
野菜や果物を育てる方法には、さまざまな農法があります。
このページでは、主な農法から最新技術を使ったものまで、代表的な農法の特徴や違いをわかりやすく紹介します。
主な農法
広く認知されている基本的農法。
慣行農法
農薬や化学肥料を適切に使い、安定した収量と品質を目指す一般的な農法。
現在も多くの地域で広く実施され、現代農業の主流となっています。
減農薬/特別栽培
農薬と化学肥料の使用量を地域の慣行レベルの50%以下に抑えた農法。
環境負荷を軽減しつつ、一定の品質と収量を維持することを目的としています。
有機農法(オーガニック農法)
化学肥料・農薬・遺伝子組換え技術を使わずに、自然由来の資材で栽培する農法。
環境への配慮と持続可能性が重視され、一定の基準を満たすと「有機JAS認証」の対象となります。
民間・代替農法
個人・団体が提唱し実践されている農法。
自然農法
無肥料・無農薬・不耕起・不除草を基本とする農法で、自然の循環と調和を重視します。広義では有機農法に含まれますが、実践者によって手法や哲学はさまざまです。
類似する農法に自然栽培があり、こちらは耕起や除草を行うなど、より管理的なアプローチをとる点が特徴です。
自然農法の代表的な実践者は福岡正信氏で、著書「わら一本の革命」は世界中に影響を与えた名著です。
自然栽培では木村秋則氏が知られ、彼の実話をもとにした「奇跡のリンゴ」は映画化され大きな反響を呼びました。

不耕起栽培
土を耕さずに作物を育てることで、土壌構造や微生物環境を保つ農法。
自然の循環を重視し、雑草や有機物を活かして持続可能な土づくりを目指します。
合鴨農法
水稲栽培で合鴨を利用し、雑草や害虫を抑える減農薬・無農薬の農法。
合鴨が泥をかき混ぜて水を濁らせることで、雑草の光合成と発芽を抑制します。
合鴨の処理ルート(食肉として出荷など)を持っていないとコストが膨らむ問題があるため、同じことを自立型ロボットに代行させる「アイガモロボット」も開発されています。
EM農法
比嘉照夫氏(琉球大学名誉教授)によって提唱された微生物活用型農法。
EM(有用微生物群)の力で土壌環境を整え、農薬や化学肥料に頼らない持続可能な農業を目指します。
永田農法
永田照喜治氏が創始した、必要最小限の水と肥料で作物を育てる農法。
「断食農法」「スパルタ農法」「緑健農法」「ルーツ農法」など様々な呼び名がある。
ピロール農法
光合成を行う藍藻(らんそう)を土壌に繁殖させ、酸素を供給する農法。
土中の酸素欠乏を防ぎ、作物の健全な生育環境を整えるのが特徴です。
炭素循環農法
「たんじゅん農法」とも呼ばれ、炭素率(C/N比)の高い有機物を大量に投入する農法。
肥料を一切使わず、土壌微生物の力で作物を育てるブラジル発の自然循環型農法です。
バイオダイナミック農法
人智学のルドルフ・シュタイナーが提唱した天体の動きと調和する有機農法。
土壌・植物・動物の循環に加え、宇宙のリズムを取り入れた独自の農業哲学が特徴です。
環境循環型/先進技術農法
持続可能性やテクノロジーの活用。
パーマカルチャー
永続可能な暮らしと農の仕組みをデザインする思想型農法。
自然環境と人の営みを調和させ、エネルギー効率と循環性を重視します。
語源:Permanent(永続的な)+Agriculture(農業)/Culture(文化)
アグロフォレストリー
農業(Agriculture)と林業(Forestry)を組み合わせた持続可能な農法。
樹木と農作物、場合によっては家畜を同じ土地で共存させることで、生態系の多様性を保ちつつ、農業生産性を高めることを目的としています。
養液栽培
土を使わず、肥料を溶かした培養液で作物を育てる無土栽培の一種。
水耕や固形培地耕、噴霧耕などの方式があり、環境制御による高効率な栽培が可能です。
- 水耕栽培:植物の根を直接培養液に浸す方式。レタスやバジルなどの葉物野菜に適しています。
- 固形培地耕:人工培地を使用し、点滴で培養液を供給。トマトやパプリカなどの果菜類に多く用いられます。
- 噴霧耕:根に直接培養液を霧状に噴霧する方式。酸素供給が豊富で、根の成長が促進されます。
自宅で手軽に楽しめる水耕栽培キットもあります。
植物工場
人工光や環境制御技術を使い、天候に左右されず野菜を安定生産する施設型農業。
温度・湿度・CO₂・養液を管理し、省スペースで効率的な栽培が可能です。
アクアポニックス
魚の養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型農業システム。
魚の排せつ物を微生物が分解し、植物が栄養として吸収することで水を浄化し再利用します。
語源:Aquaculture(水産養殖)+Hydroponics(水耕栽培)
自宅で始められるキットもあります。