育ちます。
主産地を見てみると、鹿児島はシラス台地、茨城・千葉は関東ローム層と、いずれも火山性の風化堆積物による土壌で、サツマイモ栽培に適した土地であることがわかります。
用途別の割合
生食用 | 51.6% |
アルコール用 | 20.2% |
加工食品用 | 12.5% |
でん粉用 | 11.1% |
その他 | 4.6% |
サツマイモは、他のイモ類と比べて加工用途の幅が広いのが特徴で、一般家庭やレストランでの食用以外にも「アルコール」「加工食品」「でん粉」の用途に使われます。
アルコール用は、いも焼酎の他、ワイン風味醸造酒や発泡酒などの原料に。
加工食品用は、干し芋に次いで、油菓子、ペースト、ジュース、パウダーなど、種類がきわめて多いのが特徴。
サツマイモから製造されたでん粉は、ほとんどが清涼飲料などの糖化原料に仕向けられますが、他に春雨など麺類の原料としても用いられています。
旬
収穫は夏から始まりますが、収穫直後のサツマイモは甘くなく、2〜3ヶ月貯蔵してデンプンを甘味に変えてから出荷されます。
出回り時期は、新物が9月〜11月、貯蔵物が翌年1月〜春まで。貯蔵物は、新物に比べて甘味が濃いのが特徴です。
栄養素
サツマイモの主成分は炭水化物でその大半がデンプン。他に食物繊維とビタミンCを多く含んでいます。
ビタミンCは水溶性で本来は調理による損失が大きい栄養素ですが、サツマイモの場合はデンプンに包まれているため流出しにくく、熱にも強いのが特徴です。
サツマイモの切り口から出る白い液体は「ヤラピン」という樹脂の一種。
腸の運動を促進する働きがあり、豊富に含まれる食物繊維との相乗効果でお腹の中をキレイにしてくれます。
エネルギー(kcal) | 127 |
水分(g) | 64.6 |
たんぱく質(g) | 0.9 |
脂質(g) | 0.5 |
炭水化物(g) | 33.1 |
カリウム(mg) | 380 |
カルシウム(mg) | 40 |
鉄(mg) | 0.5 |
亜鉛(mg) | 0.2 |
βカロテン当量(μg) | 40 |
ビタミンK(μg) | 0 |
ビタミンB1(mg) | 0.10 |
ビタミンB2(mg) | 0.02 |
ビタミンB6(mg) | 0.2 |
ビタミンC(mg) | 25 |
食物繊維総量(g) | 2.8 |
参考:文部科学省 食品成分データベース
良品の選び方
- 全体にふっくらとして、ずっしりと重みを感じる
- 皮がキレイで色鮮やか
- 傷や黒い斑点がない
- ヒゲ根のあとが少ない
- 切り口に蜜が出ているものは糖度が高い
サツマイモは意外と傷みやすく、切り口にシワが寄ったりくすんだりしているものは避ける方が無難です。
また、品種によって甘さも食感も違うので、料理に合わせて選ぶようにしましょう。
主な品種
日本で作付されているサツマイモの主要品種は、約60種あります。(2019年)
用途に応じて品種が開発されており、青果用としては、ホクホクした食味のものを主力にネットリした食味のもの、カラフルなもの、干し芋やツルを食べる葉柄専用の品種もあります。
紅はるか
他品種を超える甘みの強さ。加熱後のホクホクにしっとり食感もあり、見た目と食味に優れ大人気。
焼き芋にはもちろん干し芋にも、しっとりした美味しさが味わえます。
高系14号
西日本を席巻する品種。ホクホク食感だがなめらかな舌触り。
各地でさらに選抜·改良された派生品種として、徳島県の「鳴門金時」、石川県の「五郎島金時」、香川県の「坂出金時」、高知県の「土佐紅」などが有名。
紅あずま
関東を席巻する品種で、「西の高系14号」に対し「東の紅あずま」と言われています。
ホクホクとネットリの間の食味。
安納芋
鹿児島県種子島の特産。
オレンジ色でねっとりした食感が特徴。蜜芋ブームの火付け役。
シルクスイート
上品な甘みと、しっとりと絹のような滑らかな口当たりで近年人気。
焼き芋に向くほか、繊維が少ないためスイートポテトの材料などにも。
種子島紫イモ
沖縄、鹿児島に多い紫いもの品種。
外皮は白く、中身は鮮やかな紫色。甘みが強く、やや粉質。加熱するとホクホク食感で、料理にもお菓子にも。
他にもこんな品種
黄金千貫(こがねせんがん) | 南九州が産地で外皮も中身も白っぽい色のイモ。主に焼酎の原料として利用されています。 |
シロユタカ | 黄金千貫よりもデンプン収量が多い品種で、主にデンプンの原料として利用されています。 |
大栄愛娘(だいえいまなむすめ) | 千葉県で栽培されている高系14号のブランド。ホクホク食感だがなめらかな舌触り。 |
パープルスイートロード | 中身が濃い紫色のサツマイモ。従来の紫いもに比べて甘味たっぷりで味が良いと評判。生食のほか、ソフトクリームやケーキなどのお菓子の材料に。 |
隼人芋(はやといも) | 別名「にんじん芋」。外皮が薄茶色で中身は加熱するとニンジンのようなオレンジ色。このオレンジ色はニンジンと同じカロテンで、その機能性が注目されています。 |
アヤコマチ | 中身はオレンジ色に近い濃い色が特徴で、カロテンを多く含みます。焼き芋、蒸し芋、サラダにも。 |
いずみいも | 外皮は白っぽく、中身は薄い黄色。甘味が強く、コクがあってねっとりしたタイプで、茨城産の干し芋として人気。 |
エレガントサマー | 葉柄(芋づる·茎)専用の品種。葉柄の太さ、数ともに良好で夏野菜として利用できます。 |
保存方法
基本は冷暗所で常温保存
サツマイモは乾燥と低温に弱いので、新聞紙に包んで冷暗所で保存します。
5度以下の環境になると低温障害を起こして黒く変色してしまうため、冷蔵庫には入れず室温で保存するようにします。
寒い地域では、新聞紙に包んで発泡スチロールの箱に入れておくと良いでしょう。(密閉すると多湿になって腐敗の原因になるので注意。)
サツマイモの最適保存温度は10〜15℃。
常温保存での保存期間は3ヶ月。
暑い時期は野菜室で保存
気温が20度を超えると、サツマイモから発芽してしまいます。
暑い時期は、1本ずつ新聞紙に包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存するようにします。
芽が出てしまったサツマイモは、食味も栄養も落ちてしまうので、早めに食べるようにしましょう。
尚、ジャガイモの芽にはソラニンという毒素が含まれているので食べてはいけませんが、サツマイモの芽には毒素は含まれていないので食べても問題ありません。
加熱すれば冷凍保存も可能
冷凍保存する場合は、次のようにします。
- サツマイモを洗って、皮付きのまま使いやすい大きさにカット
- 10分ほど水にさらしてアク抜き
- 電子レンジで加熱
- 水気を拭き取り、粗熱がとれたら、重ならないよう保存袋に並べて入れて冷凍
解凍してすぐ炒め物などに利用できるので便利です。
調理のコツ
アク抜き
サツマイモはアクが強く、空気に触れると黒く変色するので、切ったらすぐに水にさらします。
きんとんやスイートポテトなど、色をキレイに仕上げたい場合は10分ほど、濁らなくなるまで水を換えながら行います。但し、水にさらすと水溶性のビタミンCが流出するため、色を気にしない料理の場合は2〜3分ほどで十分。
アクは皮の下にあるので、色をキレイに仕上げたい場合は、皮を剥くときに、皮の内側にあるスジの部分まで厚めに皮を剥きます。
美味しい焼き芋を作るには
サツマイモに含まれるデンプン分解酵素アミラーゼの働きは、ゆっくり加熱することで活発になり、これによってデンプンの糖化が進み甘みが増します。
この性質を利用して、甘みを十分に引き出したい場合は、低温でじっくりと焼くことがポイントです。
また、品種によってホクホクしたものからねっとり食感まで、同じ焼き芋でも味が全然違うので、色々な品種を試してみて下さい。
黒ホイルで時短調理、焼き芋5種類を食べ比べ干し芋
蒸したイモをスライスして乾燥させて作る「干し芋」。
粘度のある噛み応えとサツマイモらしい甘味があり、軽く炙るとさらに甘みが増します。
炊飯器で簡単、手作り「干し芋」の作り方葉柄も美味しい
地域によってはサツマイモの芋づる(葉と茎をつなぐ「葉柄」の部分)を食べる文化があり、シャキシャキとした食感で美味しいです。