主要な有機肥料(有機質肥料)の種類と特徴、成分含有量(NPK)、使い方などについて纏めています。
有機質肥料の種類
主要な有機質肥料と成分比の一覧表です。
名前をクリックすると、特徴と使い方についての説明に遷移します。
名前 | 成分比 | 特徴 | ||
---|---|---|---|---|
N | P | K | ||
油粕 | 5〜7 | 1〜2 | 1〜2 | 有機を代表する窒素肥料。ボカシ肥の材料にも。 |
発酵鶏糞 | 3〜4 | 5〜6 | 2〜3 | 三要素を含み速効性で追肥にも使える |
魚粉 | 7〜8 | 5〜6 | 1 | 窒素・リン酸を多く含み野菜の味を良くする |
骨粉 | 4 | 17〜20 | 0 | ゆっくり効果が現れるリン酸肥料 |
米ぬか | 2〜2.6 | 4〜6 | 1〜1.2 | ゆっくり効果が現れるリン酸肥料。堆肥やボカシ肥の発酵促進剤に最適。 |
バットグアノ | 0.5〜2 | 10〜30 | 0 | コウモリの糞からできた緩行性のリン酸肥料。 |
ボカシ肥 | 5 | 4 | 1 | 数種類の有機物をブレンドして発酵させた肥料。材料により成分比の調整可能。 |
草木灰 | 0 | 3〜4 | 7〜8 | 果菜類の味を良くする速効性のカリ肥料。土壌の酸度調整にも。 |
有機石灰 | 0.2 | 0.1 | 0 | 土壌の酸度調整に利用。カルシウムの他、微量要素の補給にも。 |
有機質肥料の特徴と使い方
油粕
油粕は、ナタネやダイズから油を搾り取った残渣です。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
5〜7 | 1〜2 | 1〜2 |
特徴
原料によって三要素の含有量は若干変わりますが、リン酸とカリの含有量はわずかで窒素の含有量が多く、有機を代表する窒素肥料です。
土の中の微生物により分解され、ゆっくりと効果が現れるので、元肥に利用します。
また、土壌微生物を増やし、土の団粒化を促す土づくりにも効果があります。
使い方
効果が現れるまで時間が掛かり、また、分解の過程で有機酸やガスが出て肥焼けを起こしやすいため、作付けの2〜3週間前に散布して土によく混ぜ込んで使います。
また、油粕だけではリン酸とカリが不足するため、骨粉(リン酸)、草木灰(カリ)などで補います。
そのまま使うだけでなく、液体肥料にしたり、ボカシ肥の材料にも最適です。
油粕は、水に入れて発酵させれば臭いはキツイですが速効性の追肥に利用可能です。作り方は、油粕1リットルに水10リットルを混ぜ、2ヶ月置いて発酵させます。使う際には、5倍に薄めて利用します。
発酵鶏糞
ニワトリの糞を発酵させたものです。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
3〜4 | 5〜6 | 2〜3 |
特徴
三要素を含み、特にリン酸が豊富なので、果菜類に利用すると実のつきがよくなります。
元肥に向いていますが、十分に発酵しているなら追肥にも使えます。
また、石灰(カルシウム)が多く含まれているのも大きな特徴。
使い方
元肥として使う場合は、作付け1週間ほど前に散布し、土によく混ぜ込んで使います。
追肥として使う場合は、畝間や株間など、根が伸びていく先に穴や溝を掘って施し、土を被せておきます。
尚、化学肥料並の速効性があるので、使用量に注意。
また、石灰(カルシウム)を多く含むため、土作りの際の石灰資材は不要(または控えめ)にしないと、石灰過多となってpHが高くなりすぎ、土も硬くなってしまいます。
身近な格安肥料である「鶏糞」はメリットが多い一方、使う際の注意点もあります。特に鶏糞主体で施肥設計するのであれば、コチラの本が参考になります。
魚粉
魚粉は、魚を煮て圧搾し、水分と脂を抜いて乾燥させたものです。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
7〜8 | 5〜6 | 1 |
特徴
窒素とリン酸を多く含み、少量ながらカリも含んでいます。
また、微量要素を多く含むため、果菜類や葉菜類の味をよくするとも言われています。
有機質肥料の中では速効性があり、元肥のほか、栽培期間の長い野菜には、追肥としても利用することができます。
使い方
元肥として使う場合は、作付け2週間ほど前に散布し、土によく混ぜ込んで使います。
追肥として使う場合は、畝間や株間など、根が伸びていく先に穴や溝を掘って施し、土を被せておきます。
どちらの場合も、土の表面に撒いたままだと、鳥や動物、虫の餌となってしまうので注意。
魚粉にほとんど含まれていないカリについては、草木灰などで補います。
また、魚粉だけで元肥のリン酸を賄おうとすると、窒素が多くなりすぎるため、骨粉と併用するのがオススメです。
骨粉
骨粉は、ブタやニワトリなどの骨を高温の蒸気圧で処理し、乾燥・粉砕したものです。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
4 | 17〜20 | 0 |
特徴
原料や製造方法によって含有量に違いはありますが、基本的にリン酸を多く含む、有機質のリン酸肥料です。
骨粉に含まれるリン酸は、根や微生物が分泌する有機酸に少しずつ溶けて根から吸収されます。
そのため、非常にゆっくりと効果が現れ、長続きするのが特徴です。
使い方
効果が現れるまで時間が掛かるため、元肥として作付け1ヶ月前に散布し、土によく混ぜ込んで使います。
効果を早めるには、堆肥と混ぜて施し、有機酸を出す微生物の繁殖を促してやります。
また、他の有機物とともに発酵させてボカシ肥にすれば、吸収がよくなります。
米ぬか
米ぬかは、玄米を精米するときに出る粉です。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
2〜2.6 | 4〜6 | 1〜1.2 |
特徴
米屋さんや無人精米所などで入手できる「生の米ぬか」と、肥料として販売されている油を搾った「脱脂米ぬか」があります。
米ぬかは、リン酸の含有量が多く、窒素とカリも含んでいます。
また、糖分やタンパク質も多く含むため、これが餌となって、土壌微生物の活動を活発化させる効果もあります。
尚、米ぬかは微生物だけでなく虫の大好物でもあるため、保存中に虫が湧いてくることがありますが、効果に変わりはありません。
使い方
肥料として使いやすいのは脱脂米ぬかです。分解がゆっくりなので、元肥として作付け2週間前に散布し、土によく混ぜ込んで使います。
生の米ぬかは、脂肪分を多く含んでいるため分解が遅く、また、土の中で塊になりやすく、害虫や雑菌の巣になりがちなことから、肥料にはあまり用いられません。
オススメは、堆肥やボカシ肥を作る時の発酵促進剤として使うことです。
有用微生物が増えて腐熟が早まるので、堆肥やボカシ肥づくりによくある悪臭がほとんどしなくなります。
米ぬかを畑に活用するなら、この本が参考になります。
バットグアノ
バットグアノは、コウモリの糞が長い年月をかけて堆積し、化石化したものです。
糞が主体ですが、コウモリの死骸や昆虫なども混じっています。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
0.5〜2 | 10〜30 | 0 |
特徴
採取場所や堆積年数などによって含有量に違いはありますが、基本的にリン酸を多く含む、有機質のリン酸肥料です。
含まれるリン酸は、根や微生物が分泌する有機酸に少しずつ溶けて根から吸収されます。
そのため、非常にゆっくりと効果が現れ、長続きするのが特徴です。
また、微量要素を多く含むので、野菜の味が良くなるとも言われています。
使い方
効果が現れるまで時間が掛かるため、元肥として作付け1ヶ月前に散布し、土によく混ぜ込んで使います。
効果を早めるには、堆肥と混ぜて施し、有機酸を出す微生物の繁殖を促してやります。
バットグアノだけでは窒素とカリが不足するため、油粕(窒素)、草木灰(カリ)などで補います。
また、カルシウムを多く含むため、製品によっては石灰資材の散布が不要になることもあります。
ボカシ肥
ボカシ肥は、米ぬか、油粕、魚粉など、数種類の有機物をブレンドし発酵させた肥料です。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
5 | 4 | 1 |
特徴
三要素のバランスがよく、あらゆる野菜に利用することができる万能有機質肥料です。
また、ミネラルたっぷりで微量要素も豊富に含むため、畑の土が豊かになります。
効きだしが早いので追肥に向き、また、肥効がじわじわ長続きするので元肥にも利用できます。
使い方
元肥に使うときは、畝の表層10cmくらいに堆肥とすき込んで使います。
追肥に使うときは、野菜の周囲に広く薄く撒きます。一度に多く与えず、少量ずつ回数を多くして与えるほうが野菜の育ちが良くなります。
ボカシ肥は簡単に手作りすることができます。材料を調製することで自分好みの肥料ができるので、是非お試しあれ。
米ぬかボカシ肥(ぼかし肥料)の作り方と必要材料草木灰
草木灰は、草や木を燃やしてできた灰です。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
0 | 3〜4 | 7〜8 |
特徴
燃やしたものによって成分量に違いはありますが、主体はカリで、他にリン酸と石灰を含みます。
主に元肥に用いられますが、速効性なので追肥にも利用可能です。
また、原料の植物に由来する微量要素を含んでいるため、果菜類の味を良くするとも言われています。
使い方
元肥として使う場合は、油粕や魚粉などで不足しがちなカリを補うために使用します。
追肥に使う場合は、果菜類などの花が咲く前に施すと効果的です。
また、石灰を含むので土壌のpH調整にも利用可能。草木灰だけで調整するとカリが多くなりすぎるため、有機石灰などと併用します。
いずれの場合も、草木灰は軽く、風で飛散してしまうため、散布したあとは土に混ぜておきましょう。
有機石灰
有機石灰は、カキ殻、貝殻などを焼成・粉砕したものです。
N(窒素) | P(リン酸) | K(カリ) |
---|---|---|
0.2 | 0.1 | 0 |
特徴
アルカリ分を多く含むので、酸性に傾いた土壌のpH調整に利用します。
また、三要素はほとんど含みませんが、カルシウムの他、微量要素の補給にもなります。
使い方
作付け2〜3週間前に、堆肥や有機質肥料と一緒に土によく混ぜておきます。