化学肥料(単肥)の種類と特徴・使い方

化学肥料(単肥)の種類と特徴・使い方

窒素・リン酸・カリウムの三要素を単独で含む「化学肥料(単肥)」について、その種類、成分比(NPK)、特徴、効果的な使い方と注意点を詳しく解説します。


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化学肥料(単肥)の種類

主要な化学肥料(単肥)と成分比の一覧表です。

名前をクリックすると、それぞれの特徴や使い方を詳しく確認できます。

名前成分比特徴
NPK
硫安21使いやすい速効性の窒素肥料
塩安25速効性の窒素肥料。イモ類には繊維質が増えるため不向き。
硝安34速効性の窒素肥料。葉にかかると葉やけの原因になる。
尿素46液肥や葉面散布にも使える速効性の窒素肥料
石灰窒素21緩効性の窒素肥料。毒性があるため散布時は注意。
過リン酸石灰
(過石)
17〜20元肥向きの速効性リン酸肥料。中性で扱いやすい。
熔成リン肥
(熔リン)
20緩効性リン酸肥料。pH調整にも有効で酸性土に適す。
硫酸カリ
(硫加)
50速効性のカリウム肥料。果菜類やイモ類に向く。
塩化カリ
(塩加)
60速効性のカリウム肥料。イモ類では繊維質が増えるため不向き。
※成分比は製品により多少異なります

化学肥料(単肥)の特徴と使い方

硫安(硫酸アンモニウム)

硫安(硫酸アンモニウム)
N(窒素)P(リン酸)K(カリウム)
21
三要素の成分比

特徴

硫安は、水に溶けやすく即効性のある窒素肥料です。尿素よりも窒素含有量はやや少ないものの、価格が比較的安く、扱いやすいため、家庭菜園でも利用しやすい肥料のひとつです。

肥料としての効果は施用後すぐに現れ、持続期間はおよそ1か月程度。ただし、気温が高く雨の多い時期には、効果の持続がさらに短くなることがあります。速効性があるため、追肥としての利用が最も効果的ですが、元肥として使用することも可能です。

使い方

硫安を使用する際に注意すべきなのは、その副成分である硫酸が土壌を酸性に傾ける性質があることです。土壌が酸性に寄りすぎると、作物の根の吸収障害や微量要素の欠乏が起こる可能性があります。

このため、使用前には苦土石灰カキ殻石灰などの石灰資材でpHを調整しておくことが大切です。

硫安と石灰を同時に施用すると、アンモニアが気化して窒素が失われてしまうため、施用のタイミングは7〜10日程度あけるようにします。

元肥として使う場合は、窒素以外の養分(リン酸・カリウム)を別の肥料で補う必要があります。追肥として使うときも、特にカリウムの補給(例:硫酸カリなど)を意識すると、バランスの良い施肥になります。

尿素

尿素
N(窒素)P(リン酸)K(カリウム)
46
三要素の成分比

特徴

尿素は、非常に窒素濃度が高く(46%)、水に溶けやすい速効性の窒素肥料です。速やかに効果が現れるため、追肥としての使用が特に適していますが、施用方法を工夫すれば元肥としても利用できます。

また、水に溶かして使えるため、液体肥料や葉面散布としても使いやすいのが特徴です。ただし、成分が濃いため、使いすぎによる肥料焼けには注意が必要です。

使い方

尿素は窒素含有量が非常に高いため、施しすぎると根を傷めたり、葉焼けを起こすことがあるため、使用量には特に注意が必要です。

液体肥料として使用する場合は、水で100〜200倍に薄めて土壌に施用します。葉からも吸収されやすい性質を持つため、葉面散布にも向いており、その場合は200〜300倍に希釈して使用します。

元肥として使う場合には、窒素以外の栄養素であるリン酸とカリウムを別途補う必要があります。追肥として使用する場合も、特にカリウム肥料(例:硫酸カリなど)との併用でバランスを整えると効果的です。

なお、尿素は湿気を吸収して固まりやすい性質があります。使い残した場合は、密閉して乾燥した場所で保管するようにしましょう。

過リン酸石灰(過石)

過リン酸石灰(過石)
N(窒素)P(リン酸)K(カリウム)
17〜20
三要素の成分比

特徴

過リン酸石灰は、水に溶けやすく、速効性のあるリン酸肥料です。施用するとすぐに根が吸収できる形に変わるため、リン酸不足を早めに補うことができます。

ただし、リン酸は土の中でほとんど移動しない性質があるため、追肥に使っても根まで届きにくく、主に元肥として施すのが基本です。

また、名前に「石灰」とありますが、土壌のpHに大きな影響は与えず、ほぼ中性の性質を持っています。したがって、pH調整のための石灰資材としては使えません。

使い方

過リン酸石灰は、土壌中のアルミナや鉄と結びつきやすく、リン酸が固定されて吸収されにくくなる性質があります。これを防ぐには、堆肥と混ぜて溝に施す「溝施肥(みぞせひ)」の方法が有効です。作物の根が近づく位置に、土と直接触れないように入れることで、リン酸の吸収効率を高めることができます。

また、酸性土壌ではリン酸の固定がさらに進みやすくなるため、あらかじめ石灰資材で土壌pHを調整しておくことが大切です。

過リン酸石灰と石灰資材を同時に施用すると、リン酸が溶けにくい形に変化してしまうため、7〜10日程度あけて別々に施用するようにしましょう。

熔成リン肥(ようりん)

熔成リン肥(ようりん)
N(窒素)P(リン酸)K(カリウム)
20
三要素の成分比

特徴

熔成リン肥は、水に溶けにくく、植物の根や土壌微生物が出す有機酸によってゆっくりと溶け出す緩行性のリン酸肥料です。

リン酸のほかに、その吸収を助けるマグネシウム(苦土)や、土壌の酸性を緩和するアルカリ分も含まれており、肥料としてだけでなく、土壌改良にも効果があります。

特に酸性土壌では、リン酸がアルミナなどに吸着されて効きにくくなりますが、熔成リン肥はその問題をやわらげ、リン酸の利用効率を高める効果が期待できます。

使い方

熔成リン肥は、効果がゆっくり現れるため、元肥として使用するのが基本です。施用は作付けの3〜4週間前に行い、深く耕してしっかり土と混ぜ込むことで、リン酸を作物の根に届きやすくします。

ただし、熔成リン肥のリン酸は即効性がないため、必要に応じて過リン酸石灰などの速効性リン酸肥料と併用すると効果的です。

また、アルカリ分を多く含むため、石灰資材によるpH調整は不要です。石灰の代わりとしても使えるため、土づくりの資材としても優れています。

硫酸カリ(硫加)

硫酸カリ(硫加)
N(窒素)P(リン酸)K(カリウム)
50
三要素の成分比

特徴

硫酸カリは、水に溶けやすく、効果がすぐに現れる速効性のカリウム肥料です。

硫酸カリは土壌にある程度保持されるため、元肥・追肥のどちらにも使用可能です。ただし、作物がカリウムを吸収したあとに副成分の硫酸が残り、土壌を酸性に傾ける性質があるため、土壌pHの管理には注意が必要です。

なお、カリウム肥料には「塩化カリ」もありますが、塩分を嫌うイモ類などに使うと繊維質が増える原因になることがあります。硫酸カリならその心配がありません。

使い方

硫酸カリは効果の持続がやや短いため、元肥と追肥に分けて施用するのが効果的です。液体肥料として使用する場合は、水で100〜200倍に希釈して使用します。特に果菜類の追肥として用いると、速やかに効果が現れます。

ただし、成分が濃いため施しすぎには注意が必要です。過剰に施すと、肥焼けを起こすだけでなく、マグネシウムやカルシウムとの拮抗作用により、これらの吸収が妨げられることがあります。バランスの取れた施肥設計を心がけましょう。

化成肥料

上記で紹介した、N(窒素)、P(リン酸)、K(カリウム)の三要素のうち1種類だけを含むものが「単肥」であるのに対し、2種類以上の成分をバランスよく配合し、造粒または成形したものを「化成肥料」と呼びます。

化成肥料は、肥料成分のバランスが整っていて使いやすく、初心者からベテランまで幅広く利用されている肥料です。うちでも、基本は有機肥料をベースにしつつ、不足する成分を補う目的で化成肥料を併用しています。

化成肥料にはさまざまな種類がありますが、家庭菜園初心者の方には、有機成分も含み、元肥・追肥のどちらにも使える「マイガーデンベジフル」などの製品が、手軽で扱いやすくおすすめです。