
家庭菜園の初心者の方向けに、サツマイモの栽培方法を写真とイラスト付きでまとめています。
サツマイモ栽培の特徴、栽培時期、栽培手順・育て方のコツ、トラブルQ&Aなど。

サツマイモ栽培の特徴

水はけのよい痩せた土地で育て、ツルを繁茂させないのがサツマイモ栽培のコツ。
貯蔵がきき、収穫から時間がたって追熟することで美味しくなるので、長く楽しめるのも魅力です。
- 窒素分が多すぎるとつるボケするため、元肥は最小限に
- ツルが茂ってきたら、つる返しをしてヒゲ根を切る
用途に応じた品種を選ぶ
サツマイモには、皮色、肉色、食味、用途の異なる多くの品種があります。

ホクホク系、ねっとり系など食感の違いも楽しんでみてはいかがでしょうか。
品種 | 食感 | おすすめ料理 | 特徴 |
---|---|---|---|
鳴門金時 | ホクホク系 | 天ぷら 焼き芋 | 関西で定番のサツマイモ。ホクホク食感の焼き芋に。 |
紅あずま | ホクホク系 | 天ぷら 焼き芋 | 関東で定番のサツマイモ。ホクホク食感の焼き芋に。 |
安納芋 | ねっとり系 | 焼き芋 | 蜜芋ブームの火付け役。クリームのような柔らか食感の極甘蜜芋。 |
紅はるか | しっとり系 | 焼き芋 干し芋 | 繊維質多めでしっとり甘い。数ヶ月ほど貯蔵するとトップクラスの甘味に。 |
シルクスイート | ねっとり系 | 焼き芋 | 絹のような繊細さでしっとりなめらか。 |
サツマイモの栽培時期
サツマイモの栽培時期・栽培スケジュールは次のようになります。
5月中旬頃に苗を植え付け、10月頃の収穫です。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
サツマイモの栽培方法
サツマイモの栽培方法は、次のような流れになります。
苗の準備
サツマイモの苗は、4月下旬頃に種苗店やホームセンターなどで販売されます。
良い苗の基準は、茎が太くて、節間が間のびしておらず、葉色が濃くて厚みのあるもの。また、節数が4〜5あり、長さが15〜20cmくらいのものを選びます。



植付けまで苗を保存しておくには、浅く水を張ったバケツに浸けて日陰に置いておきます。これで1週間くらいはもちます。
土作り

サツマイモは、日光がよく当たる、通気性に富んだ乾燥した土を好みます。また、肥沃だと「つるボケ」になるので、痩せた土地が向きます。
植え付けまでに土をよく耕し、土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.0です。
水はけと通気性をよくするため高畝にし、畝間に水たまりができないよう排水にも気をつけたいところ。
また、サツマイモは収穫まで長期間になるので、雑草を防ぐために「マルチング」しておきます。

肥料
サツマイモの組織内には、空気中の窒素を固定する微生物(アゾスピリラム)が共生していて、自ら栄養分を作り出します。
また、肥料が多いとツルばかり伸びて芋の生育が悪くなる「つるボケ」になるため、肥料は最小限(または施さない)で育てます。尚、追肥は一般的には行わず、全量を元肥で施します。
肥料には、「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
また、イモの肥大にはカリ成分が関係するため、「草木灰」などを多めに入れると良いです。リン酸は要求度は小さいのですが、イモの甘みを増します。
連作障害・コンパニオンプランツ
サツマイモは連作障害が出にくいため、同じ場所での連作が可能です。
また、サツマイモと相性の良いコンパニオンプランツには「赤ジソ」があります。
赤ジソが過剰な肥料分を吸収してサツマイモのつるぼけを防ぐ他、葉の赤色がサツマイモを食害するアカビロウドコガネを忌避する効果もあります。
植え付け
株間30cmでマルチに穴を開け、深さ10cmくらいの楕円形の植え穴を掘ります。
植え穴の底に寝かせるように苗を置いたら、土をかけて鎮圧します。この時、塊根の基となる不定根が良く出るよう、3〜4節が土に埋まるように植え付けるのがポイント。



土が乾燥しているときは、植え付け後にたっぷりと水をやります。
この後は、収穫まで追肥や芽かきなどの作業も必要ありません。
植え付け方
サツマイモの主な植え方には、「斜め植え」と「垂直植え」があります。
苗を斜めにさす「斜め植え」が一般的ですが、それぞれ次のような特徴があります。
- 斜め植え・・・根は横に長く伸びるため、細長い芋になる。個数は多め。
- 垂直植え・・・根は縦に短く伸びるため、丸く短い芋になる。個数は少なめ。また、栄養分の転流がスムーズになり甘みが凝縮する。


棒を使うと植え付け作業が簡単
例えば斜め植えの場合、次のように斜めに棒を挿して穴を掘り、開いた穴に苗を差し込んで土を被せます。


これだと、マルチの上からでも簡単に植え付けができます。
また、数が多い場合は補助器具を使えば、立ち作業で素早く植え付けることができて楽チンです。

つる返し
株が成長し、伸びたツルが土につくと、葉のつけ根の部分から根を出します。
芋は根に養分が蓄積したものなので、放っておくと地表を這うツルにも芋がつき、養分が分散してしまいます。
それを防ぎ、植えつけた部分の芋だけを肥大させるために、つる返し(ツルを引き上げて土から根をはがし反転する)を行います。



地面に根を張ったツルの先を持ってたぐり上げ、根こそぎ剥がしたら、ツルをひっくり返して葉の上に乗せておきます。
つる返しは、根を出したツルを見つけたらその都度行います。
収穫
植え付け後110〜120日で収穫できます。
掘った芋を乾かすため、晴れた日の午前中に収穫しましょう。
株元でツルを切り、マルチをめくったら、芋を傷つけないように、スコップでまわりから掘り起こして収穫します。





掘った芋は並べて午後いっぱい干し、表面が乾いてから保存します。
また、霜にあたると収穫した芋の保存性が悪くなるため、霜が降りる前に収穫を済ませましょう。
収穫期を遅らせると、芋は太く、大きくなりますが、色や形が悪くなります。
追熟させて甘味を増す

サツマイモの主成分は炭水化物ですが、収穫直後はそのほとんどがデンプンであるため、あまり甘くありません。
収穫後3〜4週間保存すると、デンプンが果糖などの糖類に変化して甘くなります。
また、9℃以下の低温で糖化が進むと腐敗しやすくなり(冷蔵庫保存は厳禁)、20℃以上になるとほう芽してしまうため、貯蔵する際の適温は10〜15℃くらいがベストです。
うちでは、イモをよく乾かしてから、発泡スチロールの箱にもみ殻と一緒に入れて、冷暗所で保存しています。(または、新聞紙に包んで発泡スチロールに入れる。)

トラブルQ&A
サツマイモ栽培でよくあるトラブル・質問などをまとめています。
つるばかり茂ってイモが小さい

切り口から出る白い液体

サツマイモを収穫した際、ツルの切り口から白い液体がにじみ出ます。
これは「ヤラピン」という成分で、イモ自身が切られた箇所を癒すために分泌されるもの。放っておくと黒いタール状になります。
サツマイモに含まれる成分で食べても問題なく、整腸作用にも良いと言われています。