
家庭菜園の初心者の方向けに、タマネギ(玉ねぎ)の栽培方法を紹介します。
基本情報

タマネギは、冬越しさせて育てる野菜の代表格です。
晩秋に定植すれば特別な寒さ対策も必要なく、初心者でも育てやすい野菜です。
タマネギ栽培は、良い苗づくりが基本。早まきして大苗で越冬すると春にとう立ちしてしまうため、品種ごとの種まき時期を守り、適正サイズの苗を育てることが大切です。
収穫後に上手に干して保存すれば、年中食べることができます。
- 収穫まで期間が長いのでマルチで雑草対策をするとよい
- 適正サイズの苗を適期に植え付けることで、とう立ちを避ける
- 冬の間に追肥し、よい苗を育てるのが成功のコツ
栽培時期
タマネギの栽培スケジュールです。

上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
晩夏に畑に直播きして苗を作り、秋に苗を植え替えて栽培します。
新玉ねぎとは
一般的な玉ねぎは、5月~6月に収穫してから、日持ちを良くするために1か月ほど乾燥させます。
新玉ねぎは、3~4月頃に収穫される早採りの玉ねぎ(極早生・早生種)の総称で、乾燥させずにすぐ食べます。

皮が薄くて柔らかく、みずみずしくて辛みが少ないのが特徴。
栽培方法
タマネギの栽培は、次のような流れになります。
種まき・育苗
苗床を作る
タマネギの種をまいて苗を育てるための、苗床を作ります。
あらかじめ石灰、元肥を入れて耕し、表面を平にならしておきます。
栽培する量が少量の場合は、プランターや育苗箱、セルトレイ(288穴)に培養土を入れて苗作りをすると手軽です。
種まき・管理
条間8〜10cmでまき溝をつけ、1cm間隔で条播きにします。


軽く覆土してしっかりと鎮圧し、たっぷりと水をやります。
土が乾燥すると発芽率が悪くなるため、もみ殻をまいたり、不織布をベタ掛けしておきます。


発芽後は不織布を外し、本葉2枚の頃に株間1.5cmほどに間引きます。
また、間引きと同時に、固くなった条間をほぐし、根元に土寄せしておきます。この一手間で根張りがよくなり、丈夫な苗に育ちます。
育苗の手間を省くなら
苗の植え付け時期になると、ホームセンターなどでタマネギの苗が販売されます。

苗がうまく育たなかった場合や、育苗の手間を省きたい場合は、市販の苗を購入すると楽チンです。50本1束から購入できます。
土作り(本畑準備)
タマネギの苗を植え付けて育てるための、畑を準備します。

苗の植え付けまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
酸性土壌を嫌うので、pH(酸度)調整をしっかりと行いましょう。pHの目安は6.0〜6.5です。
また、収穫までの期間が長いため、雑草対策に黒マルチを張っておくと管理に手間が掛かりません。その際は、タマネギ用の穴あきマルチが便利です。

肥料
肥料には、「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
また、「骨粉」などリン酸を多く含む肥料を入れると玉が充実します。リン酸は地下にしみていかない性質があるため、深く伸びるタマネギの根がリン酸を吸えるよう、あらかじめ深く混ぜておきましょう。
植え付け
苗が鉛筆ほどの太さになった頃が、植え替えの目安です。
タマネギには、一定以上の大きさに育ってから寒さに遭うと「とう立ち」する性質があるため、最適な大きさの苗を選ぶことが大切です。
- 茎の太さ5〜7mm
- 草丈20cm〜25cm
- 葉が3〜4枚で垂直に伸び、白い根が長く伸びている
根を傷めないように移植ゴテで苗を掘り起こして、1本ずつに分けます。


株間15cmで、1穴に1本植えます。
タマネギは浅植えが基本。指や棒で穴をあけ、苗の白い部分の半分くらいが埋まるように植え付け、たっぷりと水をやります。


苗の緑色の部分まで埋めると深植えになり、縦長で丸みのない玉になってしまうので注意。
根切り植え
タマネギの苗の根を1cmくらいに切り詰めて植え付ける方法もあります。


タマネギの根は、古い根は残しても枯れてしまい、新しい根が伸びることで根付きます。
古い根は植え付け時に苗を支えられる程度に残っていれば十分。むしろ古い根を切ることで、新しい根が伸びるのが促進されて活着がスムーズになり、3〜4日もすると葉がピンと立ちます。
植え付け適期を守ることが大切
タマネギは、苗の植え付けが遅れると、根付く前に寒さに負け、冬を越せずに枯れてしまいます。
逆に、植え付けが早すぎると、冬を越せても春先に「とう立ち」しやすくなり、よい玉に育ちません。
そのため、丸々と太った玉に育てるには、植え付け適期を守ることが大切です。
寒さ対策
マルチをしていない場合は、12月頃に苗の防寒、雑草対策として、株元にもみ殻や腐葉土をまきます。厳冬期には不織布をベタ掛けしておくと安心です。

根が十分に張ってない頃に霜柱ができると、根ごと地表に浮き上がってしまうことがあります。
そのままにしておくと枯れてしまうので、株元を手で押したり、足で踏み固めたりして、土と密着させるようにしておきましょう。
追肥
1回目の追肥は12月中旬〜下旬頃。株間に鶏ふんやボカシ肥などを施します。

その後も生長を見て、土がやせている場合には、2月下旬頃に2回目の追肥を行います。
生育期の後半に追肥をすると首のしまりが悪くなるので、3月以降は追肥を控えるようにしましょう。
除草
マルチを張っていても、狭い穴から雑草が伸びてきます。
雑草が増えるとタマネギの生長が悪くなるので、こまめに抜くようにしましょう。
ネギ坊主は摘み取る
タマネギは、一定の大きさの苗が一定期間低温に当たると「とう立ち」する性質があります。

そのため、本来は収穫期の後でとう立ちするはずが、収穫期前にとう立ちしてネギ坊主(花芽)ができてしまうことがあります。
放っておくと、タマネギの中に固い芯ができて食べられなくなってしまうため、見つけたらすぐに摘み取ります。
収穫
5月下旬から6月上旬頃、玉が十分に肥大し、葉が根元から自然に倒れてくると収穫期です。
倒れた葉が完全に枯れる前に収穫します。(葉が枯れるまで肥大は続きます。)


倒れたものから順次収穫しますが、一気に収穫したい場合は、全体の8割程度の葉が倒れた頃が目安です。
葉のつけ根をつかんで、真上に引き抜いて収穫します。抜けない場合は、株周りにスコップを入れて根を切ると、楽に引き抜くことができます。


収穫後は3日ほど畑や軒下に並べて乾かしておきます。


また、雨が続いて土が湿っていると、玉も多湿になり、収穫後に傷みやすくなります。そのため、収穫は土が乾いている晴れた日に行いましょう。
貯蔵
茎が乾燥したら、3〜4個ずつ葉のつけ根をヒモで縛って束ねます。さらに2束ずつヒモで縛って吊るせるようにします。


風通しがよく、雨と直射日光が当たらない軒下などに吊るしておくと、長期保存ができます。
早生種の場合は2ヶ月、中晩生種なら6ヶ月以上もちます。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
タマネギは連作障害が出にくいため、同じ場所での連作が可能です。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
タマネギと相性の良い植物には、マメ科の緑肥作物「クリムソンクローバー」があります。
タマネギの畝の通路で育てると、タマネギに付く害虫「アザミウマ」などをクリムソンクローバーが引き受けてくれ、天敵も呼び寄せてくれます。
栽培Q&A

定植した苗が大きすぎたか、多肥が原因です。
タマネギは苗が一定の大きさになると、冬の寒さに反応して花芽分化が起こり、春先に花茎が伸び始めます。
品種ごとの種まき時期を守り、多肥を避けるようにしましょう。

植えつけの際に、苗が大きすぎると内部で分球することがあり、生育が進むにつれてそれが肥大化すると、珠割れを起こして2つに分かれることがあります。
そのため、苗が大きくなりすぎないよう、種まきの時期を守ることが大切です。
また、市販の苗を購入する場合は、大きすぎないものを選びましょう。
収穫が遅すぎたのが原因です。
葉が黄色くなるまで収穫せずにおくと、病原菌が侵入して内部で侵食、腐敗の原因になります。玉が肥大したらなるべく早く収穫し、畑で乾かしておきましょう。
収穫の目安は、全体の8割ぐらいの葉が倒伏した頃です。

薄皮を剥いたときに黒いススが付いている原因は、貯蔵病害の一種で黒カビ病によるもの。
貯蔵中に高温や風通しが悪いと発生します。
腐りはせず、洗い流せば食べられます。