家庭菜園の初心者の方向けに、ダイコン(大根)の栽培方法を紹介します。
基本情報
原産地が地中海沿岸で中国を経て日本に入ってきたと言われるダイコンは、日本での歴史も古く、品種も豊富。
みずみずしくて生でも美味しいもの、煮ることで味わいがでるもの、辛みがあるもの、それぞれ個性があります。
「大根十耕」と言うように、土中で太らせるダイコンの栽培は、土を深く、そして丹念に耕すことが、良いダイコンを作るコツ。
種まきから発芽、間引き、追肥まで手順を守って作業すれば、初心者でも作りやすい野菜です。
播種(種まき)から収穫までの日数は、約60日〜100日となります。(品種・作型によって異なります)
- 石や粗い堆肥などで根が分かれないよう、深くまで土を耕しておく
- 植え替えはできないので、畑に直播きして間引く
栽培時期
ダイコンの栽培スケジュールです。
上記は目安です。地域や品種により異なるので参考程度として下さい。
最も基本的な作型は、冷涼な気候を利用した秋冬採り栽培です。
栽培方法
ダイコンの栽培は、次のような流れになります。
土作り
種蒔きまでに堆肥・石灰・元肥を入れて土作りを済ませておきます。
土壌酸度(pH)の目安は5.5〜6.5です。
ダイコンは根が非常に深く伸びるので、耕土が深く、保水力があり、排水性のいい土が適しています。
また、ダイコンの生長点である根の先端部分が障害物に触れると、根が分かれて又根になってしまいます。そのため、土の塊や石、植物の残渣、未熟な堆肥の塊などは丁寧に取り除き、深くまでよく耕しておきます。
土が過湿になると、湿害や「軟腐病」による腐敗が多くなるので、高畝にして排水性を良くしましょう。
肥料
ダイコンは肥料分の少ない荒地でもよく育ちます。
多肥にせず、栽培期間を通じて少しずつ肥料を効かせるのがポイント。「ボカシ肥」や「マイガーデンベジフル」のようなバランスのとれた配合肥料がオススメです。
種まき
種は畑に直播きします。
株間30cmで1ヶ所に4〜5粒を点まき。
軽く土をかぶせたら、鎮圧して種と土を密着させ、たっぷりと水をやります。
防虫ネット
アブラナ科のダイコンは害虫の被害も受けやすいため、種をまいたらすぐに防虫ネットを掛けておきます。
特に11月半ばまでは、防虫ネットの中で育てます。
間引き
2回の間引きで1本立ちにします。
間引き1回目
本葉2枚の頃に1回目の間引き。葉の形が良いものを残して3本に間引きます。
この時、子葉の開いている方向が畝と平行になっているものを残し、畝と直角になっているものを間引くようにします。
これは、子葉と同じ向きに養分を吸収する側根が生えているので、畝方向のほうが根群が伸びやすいからです。
尚、間引く時はハサミを利用して、地際で株を切ります。引き抜くと、残した株の根を痛めることがあります。
間引き2回目
本葉5〜6枚の頃に2回めの間引きをし、1本立ちにします。
2回目の間引きではすでに細いダイコンができており、葉も根もおいしく食べることができます。
追肥・中耕
2回目の間引きのとき、畝の肩に追肥を施します。
追肥をしたら、畝を中耕して土寄せをします。
その後も、除草をかねてさらに2〜3回、中耕と土寄せをします。
中耕をすることで土中の空気や水の通りが良くなって根が発達し、土寄せをすることで曲がったりするのを防ぐ効果があります。
収穫
秋採りで、種まきから60日〜70日後が収穫期です。
収穫時期が近くなると、葉が立ち上がってきます。立ち上がった葉の先端が垂れてきたら、収穫適期のサインです。
収穫の際は、茎の根元の部分と首を持ち、真っ直ぐ上に引き抜くようにして収穫します。
尚、収穫適期を過ぎると、ダイコンの中にスが入ったり、割れたりすることがあるため、収穫時期を逃さないように気をつけましょう。
収穫適期を判断する
ダイコンは、品種によって太さ、長さなどが異なります。
実際に1、2本抜いてみて、サイズや中の状態を見てから、収穫期を判断しましょう。
最もポピュラーな、首の部分が緑化する青首品種は、収穫適期になると地上に大きく飛び出してくるので、収穫時期もわかりやすいです。
写真は順に、青首ダイコンの定番「耐病総太り」、短形品種の「三太郎」、辛み大根「味辛」。
側根が等間隔に並んでいるものが美味しい
収穫したダイコンを見ると、側面に小さなくぼみが縦に並んでいて、そこから細く短い根(側根)が生えています。
側根が等間隔に並んでいるものは、生育が順調で美味しいダイコンの証。有機肥料でゆっくり育ったダイコンは等間隔に1列に並びます。
逆に、側根の間隔が狭い/広い部分があるものは、その間の生育条件が悪かった証拠です。
冬の間も畑に置いておく場合
霜が降り、葉が枯れる頃になっても収穫せずに畑におくと、土から出ている首の部分が凍って傷んでしまいます。
冬の間も畑に長く置きたい場合は、ダイコンの首が土にすべて埋まるように土寄せをしておきます。
土の中は適度な湿度と温度が保たれるので、春まで保存することができるようになります。
連作障害とコンパニオンプランツ
連作障害
同じ科の野菜を同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の成分バランスが偏って、病気や生育不良になりやすくなる「連作障害」。
ダイコンは連作障害を避けるために、同じ場所での栽培間隔を2〜3年あけるようにします。
萎黄病の原因となるフザリウム菌は連作すると出やすくなるので、輪作や混植、間作を取り入れて菌の密度を減らしましょう。
コンパニオンプランツ
違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助けるといった良い影響が出る「コンパニオンプランツ」。
ダイコンと相性のいい野菜には次のようなものがあります。
反対に、ダイコンとネギの相性は悪く、混植することはできません。
ネギが出す成分を嫌って避けるようになり、ダイコンが曲がったり二股になったりしてしまいます。
栽培Q&A
ダイコンが二股などに分かれたものを又根や岐根と言います。
主根の成長点が、障害物や未熟堆肥、高濃度の肥料に接触した場合に起こります。
土作りの際には、ていねいな耕起作業で石やゴミ、草や野菜の残渣などの障害物を取り除き、堆肥は完熟のものを施用することが大切です。
また、センチュウなどの土壌害虫の食害で枯死、切断された場合にも起こるため、その場合は土壌消毒をしておきます。
ダイコンが曲がっているのは、肥料が多く葉が旺盛に茂って、その重さで倒れてくるのが原因です。
切ってみると中がスカスカになっているもの。
生育後半に根部への同化養分の供給が追いつかず、細胞や組織が老化して隙間が作られる現象で、す入りと言います
原因としては、生育後半の気温が高かったり、収穫遅れ(適期を過ぎてからの収穫)、などがあります。
ダイコンに縦にひび割れが入る現象。(裂根)
肩の部分が裂けている場合は、乾燥が続いた後に降雨で多湿になった場合に発生します。縦に長いひびが入っている場合は、多湿気味だった土壌が急に乾燥したような場合に発生します。
いづれも根の中側と外側との成長バランスが崩れたことが原因です。
株間をとりすぎた場合に起こりやすくなるので、株間は広げすぎないようにしましょう。
表皮の中側にある導管が網の目状に走っている部分、ここが固い繊維状になったものを指します。
原因は、播種後30日以内の肥大期に、高温と乾燥が続いた場合に発生します。
特に乾燥には気をつけましょう。
青首系ダイコンに発生しやすく、直根下部の中心に空隙ができます。
温度や土壌水分などの環境条件を極端に変化させないことが大切です。
ダイコンはホウ素を多く必要し、欠乏すると根の表面に亀裂が入り、内部はスが入ったり芯部が褐変します。
発生する畑には、ホウ素など微量要素を含む堆肥を施しておきます。