いざ野菜を作って販売していこうと考える時に、一体どの野菜を作るのが儲かるのか?
参考になるデータを見つけたので、シェアしておきます。
品目別の農業所得と労働時間
農水省が公開している資料に、農業経営統計調査というものがあります。
その中に品目別の統計があったので、データを抜粋してまとめました。
主要な露地野菜と施設野菜について、年産での農業所得(粗収益-経費)とそれに掛かる労働時間です。(平成19年統計)
露地野菜
10a(1000㎡)当たり、年産での統計。
品目 | 粗収益 (万円) | 経費 (万円) | 所得 (万円) | 労働時間 (h) |
---|---|---|---|---|
キャベツ | 39 | 21 | 18 | 90 |
キュウリ | 177 | 59 | 119 | 932 |
サトイモ | 41 | 15 | 26 | 192 |
シシトウ | 201 | 58 | 143 | 2155 |
スイカ | 59 | 33 | 26 | 221 |
ダイコン | 32 | 18 | 14 | 119 |
タマネギ | 32 | 21 | 11 | 139 |
大玉トマト | 154 | 64 | 90 | 709 |
ミニトマト | 179 | 99 | 80 | 1311 |
ナス | 180 | 58 | 123 | 1049 |
ニンジン | 36 | 20 | 15 | 118 |
ニンニク | 58 | 31 | 27 | 264 |
白ネギ | 68 | 28 | 40 | 336 |
青ネギ | 87 | 36 | 50 | 587 |
ハクサイ | 32 | 20 | 12 | 93 |
ピーマン | 142 | 53 | 90 | 776 |
ホウレンソウ | 34 | 16 | 18 | 220 |
メロン | 54 | 25 | 29 | 221 |
レタス | 48 | 24 | 23 | 133 |
品目別の粗収益と経費、所得(粗収益-経費)のグラフです。
それぞれの所得を労働時間で割って時給換算したグラフです。
施設野菜
10a(1000㎡)当たり、年産での統計。
品目 | 粗収益 (万円) | 経費 (万円) | 所得 (万円) | 労働時間 (h) |
---|---|---|---|---|
イチゴ | 360 | 170 | 190 | 2092 |
キュウリ | 243 | 109 | 134 | 1095 |
シシトウ | 376 | 230 | 146 | 2983 |
スイカ | 75 | 37 | 37 | 293 |
大玉トマト | 260 | 137 | 123 | 947 |
ミニトマト | 407 | 204 | 203 | 1488 |
ナス | 351 | 182 | 169 | 1757 |
青ネギ | 86 | 52 | 34 | 575 |
ピーマン | 287 | 173 | 114 | 1162 |
メロン | 125 | 68 | 57 | 493 |
品目別の粗収益と経費、所得(粗収益-経費)のグラフです。
それぞれの所得を労働時間で割って時給換算したグラフです。
野菜作経営のポイント
上記表を参考に、簡単にポイントを整理しておきます。
露地野菜と施設野菜での違い
露地野菜に比べて施設野菜は総じて高い水準にあります。
これは、露地野菜は根菜類・葉茎類が中心なのに対して、施設野菜は果菜類が中心で収穫期間が長く収量が多いため。
また、施設野菜の方が卸業者に好まれるという話も聞いたことがあります。
例えば、トマト。
露地栽培だと、鳥害や天候などにより出荷できる水準の収穫量が不安定なため、安定供給できる施設栽培のトマトの方を仕入れたいそうです。
但し、施設栽培になるとコストも大幅に掛かるようになります。
簡易なパイプのビニールハウスでも3aのハウス1棟の資材が約60万円、鉄骨やアルミの頑丈なハウスだと10aで1000万円〜。さらに加温して栽培するならその設備や燃料・電気代、また、ランニングコストとして補修や張替えも必要。
農業所得と労働時間
作物によって、単位面積当たりの農業所得は大きく異なりますが、単純に農業所得が高いものが儲かるわけではありません。
労働時間当たりの収益性
例えば、農業所得と労働時間で収益性を見てみると、
施設栽培のイチゴは、農業所得190万円を得るのに、2,092時間の労働時間が必要。これを時給換算すると908円/時間。
露地栽培のダイコンは、農業所得14万円しかないが、労働時間は119時間だけなので、時給換算すると1,176円/時間。
このように、労働時間当たりの収益性では、ダイコンの方が高くなります。
これは、農業所得の高いものは、低いものに比べて非常に手間が掛かるからです。
単面積当たりの収益性
一方で、農業所得が小さい作物は、広い農地がなければ経営が成り立たないという面があります。
収量が限られて売上が伸びないだけでなく、スケールメリットが生かせずに、労働時間当たりの収益性も低くなってしまいます。
逆に、農業所得が高い作物は小さい農地でも良く、非常に手間が掛かるので、むしろ小規模経営の方が向いている場合があります。
他にも
収益性や労働時間だけでなく、他にもいろいろ検討要素はあります。
- 農地はその野菜を栽培するのに適しているのか?(適地での栽培)
- 直販するなら、パッキングなどの労働力も必要になる
- 直売所で販売するなら特に、その野菜の需要と供給が偏ってないか?
などなど。
また、無農薬などの栽培であれば、見栄えが悪いために市場価格が低いことも多いです。
そのため、独自の販路を開拓する必要がありそうです。
改めて見ると・・・
こうやって改めて見てみると、農作物の生産・販売だけでお金を稼ぐには、厳しい覚悟が必要になりそうですね。
例えば、施設栽培でのシシトウなんて見ると、休みなしで毎日8時間ちょっと(2983時間/365日)働いて得られるお金は、たった146万円。お金のことだけを考えると、サラリーマンの方がよっぽど稼げます。
一方で、経営手腕を発揮して収益性を高めたり、サラリーマンより悠々自適な生活を得たりと、数多くの成功事例もあり、農業には大きなチャンスがあるのも事実。
そんな農業に興味ある方は、コチラの記事も参考にどうぞ。
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