サツマイモの栽培方法・育て方のコツ

サツマイモの栽培方法・育て方のコツ

家庭菜園の初心者の方向けに、サツマイモの栽培方法を紹介します。

基本情報

サツマイモ栽培の様子
科目栽培スタート生育適温好適土壌pH連作障害
ヒルガオ科さし苗25〜30℃5.5〜6.0連作可能

サツマイモは高温や乾燥に強く、やせた土地でもよく育つ丈夫な野菜です。

窒素分が多すぎるとイモが太らないので、肥料は控えめに。ツルを繁茂させないのがサツマイモ栽培のコツ。

貯蔵がきき、収穫から時間がたって追熟することで美味しくなるので、長く楽しめるのも魅力です。

栽培のポイント
  • 窒素分が多すぎると「つるボケ」するため、元肥は最小限に
  • ツルが茂ってきたら「つる返し」をしてヒゲ根を切る

栽培時期

サツマイモの栽培カレンダーです。

サツマイモの栽培時期・栽培カレンダー

中間地を基本とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。

5月中下旬から苗を植え付け、10月頃の収穫です。

寒さに弱いので、収穫は霜が降りる前に行いましょう。

用途に応じた品種を選ぶ

サツマイモには、皮色、肉色、食味、用途の異なる多くの品種があります。

サツマイモの色々な品種

ホクホク系、ねっとり系など食感の違いも楽しんでみてはいかがでしょうか。

品種食感おすすめ料理特徴
鳴門金時ホクホク系天ぷら
焼き芋
関西で定番のサツマイモ。ホクホク食感の焼き芋に。
紅あずまホクホク系天ぷら
焼き芋
関東で定番のサツマイモ。ホクホク食感の焼き芋に。
安納芋ねっとり系焼き芋蜜芋ブームの火付け役。クリームのような柔らか食感の極甘蜜芋。
紅はるかしっとり系焼き芋
干し芋
繊維質多めでしっとり甘い。数ヶ月ほど貯蔵するとトップクラスの甘味に。
シルクスイートねっとり系焼き芋絹のような繊細さでしっとりなめらか。

栽培方法

サツマイモの栽培は、次のような流れになります。

土作り

耕運機で耕して土作り作業

サツマイモは、日光がよく当たる、通気性に富んだ乾燥した土を好みます。また、肥沃だと「つるボケ」になるので、痩せた土地が向きます。

植え付けまでに土をよく耕し、土作りを済ませておきます。

土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.0です。

水はけと通気性をよくするため高畝にし、畝間に水たまりができないよう排水にも気をつけたいところ。

注意

畝に未熟な有機物があると、「コガネムシ」が産卵しイモを食害します。また、「センチュウ類」が増えてイモの肌が汚くなります。土作りの際は、未熟な堆肥は入れないようにしましょう。

畝を作り、表面を平らにしたら「マルチング」しておきます。マルチをすることで、イモの肥大や食味の向上が期待でき、雑草の防除や収穫時のツル剥がし作業が容易になります。

マルチシートを張った畝
マルチシートを張った畝 マルチシートの種類とマルチの張り方

肥料

サツマイモの組織内には、空気中の窒素を固定する微生物(アゾスピリラム)が共生していて、自ら栄養分を作り出します。

また、肥料が多いとツルばかり伸びて芋の生育が悪くなる「つるボケ」になるため、肥料は最小限で育てます。尚、追肥は一般的には行わず、全量を元肥で施します。

前作で野菜を栽培していた畑なら、ほぼ無肥料で栽培できます。

肥料には、イモの肥大に大切なカリを多めに、チッソ・リン酸がバランスよく配合された、イモ専用の肥料が使いやすいです。

苗の準備

サツマイモは、種芋から伸びたツルを切った「さし苗」から育てます。

植え付け時期が近づくと、種苗店やホームセンターで1束10本などの形で販売されます。

良い苗の基準は、茎が太くて、節間が間のびしておらず、葉色が良くて厚みのあるもの。また、節の数が多くて、葉が7〜8枚ついたものを選びます。

植付けまで苗を保存しておくには、浅く水を張ったバケツに浸けて日陰に置いておきます。これで1週間くらいはもちます。

サツマイモの苗を水に浸けて保存

苗の葉がしおれている場合は、植え付け前に水に挿して戻しておきましょう。

植え付け

サツマイモは、節から発生した根が肥大して塊根(イモ)ができます。

塊根がつきやすいよう、切り口から3〜4節を土中に埋め、葉は地上に出すようにして植え付けます。節を土中に埋め込まないと、吸収根ばかりになってイモができません。

サツマイモ苗の植え付け方
MEMO

サツマイモは根が太ったもので、その根には2種類あります。苗の切り口近くから出る細い根は、水や肥料を吸い上げる「吸収根」。葉柄の付け根(節)から出る太い根は「不定根」で、これが太ってサツマイモになります。

苗の植え付け方

苗の植えつけ方で、イモのつき方が変わります。

  • 斜め植え 一般的な植え方。活着が良い。マルチ栽培向き。
  • 垂直植え イモの数は少ないが大きくなる。小さい苗向き。
  • 水平植え イモの数は多いがサイズは小さい。乾燥・寒さに弱い。
  • 舟底植え 中心を深くすることで、水平植えよりも乾燥・寒さに強い。
MEMO

イモになる根は葉の付け根から出るので、横に寝かせて植えるほどたくさんのイモが取れますが、株間を広げて植える必要があります。

実際の植え付け作業

斜め植え・垂直植え

地面に突き刺すという植え方なので、マルチ栽培に向いており、手間が少なく簡単に植え付けられます。

マルチの上から棒を挿して植え穴を掘り、開いた穴に苗を差し込んで、苗のまわりに土をかけます。

数が多い場合は補助器具を使えば、立ち作業で素早く植え付けることができて楽チンです。

立ち作業でさつまいも苗の植え付けが行える さつまいも苗の植え付け作業に「かんしょ植え付け器 さすけ」
水平植え・舟底植え

深さ10cmくらいの楕円形の植え穴を掘り、植え穴の底に寝かせるように苗を置いたら、先端(成長点)だけを地上に出すようにして、土をかけて鎮圧します。

舟底植えの場合は、中心をくぼませ、両端を上げるように苗を置きます。

株間

植え付け方や苗の大きさによって、株間は30~40cmあけるようにします。

植え付けたサツマイモ苗(株間30-40cm)
MEMO

苗を寝かせる方向は畝と平行にします。根は挿した方向に長く伸びるため、畝と直角に植えると通路や隣の畝までイモが広がり、収穫作業が大変になります。

土が乾燥しているときは、植え付け後にたっぷりと水をやります。

追肥は不要

サツマイモは、基本的には追肥不要です。

7〜8月に葉色が薄く・黄色くなってきた場合のみ、畝の肩に追肥を施します。

但し、肥料(特に窒素成分)の効きすぎは「つるボケ」になるため、肥料の施しすぎに注意。

つる返し

気温が上がってくるとツルの伸びが活発になり、放置しておくと隣の畝を覆うほどになってきます。

伸びたツルが土につくと、葉のつけ根の部分から根を出します。イモは根に養分が蓄積したものなので、放っておくと地表を這うツルにも芋がつき、養分が分散してしまいます。

それを防ぎ、植えつけた部分の芋だけを肥大させるために、つる返し(ツルを引き上げて土から根をはがし反転する)を行います。

地面に根を張ったツルの先を持ってたぐり上げ、根こそぎ剥がしたら、ツルをひっくり返して葉の上に乗せておきます。

つる返しは、根を出したツルを見つけたら適宜行っておきましょう。

収穫

植え付け後120〜140日で収穫できます。

MEMO

収穫が早すぎると食味が悪く、遅すぎるとイモは大きくなりますが色や形が悪くなります。少し早めに試し堀りして、収穫適期を逃さないようにしましょう。

雨が降っていたりすると、イモに泥が付いて保存中に腐りやすくなるため、天気がよく、土が乾いている日に掘り上げます。

まずは、株元でツルを切り、マルチをはがします。

イモを傷つけないよう、株元から少し離れた位置にスコップをさし、土を掘り上げ、株元をつかんで引き抜いて収穫します。

掘りあげた後、土の中にイモが残っていることが多いので、採り忘れないように。

収穫したイモは、保存性が落ちるので水洗いはしないで、風通しの良い場所に並べて2〜3日乾燥させてから保存(追熟)します。

収穫したてのサツマイモは保存して追熟させる
注意

霜にあたると収穫したイモの貯蔵性が悪くなるため、霜が降りる前に収穫を済ませましょう。

追熟させると甘くなる

サツマイモの主成分は炭水化物ですが、収穫直後はそのほとんどがデンプンであるため、あまり甘くありません

これを追熟(熟成)させることで、デンプンが糖類に変化して、本来の甘さが引き出されます

追熟させるには、熟成に適した次の環境で1ヶ月間おいておきます。

  • 温度 14℃前後
  • 湿度 85%〜90%

一般家庭では、よく乾かしたサツマイモを個別に新聞紙で包み、発泡スチロールの箱に入れて冷暗所で保管しておくことで、これに近い環境で追熟させることができます。(もみ殻の中に埋めてもOK)

尚、冷蔵庫での保管は、低温障害を起こして味が落ちる原因になってしまうため厳禁です。

連作障害とコンパニオンプランツ

連作障害

同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。

サツマイモは連作障害が出にくいため、同じ場所での連作が可能です。

注意

2018年から急拡大している「サツマイモ基腐病」。本病が発生した畑では、サツマイモの連作を避けましょう。

コンパニオンプランツ

違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。

サツマイモと相性の良いコンパニオンプランツには「赤ジソ」があります。

サツマイモ×赤紫蘇のコンパニオンプランツ
サツマイモ×赤紫蘇

赤ジソが過剰な肥料分を吸収してサツマイモのつるぼけを防ぐ他、葉の赤色がサツマイモを食害する「アカビロウドコガネ」を忌避する効果もあります。

栽培Q&A

つるぼけして芋がつかない

肥料分、特に窒素過多による「つるぼけ」が原因です。

施肥量を控えることが肝心ですが、症状が出てしまった場合は「つる返し」を何度か行うようにしましょう。

各節から伸びた根を引き剥がすことで、養分の吸収を抑えることができます。

サツマイモの切り口から出る白い液体(ヤラピン)

サツマイモを収穫した際、ツルの切り口から白い液体がにじみ出ます。

これは「ヤラピン」という成分で、イモ自身が切られた箇所を癒すために分泌されるもの。放っておくと黒いタール状になります。

サツマイモに含まれる成分で食べても問題なく、整腸作用にも良いと言われています。

収穫した時期は問題なく、食べ頃の問題です。

同じイモでも「サトイモ」や「ジャガイモ」とは違い、「サツマイモ」や「カボチャ」などデンプンの多い野菜は、収穫後しばらく熟成させることで、デンプンが糖分に変化して甘くなります。

温度・湿度が適切に保たれた環境で、少し時間をおいてから食べてみて下さい。(追熟の方法

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