家庭菜園の初心者の方向けに、サツマイモの栽培方法を紹介します。
基本情報
サツマイモは高温や乾燥に強く、やせた土地でもよく育つ丈夫な野菜です。
窒素分が多すぎるとイモが太らないので、肥料は控えめに。ツルを繁茂させないのがサツマイモ栽培のコツ。
貯蔵がきき、収穫から時間がたって追熟することで美味しくなるので、長く楽しめるのも魅力です。
栽培時期
サツマイモの栽培カレンダーです。
中間地を基本とした目安です。地域や品種によって時期に幅があります。
5月中下旬から苗を植え付け、10月頃の収穫です。
寒さに弱いので、収穫は霜が降りる前に行いましょう。
用途に応じた品種を選ぶ
サツマイモには、皮色、肉色、食味、用途の異なる多くの品種があります。
ホクホク系、ねっとり系など食感の違いも楽しんでみてはいかがでしょうか。
品種 | 食感 | おすすめ料理 | 特徴 |
---|---|---|---|
鳴門金時 | ホクホク系 | 天ぷら 焼き芋 | 関西で定番のサツマイモ。ホクホク食感の焼き芋に。 |
紅あずま | ホクホク系 | 天ぷら 焼き芋 | 関東で定番のサツマイモ。ホクホク食感の焼き芋に。 |
安納芋 | ねっとり系 | 焼き芋 | 蜜芋ブームの火付け役。クリームのような柔らか食感の極甘蜜芋。 |
紅はるか | しっとり系 | 焼き芋 干し芋 | 繊維質多めでしっとり甘い。数ヶ月ほど貯蔵するとトップクラスの甘味に。 |
シルクスイート | ねっとり系 | 焼き芋 | 絹のような繊細さでしっとりなめらか。 |
栽培方法
サツマイモの栽培は、次のような流れになります。
土作り
サツマイモは、日光がよく当たる、通気性に富んだ乾燥した土を好みます。また、肥沃だと「つるボケ」になるので、痩せた土地が向きます。
植え付けまでに土をよく耕し、土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.0です。
水はけと通気性をよくするため高畝にし、畝間に水たまりができないよう排水にも気をつけたいところ。
畝を作り、表面を平らにしたら「マルチング」しておきます。
マルチをすることで、イモの肥大や食味の向上が期待でき、雑草の防除や収穫時のツル剥がし作業が容易になります。
マルチシートの種類とマルチの張り方肥料
サツマイモの組織内には、空気中の窒素を固定する微生物(アゾスピリラム)が共生していて、自ら栄養分を作り出します。
また、肥料が多いとツルばかり伸びて芋の生育が悪くなる「つるボケ」になるため、肥料は最小限で育てます。尚、追肥は一般的には行わず、全量を元肥で施します。
前作で野菜を栽培していた畑なら、ほぼ無肥料で栽培できます。
肥料には、イモの肥大に大切なカリを多めに、チッソ・リン酸がバランスよく配合された、イモ専用の肥料が使いやすいです。
苗の準備
サツマイモは、種芋から伸びたツルを切った「さし苗」から育てます。
植え付け時期が近づくと、種苗店やホームセンターで1束10本などの形で販売されます。
良い苗の基準は、茎が太くて、節間が間のびしておらず、葉色が良くて厚みのあるもの。また、節の数が多くて、葉が7〜8枚ついたものを選びます。
植付けまで苗を保存しておくには、浅く水を張ったバケツに浸けて日陰に置いておきます。これで1週間くらいはもちます。
苗の葉がしおれている場合は、植え付け前に水に挿して戻しておきましょう。
植え付け
サツマイモは、節から発生した根が肥大して塊根(イモ)ができます。
塊根がつきやすいよう、切り口から3〜4節を土中に埋め、葉は地上に出すようにして植え付けます。節を土中に埋め込まないと、吸収根ばかりになってイモができません。
苗の植え付け方
苗の植えつけ方で、イモのつき方が変わります。
- 斜め植え 一般的な植え方。活着が良い。マルチ栽培向き。
- 垂直植え イモの数は少ないが大きくなる。小さい苗向き。
- 水平植え イモの数は多いがサイズは小さい。乾燥・寒さに弱い。
- 舟底植え 中心を深くすることで、水平植えよりも乾燥・寒さに強い。
実際の植え付け作業
斜め植え・垂直植え
地面に突き刺すという植え方なので、マルチ栽培に向いており、手間が少なく簡単に植え付けられます。
マルチの上から棒を挿して植え穴を掘り、開いた穴に苗を差し込んで、苗のまわりに土をかけます。
数が多い場合は補助器具を使えば、立ち作業で素早く植え付けることができて楽チンです。
さつまいも苗の植え付け作業に「かんしょ植え付け器 さすけ」水平植え・舟底植え
深さ10cmくらいの楕円形の植え穴を掘り、植え穴の底に寝かせるように苗を置いたら、先端(成長点)だけを地上に出すようにして、土をかけて鎮圧します。
舟底植えの場合は、中心をくぼませ、両端を上げるように苗を置きます。
株間
植え付け方や苗の大きさによって、株間は30~40cmあけるようにします。
土が乾燥しているときは、植え付け後にたっぷりと水をやります。
追肥は不要
サツマイモは、基本的には追肥不要です。
7〜8月に葉色が薄く・黄色くなってきた場合のみ、畝の肩に追肥を施します。
但し、肥料(特に窒素成分)の効きすぎは「つるボケ」になるため、肥料の施しすぎに注意。
つる返し
気温が上がってくるとツルの伸びが活発になり、放置しておくと隣の畝を覆うほどになってきます。
伸びたツルが土につくと、葉のつけ根の部分から根を出します。イモは根に養分が蓄積したものなので、放っておくと地表を這うツルにも芋がつき、養分が分散してしまいます。
それを防ぎ、植えつけた部分の芋だけを肥大させるために、つる返し(ツルを引き上げて土から根をはがし反転する)を行います。
地面に根を張ったツルの先を持ってたぐり上げ、根こそぎ剥がしたら、ツルをひっくり返して葉の上に乗せておきます。
つる返しは、根を出したツルを見つけたら適宜行っておきましょう。
収穫
植え付け後120〜140日で収穫できます。
雨が降っていたりすると、イモに泥が付いて保存中に腐りやすくなるため、天気がよく、土が乾いている日に掘り上げます。
まずは、株元でツルを切り、マルチをはがします。
イモを傷つけないよう、株元から少し離れた位置にスコップをさし、土を掘り上げ、株元をつかんで引き抜いて収穫します。
掘りあげた後、土の中にイモが残っていることが多いので、採り忘れないように。
収穫したイモは、保存性が落ちるので水洗いはしないで、風通しの良い場所に並べて2〜3日乾燥させてから保存(追熟)します。
追熟させると甘くなる
サツマイモの主成分は炭水化物ですが、収穫直後はそのほとんどがデンプンであるため、あまり甘くありません。
これを追熟(熟成)させることで、デンプンが糖類に変化して、本来の甘さが引き出されます。
追熟させるには、熟成に適した次の環境で1ヶ月間おいておきます。
- 温度 14℃前後
- 湿度 85%〜90%
一般家庭では、よく乾かしたサツマイモを個別に新聞紙で包み、発泡スチロールの箱に入れて冷暗所で保管しておくことで、これに近い環境で追熟させることができます。(もみ殻の中に埋めてもOK)
尚、冷蔵庫での保管は、低温障害を起こして味が落ちる原因になってしまうため厳禁です。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
サツマイモは連作障害が出にくいため、同じ場所での連作が可能です。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
サツマイモと相性の良いコンパニオンプランツには「赤ジソ」があります。
赤ジソが過剰な肥料分を吸収してサツマイモのつるぼけを防ぐ他、葉の赤色がサツマイモを食害する「アカビロウドコガネ」を忌避する効果もあります。
栽培Q&A
サツマイモを収穫した際、ツルの切り口から白い液体がにじみ出ます。
これは「ヤラピン」という成分で、イモ自身が切られた箇所を癒すために分泌されるもの。放っておくと黒いタール状になります。
サツマイモに含まれる成分で食べても問題なく、整腸作用にも良いと言われています。
収穫した時期は問題なく、食べ頃の問題です。
同じイモでも「サトイモ」や「ジャガイモ」とは違い、「サツマイモ」や「カボチャ」などデンプンの多い野菜は、収穫後しばらく熟成させることで、デンプンが糖分に変化して甘くなります。
温度・湿度が適切に保たれた環境で、少し時間をおいてから食べてみて下さい。(追熟の方法)