マルチシートの種類とマルチの張り方

マルチシート張りの完成

畝の表面をシートで覆う「マルチ栽培」。

マルチシートの種類によって、地温の調節・雑草抑制・乾燥防止・病気予防などの効果が得られます。

ここでは、マルチング資材の種類と特徴、マルチシートのきれいな張り方を紹介します。

マルチングとは

農業用の資材で畝の表面を覆うことを「マルチング(マルチ)」、マルチングを用いた栽培方法を「マルチ栽培」といいます。

マルチ資材には、ワラや雑草などが用いられることもありますが、入手のし易さや使い勝手の良さからポリフィルム製品が広く利用されています。

マルチの目的と効果

マルチを利用する目的、得られる効果には、大きく次の4つがあります。

  • 地温の調節
  • 雑草の抑制
  • 乾燥防止
  • 病気予防

中でも、マルチ利用の最大の理由は保温効果と防草効果で、この目的に万能に使えるものが「黒色マルチ」です。

例えば、夏野菜を植え付ける春の時期はまだ寒く、地温が十分に上がりません。そこで、畝を黒色マルチで覆うと、地温が上昇し苗の根付きがよくなります。また、黒色マルチは雑草を抑制するため、除草作業の手間も省けます。

また、マルチをすると、水やり不要、病気予防の効果もあります。

マルチをすることで適度な湿度が保たれるため、水やりの必要性がほとんどなくなり、雨で肥料が流れる心配もありません。また、雨が降ったときに作物に土が跳ね返らないため、泥はねによる病気を防ぐこともできます。

また、土の表面に風雨が当たらないことで、土が固まったり侵食されるのが抑えられ、団粒構造が壊れにくいので、ふかふかの土が長く維持されるメリットもあります。

イモ類にも有効なマルチ栽培

マルチ栽培は、トマト、ナス、ピーマンなど果菜類をはじめ、多くの野菜で利用されていますが、最近ではジャガイモなどのイモ類でも利用されることが多くなりました。

ジャガイモの栽培方法・育て方のコツ ジャガイモの栽培方法・育て方のコツ

例えば、ジャガイモの場合は、イモが地上部に出て日が当たると緑化するので土寄せをするのですが、黒マルチで覆うことで土寄せの必要がなくなり、手間を省くことができます。

マルチシートの種類

マルチシートにはいくつか種類があり、シートの色によって特徴が異なります。

マルチシートの種類ごとの特徴
種類効果
透明マルチ地温上昇効果が最も高い、光を通すため雑草抑制効果はない。夏季は地温が上がりすぎるのでフィルムの上に敷きワラなど工夫する。
黒色マルチ地温上昇効果は透明より劣るが、光を通さないため雑草抑制効果が高い。フィルム自体が熱くなるので葉焼けに注意。
シルバーマルチ光を反射するので地温上昇を抑える効果。反射光を嫌うアブラムシアザミウマなど害虫の飛来防止にも。
グリーンマルチ地温上昇効果は黒色<グリーン<透明、光合成に必要な波長の光を吸収するので、多少の雑草抑制効果もある。
白黒マルチ表が白色(光を反射)で裏が黒色(遮光性高い)のマルチ。地温上昇を抑える効果が最も高い。裏面の黒色が光を通さないので雑草の抑制効果も。
銀黒マルチ表が銀色(光を反射)で裏が黒色(遮光性高い)のマルチ、地温抑制+アブラムシ等の害虫防除。
マルチシートの種類と効果

他にも、稲わら、落ち葉、紙、バークチップなど生分解性で栽培終了後に土にすき込める有機物資材もあります。

稲わらや麦わらを敷く「敷わらマルチ」は、刈り取った雑草などでも代用できるので、除草や栽培終了した株の残渣を有効に活用できます。

尚、マルチシートにはサイズがあるため、畝幅に合ったものを選びましょう。

畝の側面もカバーする必要があるので、例えば60cm幅の畝なら95cm幅のものを、90cm幅の畝なら135cm幅のマルチを選びましょう。

マルチシートは安価なものだと破れやすく、片付けに手間が掛かることがあります。できれば、品質のいい丈夫なものを選ぶと安心です。

敷きわらマルチの利点

マクワウリの畝に敷きワラマルチ

マルチングで得られる効果は、ポリフィルムも敷わらもほとんど同じですが、敷わらならではの利点もあります。

敷わらは、ワラ自体が水分を吸収するため、乾燥にも過湿にも強く、湿度が一定に保たれます。また、ワラの隙間に空気があるので、温度が急激に上下しません。さらに、隙間は多様な微生物や昆虫などの住処になって病害虫の被害から守り、最終的には分解して畑の土を豊かにします。

また、ウリ類など地這い栽培で敷わらマルチを敷いておくと、ツルがワラに巻き付いて、地表に固定されるので雨風にも強くなります。

尚、敷わらマルチを利用する場合は、向きは畝と平行に、下の土が見える程度の薄めに敷くようにしましょう。

畝と直角に敷くと、雨が降っても水がワラを伝って通路の方に流れてしまいます。また、厚く敷くと、水が十分に染み込まない他、ワラと土が接触する部分がいつまでも湿っているため、土の表面に細根が広がってしまい、乾燥したときに根が傷んで生育が悪くなってしまいます。

マルチシートの張り方

マルチシートの張り方は、次のような流れになります。

MEMO

マルチングは、土作りを済ませ、畝を立てた後に行います。畝立て後すぐに敷くと、土が沈んで緩んでしまうため、数日置いてから行いましょう。

準備

まず、畝のサイズに合ったマルチシートとマルチ押さえを準備します。

マルチシートとマルチ押さえ

「マルチ押さえ」は、マルチシートが風でめくれたり、飛ばされたりしないよう、裾を留めておく道具です。いろいろな種類が販売されています。

また、マルチの保温効果や保湿効果が十分に発揮できるよう、マルチシートは畝の表面にピッタリと張ることが大切です。

そのため、畝の表面と側面を丁寧にならしておきましょう。

レーキで畝を整える

マルチシートを張る

畝の周囲にマルチシートの裾を埋めて押さえるための溝を掘ります。

畝のまわりにマルチシートを埋めるための溝を掘る

畝の角にマルチ押さえを挿して仮止めし、マルチシートを畝の端まで伸ばして畝全体を覆います。

支柱を使ってマルチシートを広げる
MEMO

マルチシートを広げる際は、ロールを転がして広げればいいのですが、ロールに支柱を通して引っ張ると楽に広げられます。

尚、マルチシートが左右にずれないよう、中心線を畝の中心に合わせるようにしましょう。

マルチシートを中心線に合わせる

畝の端まで広げたら、溝に埋める余裕をもたせてマルチシートを切ります。

マルチシートをカッターで切る

シートを引っ張ってピンと張りながら、終点側もマルチ抑えで仮止め。ばたつき防止に重しを載せておきます。

マルチシートを仮止め

マルチシートの裾を溝に入れ、土寄せして押さえます。(シートがたるまないよう、足で踏んで引っ張りながら土を掛けます。)

マルチシートの裾を土で抑える

最後に、土寄せした部分を足で踏み固めたら、マルチ張りの完了です。

マルチシート張りの完成

マルチに穴を開ける方法

マルチ栽培では、作付けする前に、マルチシートに一定間隔で穴をあける必要があります。

ハサミやカッターなどを利用してもいいのですが、穴あけ専用の道具を使うと便利です。

穴を開ける場所に「マルチ穴あけ器」を当て、ギュッと押すと簡単に植え穴をあけることができます。

また、タマネギ栽培など数が多いと穴あけ作業も大変なので、はじめから穴のあいたマルチを利用すると楽ちんです。

穴あきマルチを利用する場合は、栽培する野菜の株間に合うものを選んで使いましょう。